ランクアップ
二日続けてランキング1位という栄誉を賜わることができました!皆さんのおかげです!ありがとうございます!
エミーナの家を後にした俺は再びモンスターギルドに到着していた。ゴーレムのランクアップと新しいサモンモンスターを手に入れなければ。
サモナーの窓口に行ってみると相変わらずカウンターはみすぼらしかったが受付は他の窓口と同じように見目麗しい受付嬢に代わっていた。
やはりクビになったかエミーナ。もう二度と会うこともないだろう。
「レベル10になったから新しいサモンモンスターを受け取りたいんだが」
「かしこまりました。ではステータスを確認させていただきます」
おお、すらすらと対応してくれる。さっきのやつがやつだったから新鮮に感じる。
「ありがとうございました。確認作業が終わりましたのでこちらからお選びになって下さい」
目の前にホロウインドウが現れてモンスターの一覧が出てくる。確認してみたけど最初に選べた奴と大差ない。
まあ、レベル10程度じゃこんなもんか。
ゴブリン、コボルト、グレイウルフ、フェイスウッド、リザードマン、スケルトン…etcさまざまあったが今回はどいつにしよう?
前衛はゴーレムがいるし後衛は俺とリッチがいるから布陣的には完璧だ。強いて言えば前衛が少ないか?スピードタイプのやつが鬼門だから小回りが利く前衛タイプの奴を探そう。
それから少し迷ってリザードマンにした。他はピーキーだったり必要なかったりしてちょっと俺的に需要がなかった。
リザードマンは万能タイプでこれといった特徴はないがどのステータスも平均的であり、クセも少なく育てやすい。
そんなリザードマンのステータスがこれだ。
リザードマン
LV:12
STR 20
VIT 19
INT 14
DEX 16
AGI 14
使用魔法
ビルドアップ
ファイア
空き魔法保有量:2
残りステータスポイント:10
見事に平均的だ。INTとAGIが他に比べて若干低いがSTRとVITがゴーレムほどではないが高い。
魔法も少ないながらも使えるから一芸に秀でた俺と俺のサモンモンスターの中ではある意味得難い戦力かもしれない。
ファイアも使えるしこれから爆発を起こすのにイチイチ松明を買い込む必要もなくなったのはありがたい。
それとあと一つ気になっていたのがサモンモンスターの選択の時にゴーレムの部分に「追加」と書いてあったところだ。これはなんだろう?
「なあ、この『追加』ってなんだ?」
「それはすでに契約しているサモンモンスターにのみ表示される項目でして文字通り新たに同一種類のサモンモンスターを手に入れることができます。ただしその場合はレベル1相当のステータスの状態で契約することとなり、ステータスポイントもつきません」
つまりこれで極端な話、魔法に秀でたゴーレムとかも作れるけど手に入れた時点ではステータスは最低限で一から自分でまた育てなければいけないってことか。
そのうち余裕ができたらやりたいと思うが今は必要ないな。
「あとはゴーレムのランクアップを頼みたいんだが」
「かしこまりました。あなたのゴーレムがランクアップできるのはこちらになります」
ガーディアンゴーレム
ひたすら守り続け守備の極意を身に着けたゴーレム。VITが強化される。
ナックルゴーレム
相手を殴り続け殴りの極意を身に着けたゴーレム。STRが強化される。
ヒートゴーレム
炎に耐え続けその身に火の力を宿したゴーレム。攻撃に火属性がつき火属性の攻撃に耐性が付く。水属性の攻撃に対し二倍のダメージを負う。
これはどうするかな。ガーディアンにナックルはやれることが限定されてしまうかもしれけどヒートにして明らかな弱点作るのもな。
でもゴーレムには盾としても攻撃の要としても期待してるしここはヒートか?
「じゃあヒートゴーレムを頼む」
「かしこまりました。ではこちらにどうぞ」
受付嬢に連れられてギルドの奥に行く。しばらく行くと広い外の空間に出てちらほらとモンスターがいた。
ここはギルドの所有する運動場なのだろう。
「ではゴーレムを召喚してください。処置をいたします」
「わかった。サモンゴーレム!」
「ゴゴゴーーー!」
ゴーレムを呼び出す。すると受付嬢が懐から杖を取り出し地面に魔法陣を書いていく。しばらくして書き終わったのか、杖をしまい魔法陣の上にゴーレムを置くように指示をしてきた。
「それではこれからヒートゴーレムへのランクアップを開始いたします」
ゴーレムを乗せた魔法陣が光りだす。だんだんとゴーレムの周りを赤い火色の光が包み込んでいきその光にゴーレムが完全に飲み込まれる。
それから間もなく一層光が輝きだしフラッシュを焚いたようにパッ!と光った。思わず目を閉じてしまい、開けてみるとそこには生まれ変わったゴーレムの姿があった。
主な見た目はあまり変わらない。身体は相変わらず煉瓦を積み上げたようになっているが身体が熱をもったように赤い。よく目を凝らしてみるとうっすらと湯気も出ているし手首と足首には火がまとわりついて腕輪、足輪のようになっている。
「ゴゴゴーーー!」
最初に召喚した時のように両手を空に上げて雄たけびを上げる。まだ会ってから二日も経ってないのにずいぶん愛着が湧いた。あのゴーレムがよくここまでになったものだ。
「お疲れ様でした。ステータスをご確認ください」
ヒートゴーレム
LV:22
STR 49 (+3)
VIT 55 (+5)
INT 15
DEX 10
AGI 5
攻撃に火属性付与。弱点属性の相手に対しダメージ二倍。水属性攻撃に対し被ダメージ二倍
残りステータスポイント:6
装備:ブロンズツーハンドソード
()の中が武器やサモンマスターの杖の効果で追加された分の数値だろう。STRとVITが上がらなかったがINTとDEXが一気に伸びた。
受付嬢の説明によると火属性の魔法は使えないようだがその分触れただけでダメージが通るらしく相手モンスターがうかつに触るとそれだけでダメージをくらうらしい。
さらに魔法攻撃ではないが両手足首の火の輪はある程度大きさを変えられるらしくその火にもダメージ判定があるので拳が届かない距離での攻撃も可能だ。
「確かにステータスの確認はしたぜ」
「かしこまりました。これでランクアップは終了です。他に何か御用はありますでしょうか?」
「いや、ないな」
「左様ですか。それでは窓口までご案内いたします。またのご利用をお待ちしております」
「はいはい、サンキュー」
受付嬢に窓口まで案内された後にギルドを出る。そろそろ12時30分だ。灯も待ってるかもしれないし一旦ログアウトするか。
ログアウトして昼食の用意をする。献立は夏らしくソーメンだ。灯もソーメンが茹で上がるころにはログアウトしてきてリビングに来る。
灯はリビングで俺を見つけるや否や飛び掛かる勢いで迫ってきた。
「お兄ちゃん!改めて聞かせてもらうけど一体どういうこと!朝は北の森にいるって言ってたじゃない!」
「まあまあ落ち着いて……」
「落ち着いてなんていられないよ!南の森ってまだ誰も攻略してないんだよ?なのにお兄ちゃんがもうその先に行ってるなんてどういうこと?誰と行ったの!?」
「いいから落ち着け」
「あうっ!」
ちょっと面倒だったのでデコピンをして黙らせる。まだなにか言いたそうだったがメシ食いながら話してやるというとやっと納得して大人しくなってくれた。
ソーメンをすすりながら朝俺が思ったことと俺が陥った状況について話す。ただボス戦のことについてはゲームで会った時にまたまた驚かせたいのでゴーレムのステータスを限界まで上げて偶然に偶然が重なって何とか倒せたと言った。
「そういうことだったんだ……。でもよくレベル10で倒せたよね。当たり前だけどあそこのボスが一番厄介なのに…」
「そうなのか?」
「うん。まず取り巻きを呼ぶこと。これは西の沼地のボスのファラオもやってるけどグレイウルフリーダーの取り巻き達は全員、挑んできたプレイヤーの中で一番レベルの高い人と同じレベルになるからこれがβの時は厄介だったの。」
「ああ、確かにあいつら俺のレベルと同じだったな。五匹しかいなかったけど」
「戦うプレイヤー一人につき五匹が駆けつけてくるからそれでも厄介なんだけどね。さらにボス自体の驚異的な連続攻撃だね。アクロバットな動きをしてなかなか捕えられないからβの時は前衛がのガードの上を飛び越えて後ろに来るから何度も戦線が崩壊したんだよ」
「そのくせ危機察知能力は高いんだよな」
「そう!自分たちにとって脅威だと思う攻撃をする人はまっさきに倒すか即座に避けたり効果が切れるまで様子見したりするからやり難くって!結局βの時は皆が同じレベルで臨んで後衛の人全員が拘束系の魔法を育てて唱えまくって動きが止まったところを何度も殴ってようやく勝ったんだから!」
「俺が戦った時はボスが遠吠えしたらHPが回復した上に欠員の補充までしてたぞ」
「ホント!?それはβの時はなかったよ!…それにしても運営ってばこれ以上難易度高くしてどうする気なんだろ」
「情報が役に立ったようでなによりだ。それより街の様子聞きたいか?」
「聞きたい!」
俺は街の様子について話していく。メシ屋と問屋の話をしたときも灯に驚かれた。なんでも両方ともβにはなかった施設らしい。
「問屋なんて便利なものができてるんだったらわざわざ始まりの街で生産職の支援をあれだけする必要なかったかも。こんなことだったら先に南の森を攻略しておけばよかった」
「難易度的にもレベル的にもムリだったんだから諦めろ。生産職の連中は喜んでたぞ。俺も買い取りでその恩恵に預かれたしムダじゃないだろ」
「そうかな?それに食堂なんて新しく実装されてたんだね。ステータスに恩恵が受けられるなんて便利だよ」
「材料を持ち込めばオリジナル料理も作ってもらえるぜ。ちなみに俺は青汁を出された」
「なんで青汁…?やっぱり苦かった?」
「ああ、青汁なんて飲んだことないけどゲロまずだった。一定時間状態異常が即座に回復するなんて効果が無けりゃやってらんねえよ」
「それかなりすごい効果だよ。それさえ飲んでれば西の森なんて簡単に攻略できそうだし。あそこって肉弾戦する分には楽なんだけど状態異常になりやすいからなかなか先に進まないんだよね」
「そうだろ?食べたその日は一日中効果が続くからお前らを案内したらそのまま西の森を攻略するつもりだ」
「それだったらさ、ちょっとの間その街を抜けた先にあるフィールドに一緒に行ってみない?私たちのパーティーと一緒にさ」
「お前らのパーティーってギルド組んでた連中だっけか」
「そう。βの時は私たち四人だけのギルドだったんだけどね」
「今回もまたギルド作るのか?」
「うん。けどみんなで話し合って今度は四人だけじゃなくて女の子のためのギルドを作ろうって話になってるの」
「女子のためのギルド?」
「正式サービスが始まってるから女の子も多くなるでしょ?けど中には男の人と上手くなじめなかったり男の人の中で少人数だけでいたくないって人がいるだろうからその人たちのためのギルドを作ろうってことなの。実際βじゃ結構そういう人もいたんだよ?」
「今すぐ作らないのか?」
「まだできないよ。ギルドホームを買うにもお金がかなりかかるし内装も揃えたいし上手く狩りができない人用にアイテムもそれなりにため込んでおきたいし……かなり手間と準備がかかるの」
「じゃあ俺に街に連れてってくれって言うのは…」
「そう。新しい街の情報とかその先のフィールドのアイテムや南の森のボスの情報とかを売ってお金にしようと思ってたの。けどお兄ちゃんも売る気だったんでしょ?」
「いや、まあ最初はそのつもりだったんだけどさ。今の話聞いてたらお前たちが売る方がいいと思うわ。情報に関しちゃ俺は売らないから好きにしな」
「えっ!でもお兄ちゃんが倒したんだし私たちは連れてってもらうんだから悪いよ」
「アイテムに関しちゃ俺もしっかり売る気でいるからいいんだよ。それに言ったろ?このゲームを教えてくれたお前になんかしてやりたかったって。いい機会だからそういうことにしておいてくれよ」
「お兄ちゃん……ありがとう!じゃあお言葉に甘えさせてもらうね!」
「そうしてくれ。じゃあ後でパーティー組むってことでいいのな」
「お願い。東の砂漠はもう攻略が終わったから午後からいつでも行けるよ」
「俺も家のことは昨日しばらくの間やらなくてもいいようにしてたし夜に少しやるだけでいいくらいだから俺も大丈夫だ」
「じゃあ食べ終わったらすぐにでもだね!」
「ああ。先にログインしておいてくれ。洗い物終わってログインしたらすぐにコールするから」
「わかった!お願いね!」
「おう」
昼食を食べ終わり洗い物をしてコクーンをかぶる。さてさて、どんなメンツが来るのやら。
というわけでゴーレムの強化は火属性になった、ということになりました。ナックルやガーディアンだとちゃんと金属になる予定だったのですが火属性だとむしろレンガのままがいいかな?と思いましたのでレンガのままです。
ですがこれからの強化では金属にできるように頑張ります!熱伝導の一番いい金属ってなんなんですかね……?