苦しみ
第5話
目が覚めたのは病院だった。
見たこともない天井と、嗅いだこともない匂い。少しばかりゴムのような匂いもする。
そうだ、彼女は、美咲はどうなったんだ?一緒にひかれたはずだ。
あれ?痛みがない。傷もない。
無傷⁈
どういうことだ。何故傷がない。
『それは、あなたが1番を選んだからよ』と耳元でささやかれる。
『うわっ!』
俺は大勢を崩しベッドから落ちる。
しかし痛くない。何故?
『私言ったでしょ。どんなことがあっても死ねないって』
そういえば言われた気がする。あの決断の間で。あの漆黒の暗黒の暗闇のダークで。
『あぁ確かに言われた。あれは本当だったのか』
『嘘付いてどうすんのよ』
『まぁそうだよな』
そういえば何でこいつはここに居るんだ。あの場でしか会えないのでは。
『なぁ、何でお前はここに居るんだ』
『いちゃ悪い?』
『いや、そうじゃ無いけど』
『ならいいじゃない』
『…………』
まぁ居ても悪いことはないけど。
そういや美咲はどうなったんだ?
『美沙は、美沙はどうなったんだ?』
『死んだわ』
絶望、絶望、絶望、絶望、ゼツボウ
は?死んだ?何を言ったんだこいつは?死んだ?そんな訳が。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。認めない。
目元が熱くなり、視界がぼやけてきた。
『本当よ、いまのところは』
『あいつは死ん……今…なんて?』
『選んでいるのよ。彼女が彼女自身のこれからを』
そうか、ということは美沙は死んだけどまだ、死んではいない。
『よかった……』と安心した声を出す。
『それが良くもないのよね』
え?
天使は続けた。
『彼女、そのまま消えようとしているのよ』
第一の選択肢 一週間生き返れる
第ニの選択肢 記憶と人生リセット
第三の選択肢 そのまま消える