第一章-4
「確かに彼の戦い方を見たいと言いましたが。ここまで、する必要はあったとは思えません」
「あの戦闘狂を大人しくさせるにはたまに刺激を与えてやらねえといけないんでな。ま、これでしばらくの間は大人しくなるだろうぜ」
「攻撃もせず避け続けることがですか?」
「そんなわけあるか。まぁ見てろ、そろそろあちらさんがシビレ切らして楓を狙う頃だ」
竜胆翔の言う通り後方部隊にいる狙撃手が紅茶を飲む出水楓を狙う。
狙撃手の人差し指がトリガーにかかった瞬間、天宮陽斗の空気がまた変わった。
狂気と笑みが消え、心が消えているような感覚。
世界を凍てつかせるような冷たい眼差し。
その殺気を察知した狙撃手は瞬時に標的を天宮陽斗に変えるがそこにはもう彼はいない。
なぜなら、狙撃手は触れてはいけない彼の琴線の一糸に触れてしまったのだから。
気が付くと数メートル先にいた狙撃手を踏みつぶしていた。
狙撃手は強制退室により光の粒子となって消える。
そして、問題なのは瞬殺したことではなく、数人を除き観客席を含めた者達が驚愕したことについてだ。
あと、楓が口パクで『バカ』と言っているのは無視だ。
俺がやったことは客観的に見れば瞬間移動。
これがどれほどのことなのかというと。
異能者は生まれ持っているものが三つある。
一つは体内にマナを保有するための器官
その者にあった炎や水といった属性
そして、異能者最大の武器である能力
一番重要なのは三つ目のアビリティ。
数多の能力が存在するためその系統は五つに分けられる。
読心術や念堂といった超常的能力
体の一部もしくは全てを獣に変える《ビースト》
軍神や英雄の才覚を受け継ぐ《リンク》
神話級の武具を降臨させる《アルケミスト》
普通の動物からペガサスやドラゴンといった幻獣をも召喚することが出来る《テイマー》
以上が主な能力系統だ。
このどれにも属さないものがあるが今はどうでもいい。
問題なのは俺がした瞬間移動モドキはサイキックに属し、中でも希少とされる空間系。
この能力が使えるのはアトラス広といっても片手で数えるほどだ。