③似た者同士、悲しいね
やんでいた雨が再び降り出し、サニーは顔を曇らせた。
それを見て、レイナはますます暗い顔となる。
「あたしはブリビアってんだ。こいつの母親さ」
パン屋の女性はそう言うと、ちょっと待ってな、と言って、パン屋のドアの外に閉店の札を出すと、鍵をかけた。
「それでも飲んで二人とも少しは落ち着きな」
ブリビアふそう言って、レイナとサニーの前に暖かいココアを置いた。
ココアを口に含むと、ようやくレイナの心も落ち着いてきた。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい…」
それでも口をついて出るのは謝罪の言葉ばかり。
サニーはそんなレイナを見て、困惑の表情を浮かべた。
「そんなに謝られても…一体どういうことかな?」
サニーがそう尋ねると、外の雨の勢いはますます増した。
「私が雨を降らせてしまいました…」
レイナはそう言って、また大粒の涙をこぼした。
「なるほど」
レイナからコトの詳細を聞いたサニーは、ふむふむと頷いた。
「レイナちゃんの巨大な能力に対抗できずにもて余したアカデミーが、レイナちゃんに全責任を押し付けて、退学にして追い出したってことかぁ」
サニーの言葉に、ブリビアは驚きの表情を浮かべた。
「そいつはあんまりじゃないかい?仮にも王立のアカデミーだろ。こんな子ども一人に対抗できないなんてあるはずないじゃないか」
ブリビアの言い分は最もである。
「でもさ、基本お偉いさんは無責任だぜ」
そう言ってサニーは口を尖らせた。
「だからレイナちゃんが今回の雨を降らせたかどうかなんてアカデミーは検証もしてないに決まってるさ。ただ、降ってはいけない時に雨が降った。困った。我が身はかわいい。さて、どうするか。一人ぐらい退学にしたって構わないよね、ってとこじゃないの」
ひどい言い草である。
「まぁ、今頃は王立のアカデミーの教師たちが1年生一人の力に負けるのか、とどこかえらーいところから責められて、青くなっているかもしれないけどね」
そうなってくれていればいいけど、とサニーは、クックッと笑った。
レイナは何となく気持ちが軽くなってサニーの顔を見た。
「大体さ、俺だって似たようなもんさ。そりゃぁ、降水確率0%という予報は出したさ。でも、俺は新人だぜ。重要な日なのに俺だけが予報するわけないじゃないか。先輩たちだってみーんな0%って出したんだ。でも、雨が降った。で、どーする?俺に責任おっかぶせてしまえってやつさ」
サニーは頬を膨らませてそう言った。
「それはひどいな」
ブリビアもまなじりを釣り上げた。
「まぁ、奴らは元々俺のことが気に入らなかったのさ。なんていったって、史上最年少18歳での王宮お抱え気象予報士様だったからね」
そう言ってサニーは胸を張ったが、そんな息子をブリビアは呆れた顔で眺めた。
「そんなに威張ったって、たった半年でクビになってちゃしょうがないだろう」
「だから俺は悪くないって!」
叫ぶサニーの横で、レイナは「半年…私と一緒…」と少し嬉しそうに呟いていた。
「で、どうするんだい?」
ブリビアの言葉にサニーはどうすっかなぁ、と呟いた。
「とりあえずお腹減った。一個ちょうだい」
そう言ってサニーはコーンがのったパンを手に取ると大口を開けてかぶりつき、あっという間に食べ終わった。
「相変わらずかあちゃんのパンは美味いな。俺、ここで手伝おうかな」
「ここは私一人で十分だよ。お前の手伝いなんて要らないね」
息子の言葉にブリビアはにべもなく断った。
「そんなぁ…」
サニーは情けない顔をしてレイナの顔を見た。
「ねぇ、レイナちゃんはどうするの?」
突然話を振られてレイナは残り6枚となった銅貨を握りしめた。