エルという名の盗賊
「にししっ」
少女は快活に笑った。
金髪金眼の少女は、 自慢のショートカットを風に靡かせながら、 家の屋根を飛び回っていた。
「やったねぇ……まさかあんな簡単に成功しちゃうなんて……」
そう言いながら取り出したのは、 紛れることなくデルタの財布だった。
「さってと--------」
「----るぁぁぁぁあ!! まてぇぇいっ!!」
少女は自然的に声のする方、 つまりは後方に目を向けると、 そこにはデルタの姿が。
「……マジですか」
デルタは能力を駆使して追いかけてきていた。
熱量調整で身体能力を向上させ、 壁吸盤で壁を走り抜けながら追いかけてきていた。
「俺の財布!!」
「分かりました分かりました!」
エルは見晴らしのいい、 ファウズタウンの中心部に値する場所の大広間で、 観念したのか止まる。
「勝負しましょうか……。アナタが勝てばこの財布はお返しします。アタシが勝てば、 全てを置いていって貰います」
「……っく、 良いだろう。だが、 条件を増やす。俺が勝てばお前の全てを貰う」
「……っな!?」
再び自分の身体を抱き抱えるエル。
「ちげぇよ!? 俺の仲間にならねぇか……って意味だよ!」
エルには目の前の少年、 デルタが何を言っているのかが理解出来なかった……。
自分の金銭をパチられた奴を、 勧誘している……?
「……アナタ、 自分が何を言っているのか分かっているんですか……?」
エルは、 人を信用しない。
人は平気で裏切る。
裏切る事を生き甲斐としているかのように……。
そんな種族、 大ッ嫌いだ。
エルは昔、 しっかりと生きていた。
盗賊何かではなく、 真っ当に生きていた。
だが、 裏切られた。
自分は信じていたのに……。
エルは学んだ。
『自分が信じている相手だからと、 相手が裏切らないとは限らない』と。
それが人間であり、 最も嫌悪する種族。
「……分かっているさ。 自分の物を取って行く盗賊の可愛い女の子が前にいて、 俺は何も出来ない男じゃあない」
「……そこまで分かっていて、 一体何を思って言ったんですか?」
エルは、 デルタが分からない。
こんな人間は初めてだ……。
「……エル、 哀しそうな眼ぇしてんだよ」
「……っ!?」
見抜かれていた……!?
自分の感情を……。
「……何か昔にあったんだろうけどよ……顔上げて見てみろよ。 結構、 世界って広いんだぜ?」
観ていた。
デルタの試合。
傷だらけでボロボロになりながらも立ち上がり、 立ち向かっていた。
それでもまた倒され、 しかしまた立ち上がる。
そうか。
初めから、 自分はこの少年の何かに惹かれていたのかも知れない。
まだ感じていないモノを教えてくれるかも……と。
もう一度…………人を信用してみよう……と。
「……じゃあ、 教えて下さい」
だから、 エルも笑った。
「あぁ!」
これにて、 仲間が増えました。




