思い出
第7話
俺と天使はカフェに来ていた。
幸いこの天使は羽とか生えていないので目立たずにすんだ。
『あなた忘れてないでしょうね。あと6日で終わる人生よ』
『あぁ忘れてないよ』
そう俺はあと6日で死ぬ。心臓麻痺で。これは天使との契約で決まっていたことだ。
『そう。ならいいわ』
『そんなことより、何故美沙は消えようとしているんだ?』
俺の彼女、葉山美沙は事故で死んだ。でも、俺と同じように、選択肢を与えられているのだ。
一つは一週間生き返れるというもの。二つ目は記憶と人生をリセットするというもの。最後はそのまま消える。
『さぁ。この世界にやり残したことが無いんじゃない』
『………』
『そう凹むな。可能性ならまだある』
『でも、俺の意見は相手には聞こえないんだろ』
『誰がそう言った?』
『あなたには、選んでもらいます。葉山美沙さん?』と私の前に立っている天使は言った。
『今から選択肢を三つ出すわ。自分の好きなものを一つ選びなさい』
私は深くうなずいた。
それから私に三つの選択肢が突きつけられた。
私ハ考エル。ソシテ………
『天使さん。選択肢とわ関係のない話なのですが。私のお話を聞いてもらえますか。すこし長くなってしまうのですが』
天使はうなずいた。
私には幼馴染の男の子がいて、そこ子はとっても泣き虫だった。小さい頃から一緒に遊んでいた。喧嘩だってしたし、仲直りもした。
それから私とその子は小学校に上がった。最初はお昼休みとかで一緒に遊んでいたの。でも2年生になった時、私はその子に拒絶されたの。その子は『女子と遊ぶなんて恥ずかしい』って言ったの。確かに私も女子と遊ぶことが多くなっていて、その時は何にも言い返せなかった。
私たちは四年生になった。その子はいじめられた。勉強ができて、他の子と趣味がすこしかけ離れている。それだけでいじめられた。
彼は耐えた。私も耐えた。耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて、耐え切った。
そして5年になった。いじめの対象が変わり、その子はいじめる側になってしまった。そうしないとまた嫌われてしまうから。
そうしていた彼は、ある日自殺しようとした。
私は止めた。必死になって止めた。いや、必死という言葉では表現できないほどだった。
彼は、自殺を諦めてくれた。その後、いじめる側に苦痛を感じながら、6年に上がり、中学に上がった。苦しみながら。
でも中学に上がって、彼は私と一緒にトラックにひかれてしまった。死んでしまったの。
おそらく彼はアリが潰されるように簡単に潰された。
私は思うの。あの時自殺を止めていなければって。こんなこと思っちゃダメだってことはわかってる。でも、そう思ってしまうのは事実なの。
私が語り終わる頃には、頬に水滴が垂れていた。