第一章-3
『それじゃあ、千堂後輩解説役っぽいこと頼むぜ』
『わかりました。まず、王子の前列部隊十人は良い動きしています。機動力を活かして天宮を囲み、焦らず徐々にその包囲網を狭めています。それに対して天宮は武器も出さずに様子見。完全に舐めてますね』
おーい、解説役、私情入ってるぞ。
『そして、包囲している間に残った四十人が陣形を整える。ヘイラムの特色である統率がしっかりしているな』
高評価に客席が一層湧く。
二人とも持ち上げるのが上手くなったな。
「どうした手も足もでないか?」
取り囲む一人からの挑発。
そろそろ、あっちの陣形も整ったか?
「いや、別に」
「強がるなよ。もうこちらの陣形は整った貴様に成す術はない。敗北し殿下をコケにしたことを後悔するがいい」
「七大国はそれぞれ特色がある。それは異能者の戦い方にも影響するもんだ。お前らが強大な敵を戦術と戦略で補うのは知ってるからな。ここまで待ってやったんだ失望させるなよ」
元来、異能者は戦いを好む。
普段はどれだけ大人しい人でも一度スイッチが入れば理性で止まることはない。
特に普段が面倒くさがりな人ほど好戦的だそうだ。
私はこの学園の長に招待されVIP席でその様子を見ていた。
あれが天宮陽斗。
先程までとはまるで別人と思うほどの暴れ様だ。
前衛の包囲網を搔い潜り。
後方部隊の鉄の雨を華麗に避け。
戦場を縦横無尽に駆け回る。
何よりも彼は笑っていた。
一対五十のこの状況を楽しんでいる。
いくら、異能者が好戦的と言っても限度がある。
彼は狂喜により狂気している。
「どうだ?いいデータは取れそうか?」
背後から声をかけてきたのは実況席にいるはずの竜胆翔。
この模擬戦を仕組んだ諜報人である。