第一章-1
異世界アトラス。
それが俺たち“異能者”と呼ばれる者達が住む世界。
数百年前。能力のない者達と上手く馴染めなかった当時の異能者たちはこの世界に移住し、独自の文化を築いたがほとんど前の世界と大差はない。
ただ、向こうと違うのは生活を支えるエネルギーが電気や熱ではなく、俺たち異能者の力の源である“マナ”と呼ばれるエネルギーであること。
そして、七つの大国に分かれていることだ。
その大国の一つ《ミストラル》
他の国と比べて少し変わっているが、緑豊かで住みやすい国だ。
国民は笑顔が絶えず、日曜日の市場は老若男女問わず多くの人で賑わっている。
そして、この国の六歳~二十歳までが通うのがここミストラル学園であり、今日はミストラル学園大学部の入学式というわけだ。
「帰りたい」
人…ゴミを見てうんざりする。
最悪酔いそうだ。
「気持ちはわかるけどさ。仕方ないんじゃない?」
隣に立つ楓もほとんど同じ気分だろう。
「相変わらず引きこもり体質だね」
…。こいつを弄ることで気を紛らわそう。
「なぁ、楓。人酔いしたのか何か聞こえたんだが」
「そうかい。けど、それ人酔いしたとか関係ないから」
「ですよね」
弄るのを諦めて後ろを向き視線を少し下に下げる。
十八歳の平均身長を軽く下回る彼女の名前は千堂奏夢。
高等部時代からの悪友みたいな奴だ。
「よう、千堂。相変わらず小さいな」
「ほっとけ!」
相変わらずいい反応するなあ。
「奏夢。遊ばれてる、落ち着きなよ」
俺ら三人。高等部一年から裏で様々な異名を付けられているが風評被害もいいところだ。
そこまで、悪いことはしていない。
「そろそろ行かないと遅刻するよ」
「やっぱり帰ったらダメか?」