プロローグ-1
【帝王学】
王家の血筋を継ぐものたちが幼少の頃より教わる家督。
上に立つ者として必要なもので、一般教育に該当しない。
さて、何が言いたいのかというと。
俺はこれでも王の血を継いでいる。
しかし、両親の顔は覚えていない。
覚えているのは親父の言葉。
たぶん、あれがうちの家督なのだろう。
『目の前にムカつく奴がいたら…』
「『とりあえず、殴っとけ』とか。いくら何でも物騒過ぎるだろ。うちの家督」
家督というより家訓ではないか?違いはよくわからないが。
「その物騒なものを実行したのはどこの誰かな?」
後ろに立つよく知った少女は心底面倒そうだ。
俺だって面倒だよ。
何せ、高いところから言葉並べるムカつく奴を殴ったと思えばそいつがどこか国の王子と誰が思う。しかも、その取り巻きが五十人弱いると誰が思う。
そして、殴った結果はこの学園の校則に従い模擬戦を行うため現在地は第一演習場。
観客席は噂を聞きつけたギャラリーで賑わっている。
「それで、一緒に戦ってくれるのか楓」
後ろに立つ彼女の名は出水楓。
何と説明すればいいのだろう。
まぁ、友達のようで友達じゃない間柄だ。
「え?ただ来ただけだけど?」
そういう彼女の手には紅茶が入ったカップ。
「だからって試合会場で優雅にティータイムかよ」
「それに私が必要とは思えないし」
紅茶を一口飲むと彼女は隅に移動していく。
「やれやれ…。おいそこの王子。一対五十は少し卑怯じゃないか?」
「これが僕の家のやり方でね。身分の違いがわからない庶民は圧倒的な力を持って叩き潰す」
「…そうか」
物騒な考え方をする家が多いな。
「先に名乗っておこう。僕の名はドラコ=アヴァロニク」
「ご丁寧にどうも。俺は天宮陽斗だ。まぁ、よろしく頼むわ」