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 快晴という言葉が似合う空と街一面が見渡せる窓から外を眺める。

城門の前にある街一番の噴水広場を抜けた先には、賑わいのある市場が、騒がしい街人が、目まぐるしく動き大変活気にあふれている。

そこから少し外れた裏路地を抜ければブラッドタウンと呼ばれる貧民街があり、闇商売や取引が盛んにおこなわれている。

市場の人を縫うようにガラガラと走る馬車の荷台にいるのは隷属市場の大事な商品たち、これがこの街の日常。

コンコンと私室のドアがノックされ声がかかる、「クイーン、お客様が参られました。」と。

「今行くわ」と窓を閉め身支度をしはじめる、これもあたしにとっては日常。


この街には誰よりもあたしが一番よく似合う。

今日も街は廻る、あたしのために、これからもずっと働いてちょうだい、あたしのために。






 人の少ない裏路地で隷属市場の馬車が止まる。

荷台のドアが開き、商品が降ろされる。

「君はこっち、君はあっち、あー、君はご指名さんがいるからこのままで」なんて当たり前のように仕分け作業が始まる。

貴方と私たちでは何が違うの?と言ったところで、思ったところで何も変わらないしどうしようもない。

仕分け人が私を見て困った声で「あっちゃー、君キズモノかぁ、売れるのかなぁ」と。

私は何も言えず首から下げているお守りをきゅっと握る。


しばらくの間、男が私の判断を悩んでいた、そんな所に一人の男の子がやって来る。

「どーしたの?」

顔と身だしなみの整った、金髪の男の子であった。

仕分け人の男は先程とは違う態度で「おお、リードさん所の次男坊ちゃんじゃないですか!いつもお世話になっております。」とゴマをすり始めた。

話し方の具合から、恐らく私よりか歳上であろう坊ちゃんと呼ばれた男の子は、近寄ってまじまじと私を見た後、頭を撫でてきた。


「この子さぁ、商品にならないんでしょ?俺にちょーだい!」

いきなりの提案に仕分けの男は戸惑いながら「いいんです?リードさんに怒られませんか?」と保身に走る。

「父さんには俺から言っとくから、でこの子いくら?」

どうやら話の流れからして私の買い手が決まったようで、目の前でお金のやり取りや、書類などの契約書関連の処理等が始まった。





 契約は思ったよりも時間が掛かるらしく、部屋に連れていかれ奴隷としての教えを受けたり、検査をしたりで、一連の流れが終わり再び彼と会う頃には、空はほんのりと橙みを帯びていた。

仕分けの男が「ほんっとに、ありがとうございましたぁ」と坊ちゃんに深々と頭を下げる。


私は坊ちゃんになんて声をかければいいかわからなかったので、「は、はじめまして、この度はご購入ありがとうございます。」とマニュアル通りの台詞を述べる。

そうすると男の子がくるっと振り返り「ねぇ、この街で暮らしたことある?」と質問してきた。

いるだけでも暮らすになるのか、ちゃんとした生活をしなければ暮らすにならないのか、私には暮らすの定義が何処からかわからなかったので、とりあえず首を横に振っておいた。

「そっか、じゃあ街のことはあんまり知らないんだなー」

男の子は話を続ける。

「この街にはさ、クイーンて独裁者がいるんだけども、俺、そいつが気に食わないんだよね。

街の皆はさ、やり方はそりゃ人それぞれだけど、全員が善に沿ってお天道様の下堂々と歩いていないにしても、必死に、生きるために働いてるんだ。

なのにクイーンは自分だけ、肉だのケーキだの、美味しいもの食べて、毎日自分の好きなことして、綺麗な服着て暮らして、飽きたら俺ら貴族にちょっかいかけて暇つぶしてさ。

特に俺ん家は気に入られてるのか、目つけられてるのか知らないけど、よく呼び出されるし、ほんと嫌になっちゃうんだよなー、今朝だって兄貴が呼び出されて…」

独裁者だと言うことはよく耳にする話だった、しかし詳しい話までは知らなかった。

無論貴族にちょっかいなんて、普通に暮らしている街の人達は噂程度でしか知らないだろう。

黙っていた私を見て「あぁ、ごめんな、いきなりこんな話。」と謝ってくる。

「俺ね、今日君を見つけた時さ、運命なんて言ったら気持ち悪いかもしれないけども、似たような気持ちになったんだよね、何かが起こりそうな。」

そう話す彼は契約者プロフィールに書いてあった年齢より、少し大人びて見えた。




 彼の後ろを歩くこと数十分、大きめの駅が見えてくる。

これに乗って15分ほどで彼のいるエリアに着くという。

「乗ったことある??」と問いかけてくる彼に「ないです。」と短く返す。

「記念すべき初乗りじゃん!」等と彼が喜ぶ。

なぜ、この人が喜ぶのかと思っていると、顔に出てたのか、汲み取ったのか「なんか嬉しいじゃん、俺とが初めてって!」と誤解を招きそうな発言をする。

流石に貴族にこんな事言われるのは拙い(まずい)のではないか?彼に許嫁でも居ようもんなら殺人事件に発展しそうな発言だ。

きっと私みたいなのを買うくらいだから居ないのであろうという想像は容易ではあるけれども。

ガタゴトと豪快な音を鳴らしながら、前に前に進んでいく汽車は着実に目的地へと私たちを連れていく。

「あ、今日は多分俺の部屋になっちゃうだろうけれど、明日はちゃんと部屋用意してもらうから安心して!」

私は隷属市場の商品だったのだから、そんな丁寧な扱いじゃなくても良いのに、むしろ慣れてない扱いでどう返していいかも分からずごもごしてしまう。

「あ…ありがとうございます…。」

ふり絞って出した言葉がこれしか出てこなかった。


羞恥で下を向いていると、周りからとある噂話が聞こえてきた。

「街外れのあの森でまた行方不明者が出たらしいぜ。」

「あぁまた迷いの森の話かよ、上から見る限りだとそう広大な森にみえねぇのになぁ~。」

森…?行方不明、物騒な話題と耳を傾けている間にエリアの駅に着いたらしく、トントンと肩をたたかれ声を掛けられ、アナウンスすら耳に入らない程集中してた事を自覚し、私は急いで汽車から飛び降りた。









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