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 駅から出ると、ブラッドタウンがあったエリアとは違い、家が沢山並んでいて、まさに住宅地であろうエリアに出る。

しかし規模に見合わず駅の出入口は1か所しかない、そこに人が集まりごった返していた、きっとこれがここの日常なのだろう。


彼が何やら受付で話している、どうやら何か手配している様で、相手の人も顔見知りと言った様に受け取れる。

暇だった私は駅周辺を眺めていた、すると一人の男と目が合う。

逸らすのも申し訳ないと思い、ジーっと見つめていたら、手招きされる。


行ってもいいだろうか?危なくないだろうか?幸い距離も離れていないし、待っていろとも言われてない、手持ち無沙汰だったのもあるが、何故か惹き込まれるようにその男から目が離せなくなってしまった事に気付いた私は、男の元に恐る恐る近づく。

「そんなビビんなくてもいいじゃねぇか。」

若干鼻にかかったとても特徴のある低い様にも高い様にも聞こえる声に対し、反射的に「た、大変怪しかったので…」と手をわたわたしながら返すと肩を震わせながらクククと笑い「あー、お前面白れぇな、呼んで正解だったわ。」

何が正解なのか不思議に思っていると怪しい男は自己紹介を始めた。

「俺はこの街で情報屋やってらー、情報屋さんとか兄さんとか呼ばれてるわ、ま、気軽に呼びやすい用に呼んでくれや。」

名前は端から(はなから)教える気がないらしいこの情報屋の男は、続けてこう言う「あの男、気を付けた方がいいぜ、あいつの家リード家は、悪い噂尽きねぇし、特に次男、女遊びが好きなのかわかんねぇけど、よく違う女連れて歩いてらぁ、知らぬ間に消えるって話もあるみてぇだし、まぁあくまで噂だがな。」

リード家の次男…、彼のことを知ってるようだ。


正直な所お金で買ってもらった人と、ついさっき会った怪しい男なら、買ってくれた彼の方が信用出来るだろう。

男からの助言をすんなり飲み込めるはずもなく、困った顔をすると「まぁ、今はわかんねぇよなぁ」と懐から紙を取り出し、器用にインク瓶の蓋を開け羽ペンで地図を描く。

「ここ、俺の家だから、困ったら来いよ、俺がいる時なら、いつでも特別扱いで招待してやるぜ。」とウィンクを飛ばしてくる、女好きなのはこの男の方じゃないだろうか。

「あっと…、この紙ばれたら取られるから気をつけろよ。」とご丁寧に通知番号付きの、封筒の様な入れ物に入れてくれる。

使うことがあるかはわからないが貰っておこう。

手続きをしている彼にばれたら拙い(まずい)らしいのか「そろそろ退散するわ」と駅の方へ歩いていく。

すれ違いざまに屈んで耳元でボソッと「てめぇはぜってぇ俺のところ来る。

待ってるぜ、リトルハニー。」と一言。

ハッとして振り返った時にはもう駅の入口付近にいた。

追いかけるように駅に向かうと、タイミングが悪く、丁度彼の手続きが終わった用で、こっちを見るなり「どこかいってたの?」と聞かれ誤魔化す為咄嗟に「と、トイレ行きたくて…探してて…」と貰った紙をばれないように後ろに隠しもじもじして見せた。

すると案の定彼は、目を大きくし、慌てた様子で

「あ!ごめんね!気づかなくて!トイレあっちだから!ひとりで行けるよね?!」とほのかに顔を赤らめて言ったが、彼の言葉も早々に切り上げダッシュでトイレへ向かう、なかなかに冷や汗をかく展開だったが、何とか乗り切れたようだ。





 一応トイレも済まし、さてこの封筒は何処に隠そうかと悩んでいた。

バレずに持っていくのが最適ではあるが、人の家に上がるのだ、しかも貴族の。

身体チェックも何も無い訳があるまい。

かと言って、何処かに置いておくのもリスクが非常に高い。

どうするか…、いや、ここは大人しく置いていこう。

あの怪しい男の家は幸いこの駅の近くだ、出来る限り頭に入れて、そうだな…ああ、トイレの前にあるゴミ箱の下にでも隠しておこう。

トイレを出てサッと彼から視覚になる場所から、そっとゴミ箱の下に潜ませる。


バレてないか?バレてないよな、と半ば祈りのように彼に近づき「お待たせしてしまいました…」と言う。

そうすると彼は「いやいや、俺の方が気を利かせて聞いたりしなくてごめんね」と謝ってくる。

「とりあえず、馬車来るから」と言ってからほんの数分で馬車が来た。

隷属の馬車の荷台とは違い、窓があり、屋根があり、座る所があり、個室の様な部屋だった。

彼はそれに慣れたような足取りで乗る。


少し高い足場へ登るのに「大丈夫?」と手を貸してくれる。

「す、すみません、ありがとうございます…」

椅子はふかふかで如何にも高そうな物で、今までの疲れもあり、急に眠気に襲われる。

うとうとしていると彼が「寝てていいよ、ついたら起こすよ。」と声を掛けてくれたので、お言葉に甘えて寝ることにした。




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