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ボス部屋?

「まじかよー!あそこで不意打ちとかまじないわー!」



 格上のフェイスウッドを撃退してよろこんでいたらもう一匹のフェイスウッドが背後から俺をタゲってきたのに気付かず死に戻りした俺。胸中は複雑だ。



「まあそれでも一匹は倒せたんだから大金星だよな。レベル差が10もあったし。それにしてもあの爆発ってなんだったんだ?」



 そう、辛くも勝利を手にできたのはパラライズトルネードに松明をぶつけると大爆発を起こすというあの不思議現象のおかげなのだがなぜああなったのかはイマイチわからない。



「うーん、そういえば前にあれをくらったとき粉っぽかったけどあれって何か関係あるのか?」



 粉・・・松明・・・松明・・・火? 粉と火?それってもしかして………



「粉塵爆発か?でも野外でそんなこと………」



 粉塵爆発とは簡単に言えば密室で粉などのごく細かいものに火が引火して爆発する現象だ。基本的に屋外だと風に流されて爆発を起こすことはできない。ではなぜ……?



「ひょっとするとゲームで、魔法だったからか?ゲーム内なら風で流されるなんてことは考えにくいし魔法の効果というか仕様で引火する物質がその場に留まっているんだとしたらありえるのか?」



 恐らくこういうことだ。パラライズトルネードとは風の中に痺れ粉みたいなものが混ざっていて、その粉のせいで麻痺を引き起こす仕組みなのだろう。



 さらに中央にはその粉が充満していて痺れ粉の密度も高い。中央の部分が煙っぽかったのは粉が充満しすぎて煙のようになっていたからだ。学校の黒板消しのような感じなのだろう。



 さらに松明は先端に火がともってある。調べてみないことにはわからないがあれにも攻撃判定か、少なくとも火として作用する設定がされているんだろう。で、松明は手から放しても地面に落ちるまでは燃え続ける設定だ。



 地面に落ちる前に粉に引火させればあの通り爆発が起こせるというわけか。大体こんなとこだろうな。他の連中がこのことを知っているのかどうかは知らないが少なくとも運営には認められた現象というわけだ。こんな一歩間違えればバグ技認定されるようなテクを運営がそのままにしておくわけがない。



 βの時は、すぐにパラライズトルネードが前衛の活動の妨げになると知られて誰も使わなくなっただろうし、ましてパラライズトルネードが発動するのは前衛側だ。松明を持っているのは基本的に後衛なので今まで気づかれなかったのかもしれない。



 これは運営の遊び心というものなのだろう。だとしたら素直に使っておくか。この方法を使えば狩りの効率は一気に上がる。



「そういえばドロップはと。…なかなか良さげな素材だな。お、レベル上がってんじゃん」



 さっきの戦闘の経験値で俺のレベルが6になっていた。しかももう少しで7に届きそうなほどEXPバーが伸びている。



 まあ、レベルが10も離れているやつを倒したんだ。これぐらいにはなるだろう。というわけで



「これから松明買いまくってあいつらを殺しまくれば経験値たんまりってことだよな」



 という思考の元、松明を買いにNPCの店へ。途中でフェイスウッドのドロップである人面樹の枝、人面樹の根を売るのも忘れない。驚いたことにこの二つだけで200Gになった。



 買ってくれた生産職の人の話を聞く限り、攻略は夕方から始まっているがシュラーの森は難易度が高いので探索や攻略は後回しにされ、今はビギナーフォレストや西のデロック沼地を優先しているらしい。



 しかもフェイスウッドはシュラーの森の奥の方にいかないといないらしいので素材が市場に出回ってないとのこと。NPCの店に売れば二つ合わせても100Gが精々だが倍にしてくれたのはそういうためとのこと。



「思わぬ収穫だったな。こりゃあいつらを狩りまくったら儲かるぞ」



 金に目がくらんだと言えば聞こえは悪いが思わぬ金策を思いついた俺は嬉々として松明を18本買った。これは全財産の290Gの端数分で、残った200Gで初心者用MPポーションを二本買った。



 ちなみに初心者用のポーションとはレベルが10になるまでそれなりの効果を発揮するがそれ以上になると効果がガタ落ちするアイテムのことである。だが俺はまだレベル6で使う分にはまったく問題がない。  



「よーし、確かさっき罠が発動したのってこの辺だったよな」



 シュラーの森に着いた俺はさっきかかった転移の罠を探していた。入り口からそう遠くないところにあったので探すのは簡単だった。足元が光り、魔法陣が浮かび上がる。



「来た来た。頼むぜー」



 視界がブラックアウトして、視界が回復するとさっき転移したところとは少し様子が違ったが薄気味悪い木々が生えている場所へと転移した。



「サモンゴーレム!そしてステータスサモン!いいか、敵が来たらまずは俺の盾になるんだ。攻撃はしなくていい。俺をかばえ」



「ゴ~!」



 ゴーレムを盾にしておけばあの爆発の余波にも耐えきれるかもしれない。そうしておけば俺自身はノーダメージで相手を倒せるしある程度近づかれても大丈夫だろう。



「キュルルルルルルル!」

「キュラララララララ!」



 そうこうしているうちにフェイスウッド二匹とエンカウントした。レベルは右が18で左が17。ちょうどいい。一度にどれくらい殲滅できるか試してやる。



「ゴー!」


「いくぞ!パラライズトルネード!」



 ゴーレムが俺の指示通り俺をかばうようにしてフェイスウッドとの間に立ちはだかる。パラライズトルネードは二匹を巻き込んでいるが二匹ともお構いなしで突っ込んでくる。もしかして植物系のモンスターって状態異常になりにくいのか?



「だがこれは耐えられるかよ?くらえーーー!」



 松明を未だ発動中のパラライズトルネードの中央に投げ込む。すると



 ドオオオオオオオオオオオオオオオオン!!



「フシャ―――――――!」

「フシュルルルルル―――――!」



 勢いよく燃え上がった。俺はゴーレムの陰に隠れていたからダメージはなかったがゴーレムのHPは三分の一がなくなっていた。結構近くで爆発させた性もあるがよほどあの爆発はすごいらしい。



「ゴーレム、もうちょっと下がるぞ。よし、この辺でいい。パラライズトルネード!」



 対して二匹のHPは半分近くにまで減っていた。とどめとばかりにあの竜巻の中央に松明を投げ込む。



ドオオオオオオオオオオオオオオン!!



「フシャ――――!」

「フシュ――――!」



 見事に圧倒した。だがレベル18のほうはまだ少しだけHPが残っていた。



「ゴーレム、あいつにとどめをさせ」


「ゴー!」



 爆発でひるんでいるところをゴーレムに殴りに行かせてHPを削りきる。ゴーレムをポーションで回復させてメニューを開く。レベルがすでに8にまで上がっていた。



「こいつはいい。金も経験値もがっぽがっぽだ。この調子でどんどん狩るぞ!」


「ゴ~!」



 

 そこからちょっとの間同じようにフェイスウッドを狩り続けた。どれも危なげなく倒せたが、上手く距離をとらないとゴーレムの被ダメージが大きくなるのでそこだけは注意だった。

 だが初心者用のHPポーション程度の出費だったら今回の稼ぎを考えれば補って余りある。



 そしてついに俺のレベルが10になったときシステムメッセージが入った。



『サモナーのレベルが10になりました。新しいサモンモンスターを選択できます。これからレベルが10増えるごとに新しいサモンモンスターを選択することができます。サモンモンスターの入手は始まりの街で行ってください』



『レベルが10になりました。初心者用ポーションの効果が低下します』



『レベルが10になりました。アビリティが変化します』



「おお!来たか、アビリティ進化。それと新しくサモンモンスターも選べるのか、やったぜ!」



 そろそろゴーレム一体だけじゃもの足りなくなってきたところだ。何がいいかじっくり考えておこう。それはそうとアビリティの確認しないとな。



 俺はホロウインドウのメニューを出してステータスを閲覧。そのなかのアビリティのところを指先でクリックし詳細を表示させる。



『コストMPカット』

 魔法・スキルなどの発動以外で消費されるMP消費無効

 サモンモンスターを召喚するときのMP消費を小軽減する



 サモンモンスターの召喚時のMP消費を少し軽減してくれるのか。目立った効果はないが確実に助かるな。ところで小ってどれぐらいの軽減率なんだろうな?



 ふと疑問に思ってなにかしら疑問に答えるような機能はなかったかと思ったがじゃあ聞けばいいじゃないかとの結論に達した。



「というわけで連絡取ってみた」


『どういうわけなの?』



 フレンドリストから妹を選択し、コールと呼ばれる電話みたいな遠距離通信機能を使って灯と連絡を取った。

 ついでに言うとコールは相手がログインしていればどちらがどこに行っててもつながるように設定されている。



「いやな、今しがたアビリティが進化してよ。それで『MP消費の小軽減』って出たんだが小ってどのくらいなのかなと思ってさ」


『あ、じゃあレベル10にまでなったんだ!おめでとう』


「ありがとよ。で、小とか中とかってどのくらいなんだ?」


『あーそれね。確か小だと本人の対応するステータスの1%くらいじゃなかったかな?』


「たったの1%か。あんま意味ないな」


『劇的な効果は期待できないね。けど高レベルになればなるほど1%の値が大きくなるよ』


「そっか、わかった。ありがとな」


『どういたしまして。あ、お兄ちゃん。その手の質問だったらメニューの設定のところにヘルプがあるからそこ見たらいいと思うよ』


「あ、やっぱそういう機能あったのか。ありがとよ」


『うん。じゃーねー!』



 こうして灯との通信を切った。そしてすぐ設定からヘルプを見つけ出す。システムについて大抵のことが載ってあるみたいだった。これで今度からシステム面でイチイチ悩まなくても済むな。



「よし、ちょっともったいないがキリもいいし一旦帰るか。でもどうやって帰るかが問題だな」



 俺は最初の方から歩いてきたわけではなくて転移の罠を逆手に取った移動方法をしているのだ。当然ここに来るまでの道なんか知らない。



「そう考えると次もここに来れる保証ってないんだよな。二回目に来たとき出てきたところが違ったからおそらくランダムで転移場所を変える罠なんだろうし。二回目にここまで来れたのは運が良かったな」



 さてどうしたもんかと思いながらフィールドを警戒しつつ探索する俺。当然途中での採取も欠かさない。



 そうやって地道にマッピングしながら歩いていくとまた足元が光った。あの転移の罠だ。ただ森の最初の方で見た魔法陣とどことなく形が違っている気がする。



「これ以上どこに行けって話だよ。まあ、どこに飛ばされても同じか」



 例のごとく視界がブラックアウトする。気が付くと妙な場所にいた。まわりはさっきまでのオドロオドロしい森ではなくまるで遺跡のような石でできた空間で、前方には大きな門がある。



「まさかとは思うがこれってボス部屋……か?おいおい、罠なのにボス部屋まで案内してくれるってのはどういうことだよ」



 そう、俺は今ボス部屋の前にいた。





 




 



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