21 歓喜の雨
「雨だよ」
嬉しそうな幼子の声に男たちは、目の前のガーディアの存在など忘れたかのように、一斉に上を眺めた。
「おぉ!」
歓喜の声が上がった。
「こうしちゃおれん!」
男たちは、目の前のガーディアの存在などもう気にすることなく背を向けると、スタスタと歩き出し、やがて走り出した。中にはスキップしながら去っていくものもいる。
「な、なんなの?」
ガーディアは振り上げた剣の行き場をなくししばらく呆然と突っ立っていた。
「ちょっとついて行ってみようか?」
サニーが苦笑いしながらそう言うと、サニーの服を掴んで瞳に涙をためたレイナはフルフルと首を横に振った。一方、ガーディアは、「そうだね」と不満を露わに頷いた。
「このままじゃあ、納得できないよ」
しばらく男たちが去って行った方へと歩くと、村が現れた。
小さな家が集まり、その周りに畑が広がる。
悪のアジトなどありそうにない、のどかな風景である。
畑では男たちが雨に濡れながら畑で体を動かし、畑の周りでは子供たちが嬉しそうに駆け回る。畑の中で作業をする男たちの中には先程ガーディアと対峙していた者の姿もあった。
「ちょっと何これ…?」
ガーディアはその光景を見て呆れたように呟いた。
「うーん、種まき中?」
レイナに服を掴まれたまま歩いてきたサニーは、そう言いながら首を傾げた。
「なんか忙しそうだね」
サニーがそう言うと、ガーディアは頰を膨らませた。
「だからって、私は許さないからね」
「ちょっといい?」
ガーディアはツカツカと歩き出すと、畑の中の男に話しかけた。
「あぁ?今、忙しいんだよ!」
話しかけられた男は振り返ることもなく不機嫌そうにそう返した。
思わず腰の剣に手がかかるガーディアをサニーが慌てて押しとどめる。
「ガーディアさん、落ち着いて…」
サニーの言葉にガーディアは不満そうに鼻を鳴らした。
「村長さんはどこかなぁ?」
「その辺りのガキにでも聞いてくれっ!」
男はサニーの質問に手を止めることなくそう言い放つと、流れ落ちる雨粒を気にするでもなくひたすら畑に種をまき続けた。
その様子にサニーは肩をすくめた。
「しょうがないね。ほら、行くよ」
怒りに眦をあげるガーディアを宥めながらサニーはその場を離れた。
「ちょっといいかな?」
サニーは、畑の近くで嬉しそうにクルクルと回る幼子に声をかけた。
幼子は動きを止められて、不服そうに唇を尖らせた。
「村長さんはどこかな?」
「あそこ!」
幼子は指をピン、と畑の方に向けた。
そこにはガーディアたちを脅した体格の良い男が畑で雨に濡れながら汗を流していた。




