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それにしても。
35歳独身。
エリート作業長。
思わぬ情報が手に入った。
独身だったんだぁ。
でも、彼女はいるのかな?
って、私ったら何を考えてるの。
いくらなんでも紅林さんを意識しすぎでしょう。
そんなタイミングで真知さんが突拍子もないことを聞いてくる。
「可憐ちゃんはさ、今彼氏いるの?」
「えっ?」
ビックリしすぎて声が上ずった。
「いないです。でも好きな人はいます。」
言って、あれ?好きな人?と疑問に思うも、何だか気恥ずかしくて頬に熱が集まるのがわかる。
そんな私に、真知さんはグイグイ聞いてくる。
「会社の人?」
「えっとぉ、…まだ秘密です。」
どう答えようか迷ったあげく、適当にごまかした。
真知さんはどうなんだろう?
ここによく来る同期の宗田さんとか…?
聞きたい気持ちもあるけど、先輩に対してあまり突っ込んだことを聞くのが躊躇われて、私は口ごもる。
好きな人か…。
私は、紅林さんが好きなのかなぁ。
あの優しい声とかほんの少し笑った顔とか。
胸がキューンとしちゃうんだよねぇ。
そんなことを考えて、はっと我に返る。
そんな、胸がキューンだなんて、紅林さんのこと好きって言ってるみたいじゃん。
いやいやいや、まさか、ね。




