11 再出発は青空の下で
「本当にもう大丈夫なの?」
宿に滞在して3日目、すっかり顔色がよくなったレイナを前にサニーは心配そうにそう言って顔をのぞきこんだ。
「大丈夫。心配かけて、それに出発を遅らせて…ゴメンナサイ…」
そう言って下げたレイナな頭をサニーはわしゃわしゃと撫でた。
「もうっ!謝らないでいいって!それより、キツイ時は、ちゃんとキツイって言うんだよ、俺みたいに」
サニーがそう言ってニヤリと笑うと、レイナはコクンと頷いた。
そんな様子をステアとベアルは心配そうに見ていた。
「レイナちゃん、よかったらここに残って、宿屋を手伝わない?」
心配そうにステアが言うと、ベアルも「歓迎するぞ」と続いた。
レイナは、首を横に振った。
「…ありがとうございます。でも…旅を続けます」
「そう…」
ステアは寂しそうに呟いた。
「いつでもここに立ち寄ってね。待っているわ」
「ありがとうございます」
レイナは深々と頭を下げた。
「それじゃぁ、行こうか」
「よし!行こう!」
サニーの言葉にガーディアが勢いよく反応し、レイナがコクンと頷いた。
「ちょっと待て」
今、まさに出発しようとする3人を、ベアルが呼び止めた。
「あー、旅の目的地っというのは特に決まってないんだよな?」
「そうですけど…?」
怪訝そうな顔でサニーはベアルを見た。
「よかったらこれを友人に届けてくれないか」
そう言ってベアルが宛先が書かれた小さな包みを手渡した。
「別に急ぎではないから、わざわざ目的地にせずともら近くに行った際についでに届けてもらってもよい。古い友人がどうしているか気になってな。届けてくれないか」
「いいですよ」
「じゃあ、はい」
快諾するサニーの隣りで、ガーディアがベアルに右手を出した。
「この手は何だ?」
「配送料ちょうだい」
「いや、散々お世話になっているからいいよ」
サニーが断るのにもかかわらず、ガーディアはベアルに手を出し続けた。
「しょうがないな」
ベアルはどうやらしっかり準備していたらしい銀貨一枚をガーディアの手の上に載せた。
「…お前は、迷惑なんかかけずに、2人をしっかり守るんだぞ」
「任せといて」
ガーディアは力強く請け負った。
「ステアさん、ベアルさん、色々とありがとうございました。さて、レイナちゃん、ガーディアさん、出発しようか」
サニーが仕切り直し、ドアに手をかけた。
「じゃあ、行って来るね」
ガーディアは、そう言って元気よく手を振り、その横でレイナがぺこりと頭を下げた。
今度は本当に出発である。
晴れ渡る青空の下、3人での旅が始まった。
「行ってしまったわね」
3人の後ろ姿を見送り、ステアは寂しそうに呟いた。
ベアルはその肩を優しく包み込んだ。
「なあに、大丈夫さ。一年くらいの辛抱だよ。それに…友人には、ガーディア達が来たら様子を知らせて欲しいと手紙を入れておいたし」
「そうね、ありがとう。あの子は手紙なんて書きそうにないものね」
ステアは寂しそうに笑った。