挑まれる最強女騎士の心情
突発的に何か書きたくなったので一時間で書いた。最初に合ったプロットは投げ捨てました。物を書くって難しいです。
なので、たいそうな展開はないので力を抜いてお楽しみください。
王国の兵士訓練所にて、二人の男女が剣を交わしていた。涼しげな顔で余裕を見せながらも剣をふるう女性はグラミン。女にしてこの王国の最強騎士の名を持つ女性騎士だ。一方で防戦一方となり苦しげな表情になっているのはタダ―ノ。王宮付近の警備を担当する騎士である。
しばらくして二人の模擬戦は終わりタダ―ノが床に汗だくで倒れる結果になった。グラミンはまだ余裕がありそうである。
「おつかれ! タダ―ノ。だいぶ腕を上げたんじゃないの?」
「そうだな、強くなったつもりだったけどまだまだみたいだ」
「そうかしら? 強くなったと思うけどなぁ」
「平然と立っている状態で言われてもなぁ」
そう? と首をかしげるとともにそのポニーテイルが揺れるのを見てタダ―ノは切り替えるように息を吐く。そうしてわずかに赤くなりつつも言った。
「それに……俺の目標はグラミン、君を守る事なんだから。このままじゃどちらにせよダメだろう」
「……っ! 軽口がたたけるならもう一戦しましょうか!?」
少し照れたようにグラミンがタダ―ノに詰め寄るとタダ―ノは軽口じゃない、本気だっつーのと戦いとは別の理由で顔を赤くさせて言った。
グラミン、彼女はこの国の最強騎士であり、そんな彼女に憧れて騎士を目指す女性は多く、その多くが戦闘技能もちの侍女となっている。そのためこの国は侍女の方が騎士よりも強いことがままある。王族や高位貴族の暗殺を防ぐのは騎士の剣ではなく身近にいる侍女のヘッドドレスだったりする。
騎士はどちらかというと治安維持のために動いている。しっかり住み分けがされているので意外と文句は出てない。王宮付金の治安維持に勤める騎士はそれ相応の実力が必要になるため侍女に負けないほど強いが、それよりも強いのが王族の専属侍女である。彼女らの紅茶無双には多くの騎士が理不尽とともに涙と紅茶を飲んできた。
そして、騎士の中ではそんな専属侍女に勝てるのはグラミンと王宮騎士の一部となっている。
そんな背景がある中でなぜ最強と呼ばれるグラミンにタダ―ノは挑んでいるのか、それは簡単な話である。一年前のある約束がきっかけだ。
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「グラミン! その、ちょっといいか?」
「タダ―ノじゃない、何? 王宮の警備のシフトに変更でもあった?」
一年前、専属侍女に勝ち騎士の中でも稀有な部類になったタダ―ノは少し頬を赤く染めながらグラミンに話しかけた。
「そういう訳じゃないんだがな。この後暇か?」
「ええ、まあそうね。訓練もないし警備もない、暇と呼べる状態ね」
「なら、ちょっと話があるんだ」
そう言いながら、訓練所の裏側に場所を移した二人。この時すでに彼らは王宮警備などを通じて親しくなっていたので、グラミンはタダ―ノの態度に疑問を持つだけで素直に訓練かな? と思いながらついて行った。そこでタダ―ノが切り出した。
「グラミン、あなたが好きだ。付き合って……ほしい」
照れているのか語尾がかすれ気味になったが、タダ―ノは確かに勇気を出して言い切った。王国最強と呼ばれる彼女に並ぶため訓練をしてきた男の告白であった。グラミンはそれを受けて驚き無言になってしまう。
「俺はあなたを守りたい。強いから頼りきりになるのではなく、女性らしく快活に笑うあなたの側で支えたい。どうか」
その無言を受けて断られると考えたのか、慌てながらタダ―ノは付け足す。しかし、それが良くなかった。
グラミンも混乱していたのだ、そこに『守りたい』という言葉が合わさってずれた解釈になってしまった。耳まで赤くしながらしどろもどろで答えていたのだが、タダ―ノもいっぱいいっぱいで、そんな彼女の対応を見ていなかった。
「じゃあ、あなたが私より強かったら、守られてみます……」
よりによって、自分よりも強くない奴はいないと周囲に呼ばれる女性騎士からの無理難題。タダ―ノはそれでもあきらめなかった。この日から二人の模擬戦は始まったのだ。
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模擬戦後、タダ―ノが任務に向かうのを「頑張れ!」と激励した後、グラミンは一人しゃがみ込んだ。
「あぁぁぁぁー、もう! バカ!」
思わず最後の不意打ちに真っ赤になってしまった自分の顔を隠すように、自分の気持ちに気が付かないように文句を垂れ流す。
「バカよ、バカ! 何でこんなガサツ女に惚れこんでんのよあのバカ! 余裕な振りするのもギリギリよ! 私の中で整理がついてないのにぃ……」
実はグラミンも余裕そうに見せていたが実はギリギリであった。タダ―ノが告白してきた一年前はかなり余裕があったため、彼がどれほど努力しているのかも身をもって知っている。そして、そんな彼との模擬戦を楽しみになっていた自分の始めて自覚する気持ちに盛大に慌てているのだ。
「こっちはやっと自分の思いに気が付けそうだってのにぃ……守りたいってこんな強い女に言うんじゃなくてか弱い侍女に言いなさいよぉ……ばかぁ……」
侍女をか弱い扱いできるのはこの国ではグラミンとタダ―ノ程度なのだが混乱している彼女は気が付かない。そして、そのまま愚痴を続ける。
「あいつがそうまでして惚れこんでるのは強い私なんだから、必死で余裕ぶってるだけなのにぃ……まだ強くなる気なのかなぁ……
このままだと私の気持ちに答えが出る前に負けそうだぁ……」
深く甘い溜息を一つ。膝の間に落とすグラミン。自分がいつかそうなるのも悪くないと思っているのに気付くのはまだまだ時間がかかりそうな様子である。
キャラ設定(以下おふざけ)
グラミン
剣の名前グラムをかわいくしました。聖剣系列から考えたのはこの後勇者になる予定だったから。一時間じゃ足りないね。バッサリカットされました。本当はグラミンのキラキラしながら戦う描写がしたかった。最後の方の愚痴の部分は逆に予定になかった。
タダ―ノ
勇者とのペアがただの騎士、から名前がタダ―ノになった哀れな奴。努力の人。本当はこのタダ―ノの努力の部分の描写をしたかった。最終的に勇者になったグラミンを辺境の街で助けて、魔王を二人で倒すなりなんなりして結ばれる予定だった。バッサリカットされたけど。
侍女
よく分からない部分。いつの間にか登場して、いつの間にか騎士を倒して、いつの間にか紅茶無双してた。勢いって怖い。
ほかの騎士
訓練所使いたいんだけどって思ってる
以上! 勢いだけで書いた短編をここまで見て下さってありがとうございました!




