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コドモ戦争  作者: リリム
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迷走の四番街

警視庁の会議室で黒のスーツを着た男が目の前の警官に問う。警官が軽く震えているのは男の顔が怒りの表情を浮かべているからか、身分が圧倒的に上だからか。



「状況報告を。」

「はっ!学園の生徒達の証言によれば、放送で不審物の設置をされたらしいと警察から連絡があったと言っていたであります。」



額から流れていた脂汗をハンカチで一拭きした。驚くべきことに警官は青色の制服のまま警視庁に出向を命じられていたのだ。それもそのはず、彼は事件発生時に唯一現場にいたのだから。



「郷田巡査、詳しく状況説明を頼む。」



ああなんでこんなことになっちまったんだろう、と郷田は心の中でため息を吐いた。言葉を慎重に選びながら郷田はなんとか声を絞りだした



「交番には私一人で勤務していました。巡査長は病気で欠勤するとのことでした。巡回の時間帯になり、私は普通免許を持っていないので自転車で警らに向かいました。」




『はあ、はあ、はあ。きっついな。』

―学園は高台にありますので私は坂を登っている途中でした。ちょうど正門入り口前が平坦ですのでそこで乱れた息を整えていました。




「確か正門は坂を登りきった先の大きな門では無かったかな?」

―いえ。本来は私のいた所が正門入り口になります。ただ、大部分の生徒は先の大きな門を使うので便宜上正門と呼んでいるようです。

「続けてくれ。」




『いくら涼しいからってつらいよなあ。はあ・・・・』

―そこからはグラウンド全体が見渡せますので、何の気無しに見ていました。

『なんだありゃ?』

―その時です。



黒く蠢く固まりが校舎から走ってくるのが目に飛び込んできた。郷田は目を凝らし、生徒なのだと確認できた。


『避難訓練にしちゃまとまりが無いな。全く最近の若者は、って俺も5年前までは高校生だったんだよな、ハハ・・・。』

―始めは避難訓練と思いました。生徒が飛び出してくる状況なんて他にはありえませんから。ただ、妙に慌てて見えるのが気になりさらに注意深く観察しました。




『騒がしい・・・・。いや、追われているのか?』

―女子生徒の叫び声も聞こえてきました。助けて、と。おそらく私を発見したんだと思います。歩行者道路に集合されるのは危険と判断し、また混乱した状況を整理しようと思いましてグラウンドの隅に集合させました。



「その時はまだ異常は無かったのか。」

―いえ。教師及び生徒十数名が行方不明となっていました。私は逃げ遅れたものと判断して署に応援要請を行いました。その時に私は初めて知りました。



『至急、至急。東京マルゴーナナより署へ、東京マルゴーナナより署へ。』

〈どうぞ。〉

『鳴海学園不審物設置案件につき追加報告。学園敷地内に逃げ遅れた生徒や教職員がいる模様。至急ば・・・・』

〈失礼ですが所属は?〉

『・・・・?』




こちらの沈黙を了解と受け取ったのか、静かな声色だが一気にまくしたてた。




〈こちらの署にはそのような事件は報告されておりません。警察無線利用は犯罪ですよ。〉

『なっ・・・・』




そんなばかな!

郷田は頭の中がぐちゃぐちゃに混ざりあっていくのが分かった。急いで職員と落ち着いている生徒に詳細を問うてみたが、やはり警察から連絡があったと証言した。




『東京マルゴーナナより署へ。そちらの報告ミスはないだろうか。こちらでは実際に行方不明者が数名でています。』

〈君!誰だか知らないが勝手な情報を流し続けるのは犯罪だぞ!厳重注意で済ましてやるからさっさと止めるんだ!〉




なんだか知らないが自分はどうやら勝手に無線に介入した無線オタクになっているらしい。いったい何なんだよ、向こうは知らないこっちは知ってる。それに冷静に考えるとある一つの疑問点が浮かび上がった。仮に悪戯放送だったとしたら生徒は当然にしてもなぜ教師と連絡が取れないんだろうか。一応、職員には連絡をしてもらっているが、反応はないようだ。




〈どうなんだ!?黙っていても何も変わらないぞ!〉

―規定違反覚悟で私は学年主任に携帯無線で話してもらいました。向こうも確認したらしく、相当な慌てぶりでした。




「不審物連絡などしていない、と?」

―はい。後の事は・・・・




「了解した。郷田巡査は勤務を継続せよ。以上だ。」

「はっ!失礼します。」



「確定、いや決定だな。」

黒スーツを着たしかめ面が呟く。

「私にはにわかに信じがたい事案ではありますが・・・・」

しかめ面の脇にいた男が発言した。

「犯行声明も何も出されていない、しかし重要案件であることにはかわり無い。」

「いかがいたしましょう。」

「機動隊だけでは荷が重いかもしれん、早急に銃器対策部隊を編成だ。」

「はっ!」

「ネゴシエーター(交渉人)も急げ。何もしていない分交渉すれば何かしらの余地かひょっとして投降させる事ができるかもしれん。」

「了解です!」



にわかに会議室が騒がしくなりほとんどの男たちが外へ飛び出していった。唯一残ったしかめ面の側近が問う。



「彼らは何を考えているのでしょうか。こんな馬鹿なことを・・・・。」

「私の方が知りたいよ君。全くもって不可解だ。」

「ただの喧嘩のようなものですよこれじゃ。勝ち目の無い。」

「ここでグダグダ言っていても始まらない。私達も行こう。」

「はっ。」










今ここに全面戦争の火蓋が切って落とされた・・・・・・・・・・・・・・・・

いかがでした?途中変な表現があったと思いますが、それは報告時ににはあんなことを言う決まりになっているそうです。実際あんな番号があるかどうかは・・・・まあ気にしない方向でお願いします。感想や評価お待ちしております。

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