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第3章 委員長

 学校の周りには、桜の木が何本か植えられていた。

 時期はもう4月の下旬なのに、満開に近い状態で咲いていた。この地域だからだろうか、俺が住んでいた場所では既にもう桜は散っていた。


 ビューーっと強めの風が吹いて、花びらがヒラヒラと舞い落ちる。

 手を出してみると掌に花びらが落ちてきた。雪みたいだ……。


 桜の花びらに打たれながら登校する風景は、なんとなく趣がある。しかも自分一人でだ。


 校門まで来ても、誰とも会わなかった。校門には警備員がいるのが普通だと思うが、この学校にはいないようだ。


 俺はあんまり目は良くないから、結構近くまで来ないと、どんな造りになっているか分からない。遠くからでも、ここは学校なんだとぐらいは分かるが、細かいところまでは良く見えないのだ。


 ………メガネがそろそろ欲しいと思う。でも、俺には似合わないって、友達のメガネを借りてかけた時に言われた。…コンタクトはちょっと面倒だからしたくないが、もうそろそろ考えた方がいいかもしれない。


 

 やがてサー、サーっと砂を擦るような足音が聞こえてきた。




「あ……あの、石河…翼君ですか?」

 

 え?


 いつの間にか目の前には、紺のブレザーを着た、髪の長い女の子がいた。

 誰なんだろう……俺のフルネームを知っているという事は、俺を知っている人なのだろうが、俺にはこんな綺麗な人の知り合いはいない。


「私、2年2組の月島つきじま 香織かおりといいます。クラスの委員長をやっていて、先生に転校生が来るから迎えにいって欲しいと頼まれました。あの……石河君ですよね?」


 あぁ、なるほど。だから俺の名前を一方的に知っているわけだ。


「うん、そうだよ」

「えっへへへ、良かった〜。うん、これからよろしくね!」

「あぁ、うんよろしく」


「ところで学ランを着てるってことは、まだこの学校の制服もってないみたいですね?」

「あぁそうなんだ。昨日急に転校が決まったから、まだ注文してないんだ」

「やっぱりそうですか。私達も今さっき急に転校生が来るって聞いたんですよ。昨日までは誰一人とてそんな情報入ったこと知らなかったみたいです。先生も」


 そりゃ、転校の手続きを済ましたのが昨日の夜だから、この学校の生徒にとっては今日の朝に情報が入るはずだからな。


「でもこんな中途半端な時期に転校って大変だったでしょう。何かあったのですか?」

「いや、ただ父親が急に転勤になったから引越ししただけだよ。別に実は宇宙人だとか、変な能力とかは俺持ってないから安心してね?」

「あはは……。私も別にそういう人探しているわけじゃないから」

 

 委員長は笑いながらも、ちょっと困ったような表情を浮きべた。



「ちょっと気になった事あるんだけど良いかな?」

「はい、何ですか?」


「あのさ、もしかしてこの学校って校則緩い?」

「あ……なんで分かったんですか? 確かにすごく規則は甘いと思いますけど……」

「だって君、金髪じゃないか。染髪許す学校……それに中学ではまずないと思うけど」

「こ、これは地毛なんですぅ〜〜!!」


 両手をじたばたされて訴えるこの子の仕草が愛らしいと思う。多分しょっちゅうからかわれているような人なんだなと思った。


「話は戻して、この学校は携帯持込も大丈夫なんですよ。さすがに授業中はまずいけど、休み時間に使用する分には問題ないのです」

 義務教育でこれだけ甘くする学校はどうなのかと思ったが、もう考えるのが馬鹿らしくなった。

「ということは、お菓子とかの持ち込みもOK? IPodの持ち込みも可?」

「もちろん。誰もが持ってきているものです」


 既に予想をしていた答えが返ってきた。

 学生にとってはすごく嬉しい学校のように思えるだろうが、比較的常識派な俺にとっては信じられなかった。


「という事はこの学校は不良が多い? 校舎の窓を全部割って回るような……」

「そんな人はいませんよ!」


 ………? 辻褄があってないような気がする。

「そんな生徒は一人もいませんよ。学校長は生徒を信用して、色んなものを持ち込み許可していますから。授業中携帯使って注意された人の話なんて聞いたこともないし、見たと言う人もいません」


 ……それもそうか。


「さて、ちょっと長話しすぎましたね。先生や皆が待っています。校舎に入りましょう。私についてきてください」


 俺は言われたとおり、これから一緒に勉強する事になるクラス委員長の後をついていった。

ちょっと長くなりました; これからちょっとずつ面白くなってくれると思います…。

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