22 待ちに待った雨
「あっ!」
ガーディアは、その男の姿をみとめて、若干怒気をふくんだ声で叫んだ。
その声に、男が振り返る。
「ああっ!」
男は顔色をなくし、手に持っていた種を地面に落とした。
「も、申し訳っないっ!あ、謝る!謝るから待ってくれ」
男はそういと、慌てて落とした種を拾い集めた。
それから少なくとも1時間は待たされた。
時々イライラして男に掴みかかりそうになるガーディアを、サニーが必死に押しとどめていた。
「お待たせして申し訳ない」
種まきを終えた男が、地面に頭をこすりつけながらそう言ってサニーたちの前に座った。
泥まみれの男の姿は謝りながらもどこか清々しさを感じさせ、ガーディアは毒気を抜かれたように、準備していた怒りの声をあげるのを忘れていた。
「さっきは本当に申し訳なかった。一時の気の迷いというか…」
男は雨に濡れながら頭を下げ続けそう言った。
「謝られて、はい、そうですか、とは流石にできないよ。どこか濡れないところで話ししようか」
サニーにそう促され、男は立ち上がり、「どうぞこちらへ」と3人を案内した。
そこは質素な建物ながらも周囲の家と比べると、大きく、どうやら村長である男の家であるようだった。
サニーたちは勧められるまま椅子に座った。
屋根に落ちる雨音がやけに大きく響いていた。
「村長のファームルです」
男はそう名乗り、深く頭を下げた。
「本当に申し訳なかった。なんであんなことをしてしまったんだから…」
ファムールは頭から水を滴らせながらそう言った。その水滴には雨だけでなく、汗や涙が含まれているようであった。
「で?」
ガーディアが冷たく突き放しながら先を促した。
「あ、雨が降らないものだから…せっかく植えていた野菜は枯れるし…種を蒔いても…芽は出ないし…。食べ物がなくなってきたが、よそから買うための金も…なくて…」
ファムールは悔しそうにそう告げた。
「だからといってあなたたちのしたことは許されることではないでしょう」
サニーはそう言って、まだサニーの服を握りしめたままのレイナの手を握りしめた。
「レイナちゃんをこんなに怖がらせて。いくら困っていたからと言って許せません!」
サニーの珍しく怒気を孕んだ声に、レイナはビクリと体を震わせた。そんなレイナの背中をガーディアが優しく撫でる。
「わ、わかっている。謝ったからといってそう簡単に許してもらえるとは思えない。だが、今はお詫びの品を差し出すものもないのだ」
ファムールは涙を浮かべながらそう言った。
「今はムリだが…ようやく、待ちに待った雨が降ったのだ。これできっとこの村もなんとかなるはずだ。今度お寄りになった際には…」
なんとか今回は許してもらえないかとファムールは深く頭を下げ続けた。
「待ちに待った雨?」
それまで黙っていたレイナが小さな声でそう尋ねた。
「ああ、この雨がなかったら、もうこの村は終わっていたかもしれん」
ファムールの言葉にレイナは少し顔を綻ばせた。
「みんな、雨、嬉しい?」
「あぁ、嬉しいどころじゃないさ」
レイナの言葉にファムールは力強く頷いた。




