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KYRIE   作者: リンドウノミチヤ
エピローグ
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28/28

〜王国〜3



     + + +



 白い羽根のような砂塵はやがて空に消えて行った。果てしなく続いた赤茶けた道は高地の小さな街に辿り着いた。

 男は路上にカワサキを停めた。宿を取るとその足で通りに出た。陽射しは強く、街は祭りの前の喧騒でごった返していた。



 ふと、雑踏の向こう、一人の少年が白い壁にもたれかかって佇み男を見ている事に気付いた。

 少年の手足は細く肌は月の光のように白かった。その顔は陽の光に反射して良く見えなかったが、彼は何故かその少年を確かに知っている気がした。



 少年はふいときびすを返すと白い通りの向こう側に消えた。

 男は名を聞かねばという思いに駆られ、後を追って通りを渡ると少年の消えた白い壁の角を曲がった。



     + + +



 男の娘が父親の死の知らせを聞いたのはNYに滞在中の事だった。

 彼女が最初に父の死を確認した。


 男は六十七歳になっていた。中米の街、白い壁で覆われた通りの安宿の二階で、彼は息絶えていた。

 死因は今もって不明である。



 男の横たわっていたベッドの枕の下には古びた小さな十字架が置かれており、宿の善良な娘によって遺族の許に届けられた。

 それは遠い昔、あのピアニストの父親が故国を去る時に気まぐれに家から持ち出した十字架で、数十年後ささやかな偶然を経てその孫娘の手に渡っていた物だった。亡き公爵夫人の棺に夫が入れた筈のその十字架の事は子供達は知らず、彼等は、生涯信仰を持たなかった父が何故そんな物を身に付けていたのか不思議に思ったのだった。




              

 ~儚く美しい聖なる時代の物語~   完

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