天使
第2話
どうやらひかれたらしい。
まだ意識があるということは、そう時間は経っていないはずだ。
しかし痛みが無い。というか時間の進む速度が遅い。まるで時間の止まった世界に取り残された様だ。
状況判断は簡単にしか出来ないが、自分より身長の高い人たちが俺を囲んでいる。
おそらくさっきの高校生だろう。
せめて慰謝料ぐらいは欲しいものだ。我ながらゲスい。
思考ガ思ッタ以上ニ回ル。
しかし災難だ。明日デートだぜ俺。
一瞬脳内に横谷の顔が出てくる。恨まれてんのか?と思った。
このまま死ぬのか?という疑問が頭をよぎる。同時に死んだらどこへ行くのかという、ひどく怖い恐怖に襲われた。
ある一節は星になるという。またある一節は無だという。
無とは多分、生物ではなくなり、この世から存在自体が消えるということなのだろう。
まぁなんにせよ、俺が生きてい時間はもう長くは無いだろう。
手で触れている液体の様な感触は多分血液だ。それが増している気がする。
次の瞬間。痛みという言葉では表現出来ないほどの痛みが襲う。おそらく骨は砕かれており、腰辺りの肉が無い状態なのだろう。
痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ。
そして意識はどこかへ、遠い遠いどこかへ行くように、うっすら途絶えていった。
頭が痛い。冷たいものを食べたときの頭痛とは違ったものだ。
目を開けると、辺りは真っ暗だ。明かりが無い無。しかし身体の感覚はある。先ほど無かった下半身の感覚もあり、手の指も動く。身体は治っている。
『やぁ、目が覚めたかい?』
それは若くて、小悪魔めいた女の子の声だった。
『ん、あぁ』
まだ少し頭痛がするが応答する。
『そうか、それは良かった。』
『君は一体…』
『僕かい?僕は天使だ』
自称天使なんて信用できるか。それにこの女の子は黒い服を着ている。我々人間のイメージしている天使とは天と地ぐらいかけ離れている。
『まぁ、早速君に話がある』と自称天使は言い、続けた。
『あなたに選ばせてあげるわ』
俺は『へ?』と裏声を出す。