16 大男と雨
今日も晴天。
清々しい空気を吸って3人は大きく深呼吸した。
「もうすぐ着くよ」
サニーの言葉にレイナはコクン、と頷いた。
「この3ヶ月、特に何もなかったねー」
少しつまらなそうに呟くガーディアに、サニーはクスリと笑った。
「何もなかったわけじゃないと思うけど…」
そう言って、サニーは、この3ヶ月を振り返った。
「まず、ガーディアさんが行方不明になって探し回ったのが5回?6回?レイナちゃんが不審者に連れ去られそうになってガーディアさんが助けてくれたのが2回…」
サニーはそう言ってクスクスと笑った。
「ガーディアさんのおかげで、今まで無事。ありがとうございます」
「大したことはしてないよ」
ペコリと頭を下げてお礼を言うレイナにガーディアは照れたように頭を掻いた。
「とにかく少しは色々あったけど、平穏無事。何よりだよ」
「まぁ、それはそうだよねー」
納得したようなしてないような顔でガーディアはほんの少し口を尖らせながらそう言った。
「さてさて、ベアルさんのお友だちの家はどこかな?」
「父の友人ってことは、気をつけたほうがいいかも」
「何に?」
「うーん、何にだろう…」
ガーディアは首を傾げながらそう答えた。
「ただ、あの父の知り合いというだけでなんとなく警戒しちゃうんだよねー」
そう言うガーディアに、サニーは「なんだそれ」と言って笑った。
「多分、あそこだよ」
サニーは、広大に広がる畑の中にはポツン、と建つ家を指差した。
古くからそこに存在しているであろうその建物はどこか威圧感があり、先ほどのガーディアの発言もあいまってサニーは思わず尻込みした。
レイナはいつのまにかガーディアの服をしっかりと握りしめていた。
「私が行こう」
ガーディアはそう言うと先頭に立ち、家のドアを叩いた。
トントントン。
無反応。
ドンドンドン。
ガーディアは今度は力強くドアを叩いた。
すると、家の中からドカドカとした足音が聞こえ、ドアが勢いよく開いた。
「煩いなあ」
昼過ぎだというのにまるでさっきまで寝ていたかのようにボサボサの頭の大男が立っていた。
大男の姿とその野太い声にレイナがビクリと身体を震わせた。
「なんだ?お前たち?」
上から見下ろされ、レイナはガーディアの後ろに隠れながら身体を硬くしていた。
それまで雲ひとつなかった空に黒い雲が急速に集まってくる。
「あ!?」
大男は不審気に空を見上げた。
「今日も晴れの予報だった筈だが…」
大男がそう呟くと、パラパラと雨が降ってきた。
「お、雨だ」
大男はドアの外に出ると手のひらで雨粒を受けた。
「ゴメンナサイ!」
泣き出しそうな顔でいきなり謝るレイナを大男は不思議そうな顔で見つめた。