反撃の刻 2
勝機はある、 と言ったものの、 デルタが特訓していた相手は木。 能力どころか動きもしない……。
だが、 今目の前にいる敵は能力を使い、攻撃し、 動く。それも恐らく兵士か何かだろう……。鍛え抜かれた四肢は引き締まっており、強固なものとなっている……。
まぁ、普通ならば一少年が勝てる相手ではない。
「……行くぞ」
その声が合図だったかのように、突如として背中を強打する。
「っが!?」
何故だ!?
相手はピクリとも動いていないのにも関わらず不意の背後からの攻撃。
「くそっ!」
闇雲に後方へと拳を振るが、空を切るだけだ。
目の前の敵に目を向けると、地面を叩いていた。恐らくそれが能力の発動条件なのだろう。
その手には、風の様なものが浮かんでいた。
「襲撃波動【ダストシュート】」
そのまま右手の風のみをデルタの方へ投げ込む。
と、
衝撃波がデルタを襲う。
衝撃により、 瓦礫の山までふっとばされてしまった。
あれが、相手の能力だった。
襲撃波動【ダストシュート】。
手のひらに衝撃を溜め、 自由な方向に飛ばせる。
「死んだか?」
「ダメですって!」
やはり二人いる。
ガラガラと、瓦礫の崩れる音と共に上体を起こす。
「みーちゃった♪」
ニヤリと嗤うデルタ。
「リザレクション、か」
デルタの右手には、既に衝撃波の波動を蓄積させていた。
「くらえっ!!」
右手を振り切り、 衝撃波を投げ飛ばす。
が、
そいつはあろうことか片手でそれを受け止めた。
「えぇっ!?」
「悪いな、オレの能力は衝撃を吸収する。 幾らお前がオレの能力を再構築し、投げ飛ばして来ようがそれも全て衝撃。吸収対象だ 」
「…………」
せこっ!?
なんだよそれ!!
「でも、それは俺も一緒なんじゃないのか?」
能力のコピーは全てを構築する。吸収も構築対象のハズだ。
「あぁ、確かに吸収も構築出来ているだろう。 だが、プロの攻撃を全て受け止められるのか?」
「…………」
せっこーーーっ!!!
「それでも大人かっ!?」
「これこそ、大人だ……」
なんつー奴だよ……。
「さて、どこまで耐えることが出来るのか……楽しみだな」
「おらっ!」
デルタは、もう一度衝撃波を飛ばす。
「無駄だ」
しかしそれも軽々と受け止め、蓄積する。
……受け止め……。
……蓄積……?
「……へへっ」
ふと、笑う。
「……壊れたか?」
「何言ってんだよ……」
相手を見据え、言う。
「----俺はあんたに勝てる」
「……ふっ。やってみろ」
そう言うと、今まで蓄積していた衝撃波を全て放つ。それは家なんて軽々と破壊出来てしまうだろう勢いだ。
それを----受け止める。
「はぁぁぁぁぁっ!!!」
両手を前に突き出し、吸収する。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「…………」
「す、凄い……」
シュゥゥゥ……と、両手から音が聞こえくる。
震える手を握り、叫ぶ。
「いくぞォォ!」
ありったけの勢いで右手を振り切る。
「だから、 何度も……」
はぁ、と、嘆息し右手をだす。
「まだだっ!……母さん……」
眼を見開き、想像する。
衝撃波が----燃え盛る。
「っ!!」
受け止めるつもりでいた衝撃波が燃え盛り、意外にも慌てふためく。
そう、襲撃波動の吸収出来るものは、衝撃のみ。
----炎は対象外。
しかし、今更避けることは不可能。
「俺の…………勝ちだ」
「クソォォォォォっ!!」
Δ
もう一人の敵は、雇われの人間だった様で、 今回のことは何も関与していないという。
「本当なんですよっ! だからボク、一度しか攻撃してないじゃないですかぁ」
いや、一回攻撃してんじゃない……。
視無効【インビジブル】。
見逃す条件として、能力を構築させてもらった。
「よし……これからどーすったもんか」
家を破壊され、居場所をなくしてしまったデルタ。
せめて母親を見つけようと試みたものの、瓦礫が重すぎて動かすことが出来なかった。衝撃波を使えば吹っ飛ばす事は出来るが、 無傷で見つけたく、 止めた。
「……隣町に行ってみるか……」
デルタの目的地は、隣町、【ファウズタウン】となった。
【デルタ】
《所持能力》
再構築【リザレクション】
襲撃波動【ダストシュート】
視無効【インビジブル】