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やられた?

連日のように感想を頂いているのですが、作者の時間の都合がつかないので大変恐縮なのですが感想のご返事はないものと思ってください。ダメな作者ですいません……。


 あれから何度も戦闘を繰り返した。長い時間戦っていたおかげで戦闘で金も稼げたし、素材もたんまり手に入った。これでかなりまとまった金になるだろう。


 

 残念ながらこの間の成金NPCは見つけることができなかったが、それでも長い時間狩りをしたおかげで全財産が4000Gだったのが8700Gにはなった。レベルは上がらなかったが、そこそこの経験値は入ったな。


 

 そろそろ15時か。ぶっ続けで3時間も戦闘をしていたことになるな。そろそろ休むか。ゴーレムたちをリリースして近くにあった池で休む。

 池の大きさは直径10メートルくらいだろうか?小さいわけでもないが大きくもない。ここなら水辺からモンスターが来ない限り大丈夫だろう。近くにモンスターの姿もないし。



 それにしても回復薬には助けられた。さすがの俺たちも無敵というわけでもなければレベル的に飛び抜けているわけでもない。ときには攻撃も喰らうし状態異常にもなる。



 そんなときに俺が作ったポーションが大活躍だ。回復量が店売りポーションに毛が生えた程度とはいっても少しでも回復するのはよかった。リザードマンのアースヒールとも組み合わせればそれなりの回復量になるから結構ムチャもできたしな。



「それにしても……あー疲れた!」



 寝そべり伸びをする。実際の体ではないから実際の疲労が襲ってくるわけではないが、不思議なもので長時間運動したかのような気もする。

 ここならまだ灯たち以外誰も来ていないから誰にも見られないだろうし、いいだろう。



 この後はどうするかな。ここまで来たんだから、もう戻るのはもったいない気もするが一旦休憩してしまうとまた戦う気も失せてしまった。幸い近くにポータルを見つけたから帰ろうと思えば帰れるが……。



シュルルルー!シュルルルー!



「なんだ?今何か聞こえた気が……」



 身体を起こして周りを見渡す。メガネでも周囲にモンスターの影はない。気のせいか……?



「シュルララアーーー!!」


「やっぱそんなわけねえよなあ!」



 なんと池の中からでっかいヘビが出てきた!池から身体を3メートルほど出しているが、まだ身体全体が出た様子はない。かなりでかいのか、それとも池から出てこれない仕様なのかはわからないが。



 ヘビは青い鱗に覆われた青い身体をしており、顔は普通のヘビだが首の周りに長い毛が左右に生えていた。

 ここは中ボスのいる場所だったのか?そういえば確かに開けているし、周りにモンスターの気配はない。

 こいつの名前はイケノヌシ。レベルは28だ。どう考えても水属性っぽいからゴーレムは相性が悪いよな。ゴーレム抜きでやるか。

 


「戦ってみるしかねえよな。サモンリッ……」


「シュルラアアアー!!」


「っておい!まだ……ぐあああ!」



 ずるい!こいつずるすぎる!まだこっちが戦闘態勢になってないのにいきなり口から攻撃を仕掛けてきやがった!

 確かにあっちからターゲットしてきたから先制攻撃のチャンスはあっちにあるし、すでに戦闘が開始しているのだからあっちが俺の準備を待つ必要もないが、心情的に納得できん!



 今の一撃をモロにくらって俺のHPのほとんどを削られてしまった。VITはグレイウルフの前に振ったきりだから仕方がない。

 疑問に思ってヘルプで調べてみたのだが、AGOでは魔法攻撃に対する防御力はVITとINTの値がそれぞれ半分ずつ関係する。

 今のはINTにも振っていたからギリギリ耐えることができたのだろうが、やはりそれだけでは一撃耐えることがやっとだったようだ。これじゃあ……。



「シュルラアアー!!」


「クッソオオオオオ!」



 訳も分からないまま俺は死に戻りした。エレガティスの死に戻り先も教会であったが、始まりの街よりも小さい。せいぜい田舎にある神社程度だ。だが、敷地だけはムダに広い。密林で何人も死ぬことを前提としているのだろうか?



「はあー。それにしてもあのやられかたは情けなさすぎるだろ。マッピングはできてるからわかりにくいかもしれないけど行けるっちゃ行けるよな。またチャレンジしてやる!」



 俺がそう決意を固めていると、となりに一筋の光が差した。その光が消えると、中にはミイがいた。ここに来たってことは死に戻りしたのか?



「よお、ミイじゃんか。やられたのか?」


「あ、セスニャン。そうなのにゃ。皆で洞窟のクエストをやってたらボスが強くてやられちゃったニャ」


「俺も同じだ。クエストじゃなかったけど、あれは中ボスクラスだったな。とにかく、手も足もでなかった」


「セスニャンが手も足も出なかったってどんだけ強い敵だったんニャ!?」



 あれは俺が強いとかあいつが強いとかそれ以前の戦いだったけどな……。むしろ戦わせてももらえなかった。

 俺が若干落ち込み気味になっていると、また二筋の光が差した。今度はエミリアとリサだ。



「二人ともやられたニャ?」


「うん。いきなり背後からやられたよ。あそこは前後左右を警戒しなければならないからやっかいだね」


「あら、セスさんじゃありませんか。セスさんもなにかにやられたんですか?」


「ああ、お前たちとは別のやつだったけどな。俺のは池に住むでっかいヘビだった。ところで灯はどうしたんだ?」


「灯ならたぶんまだ洞窟で戦っているんだと思います。けど、HPもかなり削られてましたし、私たちもやられてしまったのでこっちにくるのも時間の問題かと」



 あいつは単騎でどんだけ戦えるんだよ。四人連携してて押されてたのに、さらに後衛が先に倒された状態で戦い続けるとかどんだけだ。



「お前らを倒すなんて相当なやつだな。どんなやつだったんだ?」


「私たちの場合は洞窟にいる大きなモグラでした。大きいのが一匹いて、さらにその取り巻きが大勢いましたね」


「あいつら穴を掘って地面から攻撃してくるニャ。戦いにくくてしょうがなかったニャ」


「だよね。取り巻きは気づくといつの間にか地面から出てくるし、ボスは潜るのはときどきだけど岩とか投げつけたり、あの巨体で爪で接近戦も狙ってくるし」



 あっちも大概だったようだ。まあ、何もできずに負けた俺よりはマシか。それにしてもクエストか。あの成金君以外にもいたんだな。



「そういえばセスニャンの言ってた池って、もしかしてミイ達が受けたクエストの場所だったんじゃないかニャ?」


「ん?そうなのか?」


「ええ、洞窟に行く前に湖を見つけたんです。そこにいたモンスターのNPCに話しかけてみたら、娘を取り返してくれっていうクエストを出されてしまって」


「たしかウンディーネだったよね。なんでも、東にいるイケノヌシに娘をムリヤリ連れていかれてしまったから助けてくれっていう内容だったかな」



 間違いない。確実にあの池の大ヘビだ。となるとこの後は西の方を探索してその湖にたどり着き、そのあとあの大ヘビを倒すって流れだな。

 それにまだリッチたちのポイントには余裕があったはずだ。それで全員を強化して、さらに余裕があればステータスアップ系の薬を作って立ち向かってやる。



 そうだ、ちょうどいい機会だし、こいつらに薬師を紹介しておくか。たしかまだ自分で作ったポーションって残ってたよな。



「セスさん。もしよろしければその池までのルートを教えてもらえませんか?こちらも湖までのルートをお渡ししますので」


「お、そりゃ助かる。たしかマップってトレード画面でトレードできたよな?」


「はい。では早速トレードしましょう」



 これで湖までのルートもゲットした。ちなみにこのマップのトレード、実際にプレイヤーの間ではあまりやられないらしい。

 攻略サイトでも見ることができるし、なにより自分が苦労して作ったマップをおいそれと人に渡すことを嫌がる人が多いからだ。だったら攻略サイトにも乗せるなよって話だけど、それとこれとは別なのだろう。

 実際、ログインしたらネットなんかにつなぐことはできないから、攻略サイトのマップを覚えていない限り自由に動き回ることなんてできないだろうし。 



 そうだ。ちょうどいいし、ここらで薬師のことを紹介しておくか。将来こいつらがギルドを立ち上げたとき、俺のお得意さんになる可能性もあるし。

 個人的にこいつらのことは気に入ってるからそういう面でも役に立ってやりたいしな。こいつらなら俺のことはあれこれ言いふらさないだろう。



「なあ、ギルドの資金って今どのくらい貯まってるんだ?」


「はい。セスさんのおかげでだいぶ貯まりました。あと一息というところです」


「ギルドホームを買うのに10万はかかるけどそろそろ貯まりそうなんだ。セスのおかげだね」


「ありがとニャー。でも、内装やアイテムの備蓄も考えるとまだかかるんニャ」



 ふむ、貯まりそうなのか。それはよかった。でもこの状況で薬売りつけるのはちょっと罪悪感があるな……。

 しょうがない。今日のところは試供品ってことで渡してやるか。次からは有料にしておくけど。



「だったらさ、ちょっとこれを見てくれないか?」



 俺はアイテムボックスからもったいなくてあまり使ってなかった回復量が18%のHPポーションをエミリアに渡す。



「これは……ポーションですか?これが一体……ええ!」


「どうしたんだい?……えっ!?うそ!」


「な、なんで回復量が18%もあるニャ!?ポーションって回復量が10%のはずなのに!」


「い、一体これをどこで手に入れたんですか!?」


「ああ、それな。作ったんだよ。俺が」


「「「えええ~~~!!!」」」

 


 それから質問攻めにされた。クエストの条件はなんだっただの、どんなものが作れるのかだのと、いろいろと聞かれた。



「そんなものまで作れるのですか……。なんとなくですが薬師が始まりの街にいないのも納得です」


「どういうことだい?」


「薬師は他のゲームで言うところの、物語が進むにつれて解放されるシステムや施設の類、つまり他の生産職よりも一歩抜きんでている上位のジョブだったってことよ。もちろん、序盤で選べるジョブの中でだけど」



「どうしてそんなことになるニャ?」



「まずは素材の豊富さと応用力よ。薬の材料と言えば植物だけでなく動物の――――AGOだとモンスターのドロップだけど――――素材からも作ることができるわ。そうなると作れるものや材料は果てしなくなるでしょ?


 話を聞く限りだとこの辺や序盤のフィールドの物でもかなりの物を作ることができそうだし、作り方の手順を変えるだけでまったく別の物が作れたりもする。


 今の段階でも目を見張るものが作れるし、この先もっと先の方まで攻略が進んだ時一体どんな効果を持つものができるのか予想もつかないわ」


「でもそれって他の生産職にも言えることなんじゃないか?」


「もちろんそうです。でもですね、セスさん。セスさんは知らないかもしれませんが、こんな風に直接HPやMPに対して効果を発揮するものを作り出すジョブ、つまり回復系の物を作り出すことのできるジョブはほとんど無いんです。


 しかも鍛冶師なら基本的に鉱物からしか物を作れませんし、服飾士なら布や皮くらいからしか物を生産することができません。それに比べたら薬師は使える素材が多岐にわたりすぎています。


 だからというわけではないのでしょうが、最初から選べるジョブの中でも上位の物としてクエストを受けるまでに時間がかかるようになっているのでしょうね」



 マジか!だとしたらゲーム内での薬師の需要うなぎ上りじゃん。でもなんでそんなことをするんだ?他のジョブでも作れるようにすればいいのに。

 でもまあ、確かに鍛冶師が剣や弓なんかを作れるのにその他のジョブで剣や弓を作れてもあまり意味がないよな。



 同じ武器でも杖なんかの魔法の武器を作るジョブもあるけど、それは「武器」と「魔法具」っていう風に分けられてて厳密には同じものじゃないってことになるのか。

  


 その点、薬師の役割は文字通り「薬を作る」ことだからな。薬なら全般的に作れるはずだ、という理由で薬関係が薬師に集中するのも納得だ。

 で、薬師が薬全般を作れるから他のジョブにわざわざポーションなんかを作れるようにしても意味ないと思ったってとこか?



「運営も分かりにくいことするニャ~」


「このゲームには隠し要素というか、ただやっているだけじゃ気づかない要素もあるからね。これもその一環なんじゃないかな?」



 なるほど。それは俺のパラライズトルネードの爆発のことを言ってるな。確かにあれは普通のゲームのセオリー通りやってたんじゃ気づかないわな。



「それでですね……お願いがあります。私たちがギルドを立ち上げた際に、これらのポーションを売っていただけないでしょうか?もちろん言い値は払います。

 このことが他のプレイヤーに知れればきっと注文を取るのも難しくなると思います。ですから……」


「ああ、いいぞ。もとからそのつもりだ。しばらくの間は俺以外に薬師になるやつもいないだろうから、ギルドを作ったら優先的に作ってやるよ」


「ありがとうございます!」


「あとこれは試供品っていうか、先行投資だな。タダでやるよ。これでより買う気を起こさせるなら安いもんだ」



 と言って残っていた回復薬をいくつかと、魔除けの粉、MPポーションなど各種を渡した。



「ええ!?いいのかい!?」


「これって今ならかなり貴重なアイテムだニャよ!?」


「いいんだよ。その代りと言っちゃなんだが、このことはしばらく黙っててくれないか?金が貯まったら露店用のアイテムを買う予定なんだ。そしたらNPCも雇えるし、先に販売分だけ店に置いておけば後は自由にできるしな」


「わかりました。ではその時はよろしくお願いします」


「それまででも言ってくれれば有料だが、格安で作ってやるよ。なんかあったら連絡くれ」


「「「よろしくお願いします(ニャ)!!!」」」



 俺はその場を後にした。目指すのは密林の西、ウンディーネの湖だ。首洗って待ってろよ、ヘビ公!

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