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ボス戦1

とりあえず初回投稿分はここまでです。続きは明日から順次投稿していきたいと思います。

 ログインすると昨日ログアウトしたボス部屋の前に出現した。HP・MPが全開になっているのを確認して、道具を整理して戦いに備える。



 装備は右手には初心者用の杖だが左手には片手剣を装備する。



 AGOの武器は基本的に右手と左手に装備でき、片手で扱える武器なら今回のように右手に杖、左手に片手剣というように装備することが可能だ。



 だがそれをしてしまうと武器の攻撃力が下がったりしてしまうためやるやつはあまりいない。いたとしてももっとレベルを上げた状態のやつだったり独特のプレースタイルやネタで装備しているやつらだったりする。



 準備を整え、門を開く。門を開くとそこには広い空間が広がっていた。入る前のフィールドは木々に囲まれていたがここはそういった背の高いものはない。

 ただひざ下までの高さがある草が生えているだけだ。



「ここがボス部屋か。なんか思ったよりも爽快感みたいなのがあるな。さっきまで暗いところにいたからなおさらそう思う」



 そしてなぜか夜なのに昼のように明るい。ボス部屋だけが特別なのか?



 ヒュオオオオオオ、といきなり風の吹く音が聞こえたと思ったらさっきまで晴れてた空に雲がかかってきた。

 周囲がだんだん暗くなる。そしてどこからかワオオオオオオオオオン!というオオカミの遠吠えが聞こえてきた。

 来るか!



 タッタッタッタ!と複数のこちらに走ってくる足音が聞こえる。特に大きいのが一つあり、力強くこっちに向かってくる。



 奥の方から何かが駆けてくるのが見えた。あれは……オオカミか!



「ウォ――――――――ン!」



 出てきたのは全長五メートルはあろうかという巨狼だった。

 毛色は黒に近い灰色で、このフィールドの最初に出てきたグレイウルフを彷彿とさせる容姿で、名前はグレイウルフリーダー。



 レベルは20! まずい、俺のレベルの倍だ。

 しかもまずいことにグレイウルフのリーダーということはスピードも速いだろうからゴーレムの攻撃も当たるかどうかわからない。



「ルオ――――――――ン!」



 いきなり巨狼が遠吠えを上げた。すると奥の方からダッダッダという足音が複数聞こえ、こっちに向かってくることが分かる。



「「「「「グルルルルルルル!!!!!」」」」」



 遠吠えで呼ばれてきたのは五匹のグレイウルフだった。取り巻きというやつだろう、レベルはどれも10程度だがそれだって俺と同レベルだ。

 下手をすると取り巻きを殺すだけで手一杯になってしまうかもしれない。



「サモンゴーレム!ステータスサモン!」


「ゴー!」



 ゴーレムを召喚し、補助(バフ)をかけるのも忘れない。有ってもなくても同じかもしれないがかけないよりはマシだ。


 

 ゴーレムはステータスを割り振ったせいかその体を二回りほど大きくしており全長はおよそ三メートルほどになっている。

 大きさではグレイウルフリーダーに及ばないものの今までよりもはるかに力強さがましている。




「先手必勝!ゴーレム、俺の盾になれ!パラライズトルネード!」



 フェイスウッドに通じた爆発技を発動する準備をする。あとはあいつらが素直にひっかかってくれるかどうかなのだが……。



「ルオー――――――ン!」

「「「「「グルルルルル!!!!!」」」」」



 一斉に襲い掛かってきた!グレイウルフリーダーのほうはまだ後ろの方で待機しているけどそんなこと何の慰めにもならない!



「だがその竜巻の近くに集まったのは間違いだったな!これでもくらえ!」



 松明を投げて例の爆発技を発動させる。



 ドオオオオオオオオオオオオン!!


「「「ワオオオオオオオオン!!!」」」



 向かってきた三体がまともに爆発をくらった。それだけでHPがほとんど吹き飛んでいてあと一発殴るだけで倒せるだろうというほどしか残っていなかった。



「ルオ――――――――ン!!」



 ってそうこうしているうちにグレイウルフリーダーの方も向かってきやがった!俺は狙いをそっちに向けてスパークを打ち込む。



「ルオオ!」



「ち、やっぱだめか。」



 当たりこそしたがダメージも受けなければひるみもしない。そうこうしているうちにグレイウルフリーダーがダメージを与えた俺に向かってきた。



「ゴーレム!迎え撃つぞ!」


「ゴー!!」



 ゴーレムが相手で攻撃が通るか不安だが仕方がない。ゴーレムよりもVITが低い俺が矢面にたったら一撃でやられてしまう。



「ルオオオオオオ!」


「ゴー!!」



 ゴーレムが立ちはだかったことによりターゲットをゴーレムに変えたグレイウルフリーダーがゴーレムに襲い掛かる。



 正面から突っ込んできたグレイウルフリーダーが一度地面を踏むとその巨体からは想像もできないような俊敏さで垂直に右に跳び、回り込む。

 ゴーレムはその急な動きについていけていない。



 背後に回ったグレイウルフリーダーは一息に跳ぶとゴーレムをその爪で一閃しようとする。



 まずい!いくら強化したとはいえゴーレムに回したポイントは9ポイント、つまり3レベル分しか上がっていない。

 このまままともに喰らえばいかなゴーレムといえど一撃でやられてしまうかもしれない。というよりその可能性が高い。



「左手で裏拳を叩き込め!そして剣を盾にしてガード!」



 心の中で間に合え!と思いながらゴーレムに指示を出す。



 なんとか指示が届いたのかゴーレムの左手の裏拳がグレイウルフリーダーが攻撃を繰り出そうとした左前脚に横から叩き込まれ、直撃コースだった攻撃がわずかに逸れる。



 裏拳をした勢いのままターンをしたゴーレムが右手で剣を構えるようにして攻撃を受けた。態勢が良かったのか受け流す形になりグレイウルフリーダーはゴーレムを追い抜いてしまった。それでも攻撃は浅く入ったようだ。



 ゴーレムのHPバーを確認すると四分の一削れていた。浅く入ったにしてもかなりの威力だがレベル差を考えるとHPの減り具合が思ったほどでもない……?



 だがグレイウルフリーダーの攻撃はそんなことでは終わらなかった。攻撃がガードされ、受け流される形でゴーレムの背後に再びたったグレイウルフリーダーはゴーレムに背を向けて着地したにも関わらず着地と同時に背を向けたまま左側に瞬時に跳び、空中で体をひねってゴーレムを正面に見る。



「グオオオオ―――――――ン!」


「ゴ、ゴー!」


「まじかよ!そんな動きありか!?」


 するとすぐにゴーレムに突っ込んできて、今度は右前脚の攻撃を繰り出してくる。

今度はさすがに攻撃を逸らすことはできずゴーレムは剣で受け止めようとするが勢いを殺しきれなかったのか盾にした剣ごと攻撃を叩き込まれる。



 HPバーはさっきとは比べ物にならないくらいの勢いと量を削った。ゴーレムのHPが半分を下回り、残り数センチというところでやっと止まった。

 だが安心はできない。HPはもうすでにレッドゾーンにまで陥ってしまっているのだから。



 これ以上の攻撃はまずい!



「くそ、パラライズトルネード!」



 やけくそ気味にパラライズトルネードを放つ。グレイウルフリーダーは攻撃を加えた後先ほどと同じようにゴーレムに背を向けて着地し、今まさにその状態のまま横に跳ぶ寸前だった。 



 俺はゴーレムとグレイウルフリーダーが戦っているわずかな時間ではあるが取り巻きのグレイウルフ相手にパラライズトルネードを発動させ、一度爆発を起こしていた。



 これだけで二体のグレイウルフを倒し、さっき爆発に巻き込まれなかったグレイウルフにも大ダメージを与えた。

 最初にダメージをくらった一匹だけが今回は爆発を逃れたが残りの三匹はいずれも瀕死のダメージを負っている。  



 残った三匹はそのせいで警戒したのか一旦遠ざかっておりゴーレムを支援する余裕もできたからしたのだがこれは賭けだった。



 これでグレイウルフリーダーに麻痺がおこればまだもう少し戦える。だが麻痺にならなかったらもうなす術がない。MPはあと少しばかり残っているがそれだって心もとない。

 


 だがグレイウルフリーダーは思いもよらない行動に出た。



 パラライズトルネード自体はグレイウルフリーダーに当たっていたがそれを知覚した途端勢いよくその場から離れたのだ。

 今までのモンスターならパラライズトルネードに当たったとしてもムシして攻撃を続けていた。



 しかしあいつは凄い勢いでパラライズトルネードとゴーレムから距離をとりこちらの様子をうかがっている。



「まさかあいつ、パラライズトルネードが爆発を起こすってわかってる!?危険がなくなるまで静観しているつもりか!」



 だがこれでゴーレムからグレイウルフリーダーを引きはがすという当初の目的は達せられた。まずは今のうちに一旦ゴーレムを呼び戻してポーションで回復を……



「ゴ…ゴ~…」


「しまった!麻痺がゴーレムに!」



 ぬかった!パラライズトルネードのスキルレベルはレベル10に上がるまで使い続けていたおかげでレベル3にまで上がっている。



 スパークよりもレベルの上がりが早いのは恐らくパラライズトルネードによって起こす爆発で大ダメージを与えたせいだろう。

 攻撃したとき与えたダメージが大きければそれだけ速くスキルレベルは上がるようだった。



 そしてスキルレベルが上がったことによってその効果範囲も広がって、最初は直径三メートルだったのが今では直径五メートルほどになっている。 



 ゴーレムとグレイウルフリーダーの間に発動したパラライズトルネードは両方に当たったが最悪なことにゴーレムだけが麻痺にかかってしまったようだ。



「こうなったら俺が直接あっちに行くしかねえ!」



 心の中で麻痺らせてしまったゴーレムに申し訳なく思いながらゴーレムに近づく。初心者用ポーションではあったがゴーレムのHPを少しでも回復させるように努めるが、俺がレベル10になったからか効き目が悪い。

 ついでに俺もMPポーションを飲んでおく。そしてまたゴーレムを回復しようとして…



「ルオ――――――ン!」



 !?しまった、パラライズトルネードの効果が切れた!グレイウルフリーダーが向かってくる!

取り巻き達もいつの間にかグレイウルフリーダーの周りに集まっていて横一列になって追従していやがる!



 今ゴーレムは俺の後ろにいる。俺だけが避けるのはそう難しくはない。だがここで俺が避けるわけにもいかない。



 召喚時間延長の【バンダライザー】はあるがディレイを短縮するスキルは持っていないためここで俺が避けてゴーレムに攻撃が通ればもう勝ち目がないどころか一分だって生きていられないだろう。



「グルオ――――――――――ン!!」



 グレイウルフリーダーが取り巻き達より先んじてとどめとばかりに攻撃をしかけてくる。くそ!MPがギリギリだがやるしかねえ!



「拘束!」



 ダメもとで拘束を唱えて俺自身はゴーレムをかばうようにしてゲオルクから買った片手剣をさきほどのゴーレムのように盾にして攻撃にそなえる。 

 


「ルオ!?…ルオオ!」


「ぐ…おおおおお!」



 タイミングがよかったのか拘束がわずかな時間ではあるがグレイウルフリーダーを拘束する。しかし拘束が完全にきまる前に浅くではあるがグレイウルフリーダーの爪が俺に伸び、ダメージを与える。



「ルオオ―――――ン!」


「…パラライズトルネードぉ!」



 わずか一秒ほどではあるが拘束によって動きを止められていたグレイウルフリーダーが拘束を逃れ向かってこようとする前にパラライズトルネードを撃つ。



「ルオオ!ルオー――ン!」



 案の定爆発を恐れてかグレイウルフリーダーが後ろに跳び退る。さらに取り巻き達もグレイウルフリーダーの合図によって下がり、リーダーの側に控える。



「ちくしょお!浅く入った今のだけでこれとかどんだけだよ!」



 浅く入ったはずのグレイウルフリーダーの攻撃によって俺のHPはレッドゾーンに突入し、残り数ミリになっていた。



 今はパラライズトルネードを恐れてあいつらは引いているが効果時間が過ぎればまた一斉に飛びかかってくるだろう。

 今ので俺のMPも大部分が失われ、もう一度パラライズトルネードを撃つだけのMPがない。



「ワオ―――――――――ン!」



 さらに悪いことにグレイウルフリーダーが吠えると奥から二匹のグレイウルフがやってきた。取り巻きを増やしやがったな!



「ウオオ―――――――ン!」



 今度の遠吠えでなんと、取り巻き達のHPバーが回復し始めた!ただ待っているだけじゃないってことか!



 くそ、どうする?直にパラライズトルネードの効果も切れる。そうなったらもうなす術はない。どうする、どうする!



 頭が「どうする!」で埋め尽くされていた。折角ここに来れたのに全部ムダになってしまうのか?

このゲームを俺はもうかなり気に入っている。そしてこのゲームを教えてくれた灯にもなにかしてやりたかったのに。そのために単身、ムチャだとわかっていてもここに来たんだ、それなのに!



 ここからあがいたとしてもほとんど何もできないだろう。せいぜい取り巻き達を何匹か道連れにできるかどうかだ。

 



「……だとしてもここでハイそうですか、なんてやってらんねえよなあ!」



 そうだ、まだHPは残っている。ポーションだって心もとないがある。このままやられっぱなしってのは悔しい。

 


 腹が立つことにグレイウルフリーダーは取り巻き達を回復させたとき自分のHPも回復していたようだった。まあ、もとからたいしたダメージなんて入れられていないのだが。

 だったら、せめて、せめてあのボスに一太刀いれてやる!最後のあがきとしてあいつに目に物をみせてくれる!



 そう俺が決意を固めたときだった。



『条件を達成しました。サモナーの上位職、サモンマスターへの転職が可能です』

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