14 人さがし
「何だい、今さらサニーに何の用っていうんだい」
仁王立ちでそう問い詰めるブリビアの勢いにクラードは小さくなっていた。
「ご、ごめんなさい…」
クラードは、慌てて頭を下げた。
「ただ、サニーさんを見つけないと、今度は僕が…」
「ふんっ」
ブリビアは鼻を鳴らした。
「サニーがクビになった時は知らんぷりで、今度は自分がクビになりそうだからって随分都合がよすぎないかい」
クラードは青い顔して黙り込んだ。
ブリビアはそんなクラードをじっと見たが、彼は怯えるように視線を逸らした。
「まあ、あんたに怒ったってしょうがないね。どうせろくでもない上司なんだろ。まあ、そんなにしょげずにこれでも食べな」
ブリビアはそう言ってクラードにコーンがのったパンを差し出した。
クラードは、身を固くしながらそれを受け取ると、口に入れた。気がつくと、彼の目からは涙が溢れていた。
「な、なんだい…」
ブリビアの声は少々裏返っていた。
「口に合わなかったかい?」
「いえ、お、美味しいです。サニーさんが自慢していたのがわかります」
そう言ってまたクラードは大粒の涙をこぼした。
「そ、そうかい」
ブリビアは戸惑いながらも笑みをこぼした。
「それで、何で今さらサニーを探しているんだい?」
少し落ち着いてきたブリビアは、そう尋ねた。
「あ、えっと…」
言われてクラードは考え込んだ。見つけ出して連れてこい、とは言われたが、理由は聞いていない。
「すみません、わかりません…」
うなだれてそう応えたクラードにブリビアは呆れたようにため息をついた。
「あんただって仕事をしてんだろ。理由もわからず言われるままに動いていたんじゃあ、仕事は捗らないし、面白くもないだろ」
「はい…」
ますます小さくなるクラードに、ブリビアはまだ続けようとした言葉をやめて口を閉じた。
「まぁ…そんなことを言っても仕方がないか。とにかく、サニーをクビにしたような輩が、今度は何を言いだすか分からないからね。たとえここにサニーがいたとしても、はいどうぞ、と差し出したりはしないよ」
「そ、そうですよね…」
クラードは、力なくそう答えるばかりだった。
「ま、サニーはとっくにここにはいないけどね」
そして、ブリビアのその言葉にクラードはガックリと肩を落とすのだった。
「こんにちは」
硬い空気は、新たな訪問者によって打ち破られた。
「いらっしゃい」
ブリビアが笑顔を作って声のした方を見ると、パン屋のドアが開き、そこには一人の少年が立っていた。
「こんにちは。サーチルと申します。レイナさんの行方を捜しているのですが、ご存知ですよね」
ブリビアは盛大にため息をついた。
「君も、人探しなの。うちはパン屋なんだけどねぇ」
「お腹はへっているので、パンは買います。これとこれを」
サーチルはそう言って特に選んだ風もなくパンを2つ手に取ると、銅貨15枚をブリビアに手渡した。
ブリビアは戸惑いながらもその銅貨を受け取った。
「まぁ、話を聞こうじゃないか」
ブリビアはそう言うと、サーチルを店の隅に置いた椅子に座らせた。彼女は行き場をなくして挙動不審になっているクラードに目をやると、彼をサーチルの隣に座らせた。
「ちょっと待ってな」
ブリビアはそう言うと、しばらくしてココアを入れて戻ってきて、柔らかな湯気を立てるコップを二人の前に置いた。
「ありがとうございます」
サーチルはそう言って軽く会釈をすると、コップに口をつけた。
「何でサーチルくんはレイナちゃんのことを知っているの?」
ブリビアは不審感をあらわにそう尋ねた。