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パタンと小気味良く閉められた玄関の音を、俺は呆然としながら頭の片隅で聞いていた。
今俺は、何をしようとした?
自分の行動を振り返る。
自分の意思ではあったはずなのに、半分は無意識だった気がして罪悪感がつのる。
そして、困った顔の彼女が脳裏に焼き付いて離れない。
「くそっ。」
俺はベッドの端に雑に座って、髪をぐしゃぐしゃと掻いた。
ここ最近、俺の頭の中を支配する早川可憐。
大島が、“図面管理課のアイドルって知ってます?”と聞いてきたことから事は始まる。
─マジ可愛いっす、癒しです。
─今日も可愛かったですよー。
とか、先行書類を取りに行って返ってくる度ヘラヘラしているから、さすがの俺も少し気になった。
というか、確かに電話での対応は可愛いらしくて物腰柔らかい声だったから、どんな子なのか興味はあったのだ。




