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生産の街

今回から昼の12時にさせていただきました。これで昼間の暇な時間などを潰す一因になればと思います。


なんと投稿してわずか二日で日間ランキング3位にまで上り詰めました!一体どうしたと言うのでしょう…ありがとうございます!


この時点でPV86000オーバー、ユニーク7300オーバー、評価ポイントも2600を超えました!自己新記録を大きく更新し続けています。これも皆様のお慈悲のおかげだと感謝の念がたえません。

 門をくぐるとそこにはさまざまな建物が所狭しと並んでいた。ちなみにゴーレムは街に入ると自動的に消えるようなので門に入ると同時に消えてしまった。



 壁に魔法陣のようなものを何個も書いていて気味の悪い色をした液体が入っているビンが置いてある店や煙突が高く伸びていてもくもくと煙を出しておりカン!カン!という音を鳴らしている工房のようなところ、記号だか文字だかわからないものを書いた紙がたくさん釣り下がっている一見中世ヨーロッパの普通の民家にしか見えない家など、本当にさまざまだ。



 まだここにプレイヤーは俺以外いないはずなのに「今なら鉄製の防具が800G!お買い得だよ!」「魔法使いにおススメのローブが安売りだ!今を逃すと次の機会はないよ!」などの活気のある声もあちこちから聞こえてくる。

 なかには「なんだこの剣は!やり直せ!」「スイヤセン!親方!」などという声も混ざっていて面白い。



「ごたごたしてるけどこの雑多な感じがいいな。なんていうか本当の街って感じがする」



 はじまりの街はBGMやプレイヤーの声しか聞こえなかったからなあなんて思いながら一先ずブラブラと街を散歩してみる。



「ていうかムダにNPCが多い…わざわざ歩かせて人通りを増やすこともないだろうに」



 東京の下町のように道幅があまり広いとは言えずさらに人の動きもあっちへ行ったりこっちへ行ったりとさまざまだ。

 街並みに合っているんだからいいんだろうけどこれがデフォだったらちょっと面倒だな。



 ちょっと街を見て回りながら少しずつこの街の特徴が分かってきた。まずこの街には基本的にアイテムや武器防具を売るNPCの店がなかった。

 じゃあさっきのあの掛け声はなんなんだよと首を捻りたくなるがそこはスルーする。



 恐らく生産の街という名前からして生産職のための街なんだろう。もちろん松明とかのプレイヤーが作れないだろう最低限のものは売っているが武器や防具、ポーションなどの回復アイテムも売っていなかった。



「ポーションがなかったのは痛かったな。ここでちゃんとしたポーションを買っておきたかったのに。ていうかポーションがなかったってことはプレイヤーが自分で作れるってことなんだろうけど…薬師だからなあ」



 ちょっと自分のスキル構成を思い出して気分が沈みそうになるがサモンマスターになれたんだしそっちはいいかって感じで持ち直す。



 で、ちゃんとした製品は売っていなかったがその代りに問屋と呼ばれる生産に必要な各種材料を売っている店があった。

 ちらっと覗いてみたが薬草、毒草、青銅、鉄、糸、布きれ、彫金用の宝石、アクセサリーの鋳型…など生産の材料になりそうなものが売ってあった。



 おそらくここで材料を買って各地にあった工房なんかで作って自分で売って…というサイクルを運営は期待してたに違いない。

 まさに自給自足ってやつだな。



 などなど街を散歩しながらつらつらと考えているとフォークとナイフをナナメに重ねあわせた店の看板が見えた。



「メシ屋?ここでメシも食えるのか?」



 気になって中に入ってみる。ドアを開けるとチリーン!という涼しげな音が聞こえた。

中はやはりというか大衆食堂のような内装で、入り口を入って左側にカウンターがありその奥が厨房なのか時折ジュッ!ジュッ!といい音が鳴っている。

 で、右側には広いスペースがありたくさんのテーブルやイスが並んでいる。多くが四人掛けになっており、パーティーがここで食事をするのを前提に考えられているのかもしれない。

 奥には二階へと続く階段もあった。



「いらっしゃいませ。お一人様でよろしいでしょうか?」


「あ…ああ」


「かしこまりました。どうぞこちらへ」



 まるで近所のファミレスに行った時みたいな自然な対応の仕方で席まで案内される。広いスペースのわりにガラガラだったので少しさびしい感じがした。



「ご注文をお伺いします」



 と言われて目の前にホロウインドウが浮かんできてメニューが出てくる。



「クリームシチュー、ざるそば、カレー、ピザ、ハンバーガー、ショートケーキ……まじでファミレスだな。値段があまり高くないところが救いか」



 ちなみに俺の所持金は今4000Gになっている。シュラーの森でフェイスウッドとグレイウルフリーダーを倒した時に手に入った金だ。戦闘だけで手に入れた金額としてはかなりのものだろう。他のフィールドだと同じくらい倒したとしても精々2000Gってとこか。 



「あれ?この『人替わり定食』ってなんだ?値段が0Gになってる」


「そちらはお客様に材料を持ち込んでいただくことでこちらが自動的に料理をさせていただき、お客様に料理を提供させていただくことになっております」



 何気なく言ったつもりだったがNPCのウエイトレスさんが疑問に答えてくれる。助かった、折角だしこれにしてみよう。



「じゃあこの人替わり定食で」


「かしこまりました。では材料をお願いします」



 メニューとは別にホロウインドウが出てくる。左側は『調理用食材』と書かれており右側には『調理可能食材』と書かれていた。

 右側が俺のアイテムボックスから料理に使える食材だけがピックアップされているようで、その中には薬草と各種キノコしか出ていなかった。苔とかはムリだったらしい。いや、食べる気はないけど。



「ただキノコが有毒なのしかない……。薬草二つでできないかな」



 毒キノコ入りの料理とか新聞の一面を飾れそうなので却下した。笑いキノコだったらギリギリいけるかとも思ったけどキノコなんて見分けるのも調理も難しいものを入れる気はしなかった。

 で、どうせなら上質な方をと思い効果の高い方の薬草を渡す。



「上質な薬草がお二つですね?そうなりますとドリンクになってしまいますがよろしいでしょうか?」


「いいよ、それでお願い」


「かしこまりました。しばらくお待ちください」



 そう言って手に薬草を二つ持ったまま厨房へと向かっていくウエイトレスさん。



 そういえばボス戦の時のドロップアイテムとか確認してなかったな。ゴーレムの変わりように驚いていたのですっかり忘れてた。それにシステムメッセージが言ってたボーナスも確認しないと。



「お待たせしました。こちら、青汁となります。ごゆっくりどうぞ」



 アイテムボックスを開こうとしているとすぐにウエイトレスさんが来て青汁を置いて行った。……青汁て。

 いや、分からなくはない。確かに色も同じだし効能的にも遠くない。薬草なんて薬っぽいものを提供したんだからそれは仕方がない。でも青汁か………。



「折角だけど気が進まないから後回しだな……。それよりもドロップだ、ボーナスだ」



 青汁を奥の方に寄せる。で、アイテムボックスを開き新規ドロップ欄を見てみる。



灰色巨狼の牙   8

灰色巨狼の爪   7

灰色巨狼の毛皮  9

灰色巨狼の尻尾  1

灰色巨狼の心臓  1



「お、結構一杯あるな。まあ、もともとパーティー推奨のボスを一人で狩ったんだからドロップの総取り状態だし当然っちゃ当然か」



 何気にレアっぽい名前のもあるしラッキーと思いながら今度はボーナスを探してみる。ボーナスはドロップのところにはなくいろいろ探していたら装備品のところに三つともあった。



探索の銀縁メガネ

分類:ファッションアイテム

 半径10メートルの範囲内の詳細を知ることができる。モンスター・プレイヤーを識別し、周囲の地形も知ることができる。知った地形はマップに反映される。



一撃離脱のグローブ

分類:ファッションアイテム

 装着時 AGI+20 DEX+15



グレイリーダーコート

分類:上半身装備

種別:防具

 装着時 フィールド上・戦闘でモンスターからターゲットをとられにくくなる。

     AGI+10

VIT+ 8



 ……どえらいことになってるんだが。どれもこれも俺の装備、いや、下手したら他のどの連中の装備よりも性能高いんじゃないか、これ?  

 ちなみにゴーレムが持っている両手剣のステータスがこれだ。



ブロンズツーハンドソード

分類:両手装備

種別:両手剣

 装備時 STR+3



 分かっていただけただろうか。最初期のレベルの低い武器とはいえここまでの性能差がある。しかもどれもこれも二つ以上の効果がついてるものばかりだし。



「まずこのファッションアイテムってなんだ?ヘルプヘルプっと」



 ファッションアイテムというのが分からなかったのでヘルプで調べてみる。どうやらファッションアイテムというのは武器や防具なんかと違って専用の場所をとらずに装備できるアイテムのことらしい。



 詳しく言うとこのゲームでは頭・右手・左手・上半身・下半身・靴と六ケ所にそれぞれ防具をセットできるが、ファッションアイテムはそれにとらわれずにピアスだったら耳に、チェーンだったら腰にそれぞれそこに該当する場所に装備があっても装着することができる。

 俺が手に入れたグローブも例え両手に手甲をつけていたとしてもその下にはめることができ、効果を発揮するというわけだ。



 さすがに耳に五個のピアスをつけるというように同じ場所に何個も付けることはできないが腰の右側にチェーンを巻いて左側にもチェーンを、などと少しは融通が利く。



 指輪やペンダントといったファッションアイテムはプレイヤーも作れるがドロップやボーナス、イベントやクエストの報酬で手に入るものと比べるとプレイヤーが作ったものは性能が低くなりがちになる。もちろん一概には言えないが。



 ちなみにグレイウルフリーダーを倒した後に出たボーナスだが、



単独撃破ボーナスシングルテイクボーナス

 ボスを単独で撃破したものに与えられる。レベルが相手よりも低い場合に発生し、レベルが大きい程いいものが手に入る。



初回撃破ボーナスファーストテイクボーナス

 初めてそのボスを倒したプレイヤーに与えられる。レベルが相手よりも低い場合に発生する。



最後攻撃ボーナスラストアタックボーナス

 そのボスにとどめを刺したプレイヤーに与えられる。初めてそのボスと戦った時のみ発生する。



 となっていた。どれも制限がかかっていて手に入れるのはかなり大変だとわかる。だがまあレベルがボスよりも高いのに何度もそのボスに挑んでレア装備を手に入れるなんてマネをできないようにするためなのだろうから仕方ないだろうな。  



「っと、ここでのんびりもいいけどそろそろ始まりの街にいかないとな。でも俺ってここに来るルート知らないけどどうしよ?」



 とりあえず灯に相談してみる。フレンドの中から灯を選びコールをかける。



「おーい灯、今いいか?」


『どうしたの、お兄ちゃん?』


「いやな、今エレガティスっていうシュラーの森を抜けた先の街にいるんだがここと始まりの街を直接行き来できる方法ってなんかないか?」


『ええ!お兄ちゃん北の森でレベル上げしてるんじゃないの!?』


「ああ、悪いがちょっと驚かしてやろうと思ってな。ていうわけでなんか方法ないか?」


『え、えええ~~~!?……え、うん、ちょっとね。あ、お兄ちゃん、一度切っていい?後でこっちからかけなおすから』


「ん?別にいいぞ」



 そこからしばらく待つ。ただ待っているのも暇だったしあった時に驚かせてやりたいので今のうちに装備を変えておこうと思い三つを実体化させて装備する。



 メガネは名前の通り銀縁のスラッとしたタイプの眼鏡でどこか知的な印象を受ける。

 グローブは手にぴっちり収まるタイプでグレイウルフリーダーの毛色と同じ色の黒に近い灰色の皮手袋だった。

 最後にコートだがこれもまたグローブと同じ色でヒザ裏まで伸びており体をすっぽり覆う大きさの皮のコートだった。前の部分はベルトのような金具が三つついており開け閉めも可能だ。俺はぴっちりと三つ全てを閉める。それでも首のところは余裕があるので苦しくない。



「おお、ずいぶんと初期装備からマシになったな。武器は後でゲオルクにでも作ってもらうか」



 武器は本当なら杖がいいのだがそこは他の生産職のやつを当たってみてからだな。とりあえずあいつにはゴーレム用の武器を作ってもらおう。



 と、俺が自分の姿に喜びながら待っていると頭の中でピピピ!という音が鳴って灯からのメッセージが来たことを告げた。 



『お兄ちゃん、お待たせ』


「おお、初めてコール受け取ったわ。大丈夫だ、問題なかったぞ」


『そう?あ、それでね街と街は行ったことがあるところだったら街の広場にあるポータルで移動できるよ。』


「あ、そんな便利なもんあるんだ」


『うん。それでさ、私と私の友達もその街に連れて行って欲しいんだけど……』


「そんなことできるのか?お前らって南の森攻略した?」


『街どうしを移動するだけなら一度その街に行ったことがある人とパーティー組めばいけるんだよ』


「そうなのか?で、お前の友達って?」


『βのとき一緒にギルドを組んでた皆なんだけどね、私のほかに三人いるの。お願いできる?』


「おう、いいぞ。じゃあ今からそのポータルってやつで始まりの街に行くわ。そっちはどこにいるんだ?」


『私たちは今東の砂漠の攻略をしてるとこ。ボス倒してから戻るからちょっと遅くなっちゃうかも』


「俺は始まりの街でやることがあるから時間は気にしなくていいぞ。ただし昼飯になったら一度落ちるんだぞ」


『わかった!じゃあ後でね!』 


「おう、後でな」



 こうして灯との通信を終える。あいつの友達か、どんなやつなんだろ?やっぱ廃人なのか?

なんて思いつつポータルに行こうと席を立とうとするが



「あ……青汁あった」



 この青汁をどうしよう?


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