慰謝料
この部屋の窓の隙間から漏れる風と、 陽の光はもう浴びることはないだろう……。
まぁ、 この緊急医療室何かに入ることなんかもう金輪際無いことを願う。
経験済みのデルタから言うと、 とてもいい所では無かった。
ご飯は余りいいものでも無く、 テレビも無い。
今回のコロシアムでの出来事のお陰(別に喜んではいない)で、 多少のお金を手に入れることが出来た。
--------慰謝料。
うん、 いい響き。
お陰で財布はホカホカになった。
「さぁーって、 と」
『ん~~っ』 と背伸びをして、 空を見上げる。
あの死闘が嘘の様に青々とし、 広い。
そして、 デルタの次の目的地は次の隣町。
【ロウズドタウン】となった。
食べ物に恵まれた街として有名だ。
そう。
お金の次は食の調達に向かう事に決めたのだ。
「……行くか」
「----お兄さん!」
その女性であろう凛とした声は不意に掛けられた。
踏み出そうとしていた足を止め、 振り返ると、 そこにはやはり金眼の女性が居た。
金髪をショートカットに切りそろえた、 とても破廉恥に肌を露にさせている。
上はお腹までも無い黒のタンクトップに赤の上着を羽織り、 下は短パン。
「……肌の露出が高い」
「……っな!」
やべっ、 声にでてた!?
第一声が『肌の露出が高い』って只の変態じゃねーかよ!?
案の定彼女は手で自分の身体を抱き抱えている。
「…………じゃな」
「……いやいやいや!」
ちっ!
さり気なくこの場が辛かったので、 去ろうと思っていたのに……
「なんだよ……。俺に何か様か?」
デルタは第一声のことなど毛ほどにも気にせずに語りかける。
「あなた、 デルタですよね?」
「初対面にその態度はネェだろ……まぁ、 俺は如何にもデルタだよ」
捕まってしまったことに観念し、 名乗る。
「で、 あんたは?」
「アタシは『エル・アトラス』っていいます」
『ちーっす』ってな感じのセリフが聞こえそうな程に露骨なポーズをする。
「……そう、 んじゃ」
「だ、 か、 ら!」
ずい! ずい! ずい! と徐々に身体を寄せてき、 息が掛かるほどまで顔を近づけてきたエル。
「何でそーまでしで逃げたがるんですか!?」
不意に近付いてきたせいで、 不毛にも頬を赤らめてしまう。
女性体制が全くないのだ。
「い、 いや、 べべべ別に!!?」
全く舌が廻らずに絡まり、 上手く喋れなかった。
そんな反応を見て、 突然ニヤリと笑うエル。
「まさかぁ? 可愛い女の子が突然顔近づけてきて恥ずかしがってるんですかぁ?」
「自分で可愛いとかゆーなよ……」
まぁ、 可愛いケド……
「かーわいいっ!」
がばっ!と更に追い打ちを掛けるようにデルタに抱きついてきた。
「ばっ! お、 お前! やややややめいっ!?」
脱出するためにジタバタ足掻いて見るが抜け出せずに終わる。
「ぜぇ……ぜぇ……」
やたらめったら疲れてしまった……。
「はぁ~っ!満足しました、 じゃあ、 ワタシはこれで」
一体コイツは何しに……。
「ご馳走様でした」
……?
そのセリフを置き土産に、 エルはしゅたっ!と掛けて行った。
「……何だったんだアイツは」
嘆息しつつも、 何気なく後ろのポケットに手を入れる。
……?
何だ?
この違和感……。
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………財布っっ!!?」
そこには、 あるハズの物が無かった。




