たくさん薬を作ってみた
前回の話ですが、抽出に違和感があるということでしたので濃縮とさせていただきました。
これで大丈夫と思いますが、もし違和感があったら言ってください。
次の日、灯との朝食も終え、家のことも全部やっておいた俺は再びログインし、婆さんの小屋の中で再び作業を開始する。
結局灯たちはあの後始まりの街に留まり続けたままだったが、今日は四人で再び密林の攻略に精を出すらしい。
俺も誘われたが、まだ他のフィールドも回っていないと言って断っておいた。実際はポーションを作ることに専念するだけなのだが、知らせるにしてもある程度いろいろ作れるようになってから言った方がいいかなと思って黙っていたのだ。まあ、他のフィールドも回ってみたいというのは事実なのだが。
「よっし、やるか! 」
気合を入れ、これからの作業のために集中力を高める。まずは昨日途中で終わらせたポーションの量産だ。
できうる限り濃縮をしてポーションを作ってみたら回復量が15%だったが、これをもっと量産しようと思うのだ。
というわけでたくさん作ってみた。途中で失敗してしまうものも少なくなかったが、失敗しても一応は経験値も入るからまったくのムダというわけでもない。
次に作るのは、作るのが簡単そうな、ハーブを使ったハーブティーだ。煎れて飲むとHPとMPを同時に回復できるようなので手軽に作れて効果の高いものが作れるかもしれない。
まずは水を入れたビーカーをアルコールランプで熱する。その時にシステムメッセージが出て、継続して熱するかどうかを聞いてきたのでYESを押す。
するとアルコールランプのまわりに三脚と、熱するものを置くための金網が出てきた。まるで理科の実験だな。その上にビーカーを乗せる。
沸騰した湯の中にハーブを入れる。するとドンドン湯に鮮やかな緑色が溶けだしてきた。しばらくすると『もっと熱しますか?』とシステムから聞かれたので一旦熱するのを止める。
すると狙い通りハーブティーができていた。
ハーブティー
飲むとHPとMPを10同時に回復する
これは武器と同じだな。効果が複数であれば個々の数値は低くなる。同時に回復できるのはいいが、回復量がこれではあまり需要はないかな?
試しにハーブを一回粉末にして、HPポーションを作るのと同じ工程を踏ませてみる。するとできたのは同じハーブティーだった。粉末にするかしないか程度の差だからあまり結果は変わらないようだ。
とりあえず浅く広く、一つの薬をどこまで持っていけるかどうかは今は置いておいて、まずは何が作れるのかを確かめてみることにした。次の作業に移る。次はMPポーションだ。
HPポーションと同じ工程で魔力草を粉末にし、作ってみる。するとやはりというか、予想通りMPポーションができた。
MPポーション
飲むと対象のMPの総量の10%を回復させる
どうやら濃縮せずに作ると、今の俺では店売りのものと同程度の物しか作れないらしい。だがまだまだこれからだ。次に一回だけ濃縮をして、またポーションを作ってみる。
MPポーション
飲むと対象のMPの総量の12%を回復させる
HPポーションと比べると濃縮しても回復量が少し少ない。MPポーションはどのゲームでもHPポーションより高いし、作成の難易度も高いということなのだろうか。
とりあえずこれも三回分濃縮し、限界まで抽出作業を行う。そうして作ったら何とか回復量が14%まではいった。こっちもまだまだこれからか。
今度は状態異常回復のためのポーション作成だ。まずは毒キノコからだな。抽出すれば解毒ポーションになるということだったので、とりあえず粉末にしてみてポーションを作ってみる。完成した。
毒薬
飲むと毒になる
あれえー。おかしいな。工程が間違ってるのか?でも濃縮器の中にただキノコを入れても抽出はできなかったし……じゃあ煮詰めてみるか。
アルコールランプでハーブと同じように煮詰めてみる。するとハーブとは違い、水が文字通り毒々しい紫色の液体になっていく。システムメッセージからの通告を聞いて煮詰めるのを止めると二つのアイテムができた。
毒薬
飲むと毒になる
毒抜きされた毒キノコ
毒抜きされたことで安全になったキノコ。食べると、わずかに残っている毒成分のおかげで身体に毒に対する抗体を作る
煮詰めてみたところ正解だったようだ。この方法でも毒薬が作れたことから薬の作り方は一種類じゃないことが分かる。
ていうか毒抜きされた毒キノコて。それもう毒キノコじゃねえよ!しかも実はまだちょっとだけ毒性残ってるんじゃねえか!
などなど突っ込みたいところは数あれど、なんとか解毒ポーションへの道が拓けたな。毒抜きされた毒キノコを粉末にしてポーションを作る。すると今度はちゃんと解毒ポーションができた。
解毒ポーション
飲むと解毒作用がある
よし、今度は成功だ。あ、そういえば婆さんが漬け込んでみろ、みたいなことを言ってたな。ちょうどいいから毒抜きした時にできた方の毒薬の中にその辺にあった雑草というアイテムを漬け込んでみた。
雑草は文字通りただの草だ。何の効果もない。せいぜい草食のモンスターなんかのエサだが、漬け込んで様子をみる分にはちょうどいい。
雑草を入れるときにちゃんと、『漬け込みをしますか?』と聞かれたので安心して漬け込んでみる。完了するには少し時間がかかるようだ。
漬け込みの実験結果はまた後で分かるとして、他の作業に移るとしよう。そういえば乾燥をまだ試してなかったな。
というわけで薬草を乾燥させてみる。乾燥剤はコショウのビンのような形をしており、なかの粉を振りかけると瞬時に薬草が乾燥した。
ステータス的には何も変わらなかったがとりあえずこれでポーションを作ってみる。
HPポーション
飲むと対象のHPの総量の12%を回復させる
濃縮をしていない状態でこの回復量だった。となると限界まで濃縮してみるとどうなるのだろう?試してみるとこうなった。
HPポーション
飲むと対象のHPの総量の18%を回復させる
今まで作った中では最高の回復量だ。次は濃縮していない薬草の粉末にそのまま乾燥剤を振りかけてみる。すると一瞬光ったのちに丸まって丸薬になった。
HP丸薬 ✕3
食べるとHPを5%回復する。HPが満タンのときに食べると、HPが減った時に自動で5%回復する。数字の数だけ予め使用可能
面白い効果だ。満タンの時に食べれば、HPが減った時の予防薬になるというわけか。回復量はそれほどでもないがあらかじめ食べておくといいかもな。
同時に食べることのできるのは3個までか。一回攻撃を受けるごとに5%ってことでいいのか?
次に最大限にまで濃縮して丸薬を作ってみる。すると回復量は15%になった。丸薬はこれくらいの回復量がないと使えないな。
そろそろ薬草の数も足りなくなってきたので今度はキノコを中心に試してみる。毒キノコはもう試したので次は笑いキノコか?麻痺キノコも毒キノコと同じような結果になるだろうし。
だが、笑いキノコは麻酔薬にしても特に使えない気がする。敵に使えば特殊攻撃が使えなくなるがHPが減らなくなって倒せないし、味方に使えばスキルが使えなくなってろくにダメージが通らないし……ってああ!ゴーレム!そうだ!ゴーレムの攻撃ってスキル使ってないじゃん!STR依存のぶん殴りじゃん!
ゴーレムの火はスキル扱いじゃないし、これは使えるんじゃないか?それにスキル扱いにされたとしてもその攻撃力は変わらない!よし、早速作るぞ!
麻酔薬を作るのはたぶん簡単だ。普通のポーションを作る要領でいけばいい。笑いキノコを粉末にして水に溶かす。よし、できた!
麻酔薬
飲んでから1分間の間、HPが減らなくなるがスキルが使えなくなる。
これで1分間の間無敵のゴーレムが誕生する!今度は限界まで濃縮してみる。すると2分に延長になった。これはいざというときのためにとっておこう。まあ、俺以外に需用なんてないだろうけどな。
因みに笑いキノコをそのまま食べた場合、効果時間は30秒だった。麻酔薬にしたら効果時間が延びたということだな。
次は何にするかだが……苔ってどうなんだ?苔は余計な水分を取るらしいがそれって乾燥剤でも同じことができるだろ?どう違うんだ?
試しに苔で残り少なくなった薬草の水分を吸い取ってみる。すると薬草は乾燥剤で乾燥させたようになり、苔は握よりその緑色を深めた。
癒しの苔
薬草の薬効成分が溶けた水分を吸った苔。握っていると7%分のHPを徐々にHPを回復する
苔は握っていると効果を発揮するアイテムになるのか。これは他の草とかでも試す価値はありそうだな。
試しにキノコでも同じことをやってみる。するとキノコも同じように乾燥し、苔もそれに見合った効果を発揮するようになった。
それからさまざまなアイテムを作り出した。赤い実は苔をくっ付けると苔が「染料苔:赤」になり、月光草からは「魔除けの粉」が作れた。特にアロエからは「アロエジュース」、「アロエ軟膏✕1」、「アロエ丸薬」をそれぞれ作ることができた。
染料苔:赤
モンスターに当てるとプレイヤーの攻撃の命中率が上がる。モンスターが逃げた場合でもそのフィールド内であればマップに所在が表示される
魔除けの粉
撒くことで撒いたプレイヤーよりもレベルの低いモンスターが30秒間、撒いた粉の内側にこれなくなる。
アロエジュース
飲むとMPを11%回復する
アロエ軟膏✕1
塗ると毒、火傷、麻痺の状態異常を回復する。数字の数だけ使用可能
アロエ丸薬 ✕2
食べるとHPを10%回復する。HPが満タンのときに食べると、HPが減った時に自動で10%回復する。数字の数だけ予め使用可能
結構いいものが作れたと思う。魔除けの粉はただ単純に月光草を粉末にしただけでできたし、アロエジュースと丸薬はそのままポーションと丸薬を作る要領でできた。
アロエ軟膏が一番手間がかかった。まず、甘い茎を煮詰める。すると煮詰めた用の液体が、ドロっとするだけの「ドロっとした液体」ができるので、それに今度はアロエの粉末を加えて混ぜたらできた。
漬け込んだ方はもう少し時間がたたないと漬け込みが完了しないようだった。軟膏の方は「ドロドロしたものにも物を溶かせるのか?」という実験的な試みをしたら成功した。
途中いくつか失敗はしたが、概ね良好に作れたと思う。だがここまでやっても薬師のレベルは3にしかならなかった。
恐らく生産職は戦闘職よりもレベルアップが遅いのだろう。生産職にクエストがたくさんあるのは、生産職の金回りをよくするだけでなく経験値を貯めさせる目的もあったわけだ。
どれもこれも結構な量ができたので後で売りにでもだすか。まてよ?その前に灯たちにでも見せてやろうかな。ある程度だったら売らずにそのままあげたっていいし。
ちょうど今の時刻は11時35分。そろそろ昼飯にするか。こうして俺はログアウトをした。