18 雨…に感謝?
雨音は少し小さくなってきた。
「なんだ、レイナは雨はよくないと思っているのか?」
エレファーはそう言いながらホットミルクを3人の前に置いた。
「違うの?」
レイナは不思議そうな顔でエレファーを見た。
「いつも雨が降ると…みんな文句を言った…」
「そうか…」
エレファーは寂しそうに笑うと、レイナの頭を撫でた。
「雨は悪いわけじゃない。特に、このようにしばらく雨が降っていない時に降ってくれたら、嬉しいものさ。今日はここに泊まればいい。そして、明日、わしの畑を見てごらん。この雨で、植物達はイキイキとしたはずさ」
「雨が嬉しい…」
レイナは困惑した表情で呟いた。
「そうだよ。嬉しいんだよ」
そのエレファーの言葉にレイナは固まっていた頬を緩め、ほんの少し笑みを浮かべた。
「そうかぁ…雨が嬉しい…私…嬉しい…」
しみじみとそう呟くレイナをサニーとガーディアはニコニコと眺めていた。
いつのまにか雨は上がり、晴れ間がのぞいていた。
「あっ!」
窓の外を見たサニーが嬉しそうな声を上げた。
「レイナちゃん、外を見て!」
レイナは窓に近寄って外を眺めた。
そこにはキレイな虹がかかっていた。
レイナはニッコリと笑みを浮かべた。
3人を客間に案内すると、エレファーはベアルからの小包を開けた。
中に入っていたのは一通の手紙。
エレファーは思わずニヤニヤしながら手紙を読んだ。
「あぁ、懐かしい。あいつとの旅は…めちゃくちゃだったが楽しかったなぁ」
ついつい漏れる独り言を呟きながらエレファーは手紙を読み進めた。
「そうかぁ、あいつも親だなぁ…」
そう呟くと、エレファーは手紙を書き始めた。
「おい、夕食食べるぞ」
エレファーはそう客間に声をかけた。
どうやら一眠りしていたらしい3人は、ややぼーっとした状態で部屋を出てきた。
「さあ、食べな」
そう言ってエレファーは、皿を並べた。
「料理の腕前はないからほとんど素材そのままだが…野菜はわしの畑で採れたやつだから美味いぞ」
エレファーは胸を張ってそう言った。
「ありがとうございます。いただきます」
3人は手を合わせると、目の前の食べ物を手に取った。
「美味いっ!」
サニーがキュウリにかぶりついてそう叫んだ。
「甘くて美味しいっ!」
トマトにかぶりついたガーディアも驚いたように叫んだ。
「とってもおいしいです」
2人にくらべると小さな声ではあるものの、茹でたアスパラを口にして、レイナは嬉しそうにそう言った。
「そうだろ。わしの自慢の野菜じゃ。沢山食べろ」
エレファーはそう言って笑った。
「ほれ、食後のデザートだ」
食事も終盤となり、皆が満足し始めた頃、エレファーは桃を出してきた。
「それぞれ自分で皮を剥いてかぶりつきな。ただし、果汁が服につかないように気をつけろよ。シミになるからな」
エレファーはそう言って一つずつ桃を渡した。
「おいしい」
ほぼ同時にかぶりついた3人が口を揃えてそう言うのをエレファーは満足げに頷いた。
「そうだろ。ただもうちょっと雨が降っていたらなぁ、もっとよかったんだがな。味はいいが今年の桃はちょっと小ぶりだな」
「雨が降った方がよいのができていた…?」
レイナは不思議そうに呟いた。
「そうだよ。お天道様もありがたいが、適度に雨が降ってくれないと、いいのは採れないね」
エレファーはそう言って笑った。