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雨女でゴメンナサイ  作者: 真楠 冷
第1章
15/26

15 さがす理由

「レイナさんとは同じアカデミーのクラスメイトでしたから」

 サーチルは、ブリビアの視線を気にすることなくそう応えた。

「なんだい、じゃあ、君も魔法が使えるのかい?」

 ブリビアの驚いた顔に対して、サーチルはやや硬い顔になった。

「まだ、アカデミーの1年生ですから、大したことはできません。今回だってレイナさんがここに立ち寄ったくらいまでしか追えませんでしたし…」

「えっ、魔法でレイナちゃんがここに立ち寄ったことがわかっていて来たのかい。私にとってはそれは凄いことに思えるがねぇ…」

「いえ、これくらいの魔法の能力では役に立ちませんから。現に、ここに、レイナさんはいませんよね」

「あぁ」

 淡々と語るサーチルに釣られて思わず頷いたブリビアは、ハッとしてと動きを止めた。

「サーチルくんはなんでレイナちゃんのことを探しているんだい?」

 不安げにブリビアは尋ねた。

「そうですね、特に理由などありませんが…つまらないからでしょうか」

「つまらないから?」

 ブリビアはサーチルの言葉を復唱して眉根を寄せた。

「えぇ。アカデミーでの生活は想像していたものより大分退屈です。つまらない学習になかなか向上する気配がない魔法の訓練。なんだかムダに思えてなりません」

 幼い顔で淡々とそう述べるサーチルを見ながら、ブリビアはあのおどおどとしたレイナを思い出していた。同じ年らしいが随分な違いだ。

「それで、どうしてそのことがレイナちゃんとつながるんだい?」

「どうして、でしょうね」

 サーチルは幼さの残る顔をしかめた。

「…あの能力をまた見てみたい、のかもしれません。アカデミーの教師たちが束でかかっても太刀打ち出来なかった雨降らしの能力を」


「雨降らし?」

 サーチルの言葉に反応したのは、それまで黙って座っていたクラードだった。

「えぇ。その能力のせいで、どうもレイナさんは退学になったようですが」

「そんなに凄かったのかい?」

 あの自信がなさそうなレイナを思い出しながらブリビアは尋ねた。

「そうですね。彼女が雨を降らし始めたら誰にも止められませんでしたから。制御さえできれば、素晴らしいものです。私のようにいくら学問が出来てもあの能力は身につきそうにはありません。私にあの能力があればしっかりとコントロールする自信があるのですが…。実にもったいないことです。あのくらい能力がらあれば、アカデミーを牛耳ることさえ、やり方を間違えなければ容易なものを…」

「そ、そうなのかい…」

 ブリビアはサーチルの言葉に圧倒されていた。

「それは凄いなぁ」

 そう小声で呟くのはクラード。

「それで、レイナさんはどちらに?」

 二人の様子を気にするでもなく、サーチルはそう尋ねた。

「知らないよ」

「隠すのですか?たしかにいきなりやって来てこういうことを尋ねる私を怪しく思われるのかもしれませんが」

「そうじゃないよ。たしかにレイナちゃんはここに寄ったよ。ただ、それは3ヶ月も前のことさ。うちの息子と旅に出て、今はどこにいるかわからないさ」

「そんなぁ」

 情けない声を出したのはクラードだった。

「サニーさんは3ヶ月も前にいなくなっているんですか…それじゃあ探せないよぉ〜」

 落ち込むクラードの隣でサーチルは「なるほど…」と呟いていた。

「そういうことですね、レイナさんの行方がここまでしかわからなかった理由がわかりました。」

 そう言ってサーチルはブツブツ呟いたかと思うと、パッと頭をあげた。

「ありがとうございます。おかげで次の行き先が決まりました」

 サーチルはそう言って頭を下げると立ち上がり、ドアを開けた。

 その様子を見て、クラードも慌てて立ち上がった。

「あの…私もついていってもいいかなぁ?」

「構いませんよ」

 サーチルは振り返ることもなくそう答えた。

「あ、あの…お邪魔しました」

 ペコリと頭を下げてサーチルの後を追いかけるクラードをブリビアは黙って見送った。

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