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雨女でゴメンナサイ  作者: 真楠 冷
第1章
10/26

⑩再出発は休息の後で

「そう、ガーディアも旅に出るのね」

 ステアは少し寂しそうに笑った。

「じゃあ、今夜はご馳走にしましょう!プロートも食べていってね」

「いや、僕はまだ仕事の途中ですから」

 プロートは、ハッとして慌てて去っていった。

「ありがとねー。じゃあ、しばらくバイバイ」

 ガーディアは、その背中に声をかけた。


「さあ、しっかり食べて」

 テーブルいっぱいに並んだ料理にレイナは目を丸くしていた。

 テーブルに座るのは5人。しかし、並んでいる料理は、10人前といっても多すぎるくらいの量だった。

「ちょっと張り切りすぎではないか?」

 呆れ顔のベアルがそう言うと、ステアは軽く睨みつけた。

「あなたは、そんなに食べなくていいのよ」

「そんな風に言わなくったっていいだろう」

 ベアルが少し拗ねたようにそう言った。


 温かな夕食をお腹いっぱい食べた後、レイナとサニーはそれぞれ部屋に案内された。

「ここでゆっくり休んで。明日からよろしくね。おやすみ」

「おやすみなさい」

 ガーディアにそう挨拶すると、レイナは糸が切れたかのようにベッドに倒れこんだ。


 朝。

 すっかり陽は上がっているが、レイナが起きてくる気配はない。

「レイナちゃんって実はねぼすけさんなの?」

 すでに身支度を終え、朝食を口にしていたガーディアがサニーに尋ねた。

「うーん、俺も昨日会ったばかりだから…レイナちゃんの寝起きとか知らないけど…。でも、そんな感じの子じゃないよね…」

「そうだよねー。なんか心配。見てくるね」

 ガーディアは、そう言って立ち上がるとレイナが寝ている部屋の前に立った。


 トントントン。

 ガーディアがドアを叩くが、反応はなし。

「レイナちゃん?入るよ」

 ガーディアはそっとドアを開けて中に入った。


 レイナはまだ寝ていた。

「疲れてたのかなぁ?」

 ガーディアはそっとレイナに近づいた。

 息が荒い。額には汗が滲んでいた。

 額に手をあてると、熱い。

 ガーディアは慌てて部屋を出た。


「大変」

 戻ってきたガーディアが、小声でそう告げた。

「レイナちゃん、熱だしているよ」

「エッ⁉︎」

 サニーが、驚き、「もしかして、俺、無理させちゃってた?」と呟きながらオロオロとした。

「ちょっと疲れちゃったのかな」

 ステアはそう言うと、タオルを濡らしてレイナが眠る部屋に入っていった。


 熱い。だるい。息が苦しい。

 そんな中、額に触れるヒンヤリとした心地よさを感じてレイナは目を開けた。

「おはよう」

 ステアが、レイナにニッコリと微笑んだ。

「あ、わ、私…。出発…」

 慌てて起き上がろうとするレイナをステアはそっと押しとどめた。

「寝てなさい。まずはしっかり治さないとね」

「ゴメンナサイ。私…迷惑ばかりかけて…」

 涙を浮かべるレイナの頭をステアは優しく撫でた。

「謝らなくていいのよ。いっぱい頑張ったから疲れたのよ。こういうときは、しっかり休むのが一番」

 ね、と言い聞かせるステアにレイナは力なくコクン、と頷いた。

「出発は、休息の後ね。しっかり休みなさい」

 そう言ってステアは微笑んだ。

「それに、あの子も小さいときはあれでよく熱を出して寝込んでいたのよ。なんだか懐かしいわ。後で、飲み物と何か食べるものを持ってくるわ」

 そうステアに撫でられながら、レイナは再び目を閉じた。

「それに、あの子との別れが少し伸びて…ちょっと嬉しいのよ」

 ステアは誰にも聞かれない程度に小声で呟いた。

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