今日未明、敵襲来。
未だ朝霧が立ち込めるなか、家の裏で素振りを行っている少年、デルタ。 漆黒と言う言葉がしっくりくる程の黒髪に、異端児と呼ばれる所以である緋眼。素振りをする度に髪が揺れ、チラチラと緋眼が煌る。
デルタ自身は、未だに自分の能力は知らない。能力の名は、文字として出てくる訳でもなく、辞典の様な物に載っているものでもない。【十二神】が知らせるものなのだ。
しかし、【十二神】がそれを躊躇っている。
それ程までに強力な能力を持って生まれてしまったのだ。
【再構築】、リザレクション。
能力:一度見たもの全ての習得。
それは、神でさえしき得ない行為。
つまりは、神さえ越えられる。と、いう事なのだ。
「………………ふぅ、……」
定期的な素振りを終え、近くの木の枝にかけていたタオルで全身の汗を拭き取る。
どんな能力にも、発動条件が存在する。その発動条件も【十二神】が伝えるのだが、名すらも教えていないのだから、発動条件も然りだ。
故に特訓を欠かさずに行っているのだが、未だに一度も発動していない。
「……ちっ! 【十二神】はいつまで俺に教えねぇつもりなんだよ……っ!」
怒りと焦りを募らせ、その苛立ちに応じ拳を握る。
と、
「………………………………」
何者かの気配を察知したデルタ。反応は森の奥からだ。
「いち、にぃ、……四、か」
最近、この村では不可思議な事が起きているのだと言う……。
牧場の牛が、全身の血のみを吸い取られ死んでいたり、鶏の羽のみを引き千切られていたりと。
それが人の行為なのか、魔物の行為なのかすらも不明だ。
もしかすると、その犯人かも知れない……。
すぐに立て掛けた素振り用の木刀を握り、森の奥へと眼を凝らす。
そこには…………。
「……人?」
視界に現れた四つの反応は、紛れもなく人の形をしていた、が。
全て頭が無かった。