終戦
「…………っく! 逃げろエル!」
「嫌です! こんな状況で……デルタを置いて逃げるほど私は腐ってなんてないっ!!」
いつの間にか消えたデルタの左手。
傷だらけの両足。
額からは血が滴り落ちている。
「……そんなものだったのか、 デルタ。 淡い期待をしてしまった。 もしかしたら『再構築』ならばと思っていたのだが……」
目の前で浮遊し、 退屈そうな目でデルタを見下ろす神こそが、 あのホロウだった。
主最神。
「神にも能力があってな……と言っても、 愚民共の能力とは桁が違う。 そうだな、『神秘』とでも言っておこうか……。そして、我が神秘は全てに置いて最高潮、 万能」
能力に置いても桁が違う……。
どうして…………こうなった……。
--------全ては1日前。
「おーーい」
快活なノックの音と共に、 デルタとエルが本日寝泊りをしていた宿屋の扉の向こうから声が響き渡った。
部屋に飾られている時計は早朝4時を指していた。
「……? 誰だよ……」
壮大なまでの眠気から、 無視しておこうかと思ったが、 宿屋の主人だとマズイと思い、 重たい身体を床に敷いている布団から起こす。
因みにベッドはエルだ。
躊躇いなく開け放たれた扉の先に立っていたのは、見覚えのある2人の人物だった。
「久しぶりだね、 デルタ」
そう、 タタリとアイズだった。
「……っな!? お前ら……」
「口の聞き方がなってないねぇ、 デルタ」
アイズは、 そう言いながらデルタの両頬を引っ張る。
「いででででっ!! わ、わふはっはお!?」
悪かったよ、 と言いたかったのだが、 やはり上手くは喋れない。
「っつつつつつ……んで、 何の用だよ……」
脱線仕掛けている話の根本となる部分へと戻し、 疑問を問う。
たまたま見つけたから寄った。
なんてことはない筈だ。 そこまで簡単に見つけられるような行動はしていないし、 念の為に宿屋の登録の名前も偽名を使っている。
「いや、 そろそろデルタにも協力して貰うために、オレ達はここまで来たのさ」
タタリはしっかりとデルタを目線で捉え、 ハッキリと目的を言った。
「……協力? 俺に何をして欲しいんだよ」
不審感を抱きつつも、 取り敢えず目的の意図を探る。
「単刀直入に言うとね、 神殺しの手伝いだよ……いくらボク達でも神を殺すことは容易く無いんだよ……見てみてよ」
そういって、 アイズはタタリの服の左袖を肩まで捲りあげる……。
「……っ!?」
そのタタリの左腕は肩から下にかけてから、 姿を消していた。
無かった。
「タタリ……お、 お前……左腕」
「あぁ……剣技の主神、 グラムに落とされた。 流石は剣技の主神だけあって、 一太刀一太刀が凄かったぞ……」
……何の自慢話だよ。
「……んで、 そろそろ俺の力を借りて本格的に神殺しをしよう、 と?」
「イグザクトリィ!」
デルタの言葉に対し、 にぱっと笑うアイズ。
だが、 その瞳は決して笑って等いなかった……。
本気なのだ。
だから、 デルタは……。
「……はぁ、 わーったよ。やるよ」
--------そして、 今に至るのだか。
「だから言ったじゃねぇか!! お前は来るなって!」
現在の無残なまでの状況では、 只の言い訳でしか無いが、 それでも……。
それでも。
エルだけでも……っ!?
「--------うるさいですよっ!何度も言わせないで下さい……私は……私は、 仲間を見捨てないと誓ったんですっ!!」
仲間……。
初めて、 エルはデルタの事を『仲間』といってくれた。
「……エル」
だから、 もう。
「もういいか、 デルタ。 終わりだ」
「うぉぉぉぉおぉぉおっ!!!」




