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コドモ戦争  作者: リリム
3/7

初撃の三つ矢

SIDE―cherry―



タッタッタッ。教室棟と技術棟を繋ぐ中央の渡り廊下はとても静かだ。それもそのはずこの時間帯生徒は授業を受けているべきであって、拳銃片手に走っている場合ではないのだ。


「あれだ」


走っていた脚を止め、葉月は左手に持ったグロックで

放送室と印刷されているプレートを指す。


「授業中だから誰も居ないとは思うけど気を付けなさいな。」

「はい。」


内心葉月は不安だった。計画がどうこうしたという意味ではない。後ろにいる女とは数回打ち合せをした程度で面識はほとんどない。しかし自ら進んで志願したわりには確か優等生だったはず、不満なんてこれっぽっちも無いと思っていた。

「合図するまで待機。オーライ?」

「YES SIR!」

にっこり。キミ、眼鏡に笑顔は犯罪だよ。たまんねぇぜこん畜生!


―キィィィィィ


軋んだ音を出しながらドアが開く。素早く拳銃を構え、左右に振る。


右・左・右・左、ヨシ。


右にあった倉庫の扉に手をかけつつ背後に声をかける。

「黒川カモ〜ン。」

「クスッ、はい。」


棚狭しとカセットやらCDやらが詰め込まれていた。周囲の壁全てがぎっしり詰まった棚だからかなりの圧迫感を感じる。十畳ぐらいだから決して狭くはないはずなのだが、長机の上にまで侵食しているカセット類や散乱した私物によって汚らしくなっていた。

「親父の部屋と変わらないわこりゃ。」

「結構汚いんですね、放送室って・・・・」

「そうだな・・・・って遠回しに馬鹿にしてます?」

「?」


しばらく考えているポーズをとり、黒川は

「ああ!」

と手を打った。


「そんなことないですよ。」

ハァ、天然ですかそうですか。やっぱり扱いづらいなーこの女。


「あ!連絡しなくていいんですか?」

「ナイスアシストじゃん!天然娘。」

「天然じゃないですっ!」







「了解した。レインからの報告が入るまで待て。」


―まだ来てないのか?


「ああ。地理的に一番遠いんだ仕方ない。」


―んだよ、せっかく俺様の華麗なる美声を聴かせて差し上げようとした


「葉月、ナルシスト」


―うるせぇ!



ぶつん。派手な音を立てて通信が切れた。葉月には冗談を言ったが心配なのはこちらもそうだ。地理的条件を考慮しても、さっきから20分は過ぎているのは遅すぎる。心配になり、

「同時通話」

から

「単線通話」

に切り替え

「レイン」

にコールした。










SIDE―rain―



―こちらグリード、レイン、送れ。

「レインだ。」

―妙に連絡が遅いのはどうした。トラブルか。

「ちょっとどころかかなりまずい事になった。」

―どうした?

「笹原がパニック障害の発作を起こして倒れた。」

―なっ・・・・

「ありがたいことに職務室のど真前でだ。」

―気付かれたのか!

「ああ。俺達はなんとか理由を付けて近くにいるが、はっきりいって計画の根本が崩れてしまった。すまん。」

―お前が気にすることじゃない。・・・・・

「・・・・・」

―仕方ない、笹原には悪いが利用させてもらおう。

「どうする?」

―担任は来ているな?

「ああ。顔が青白くなっているがな。」

―お前はこう言うんだ『連絡したら母親が迎えに来るそうです。担任に挨拶したいと言ってました。』

「それで?」

―担任と数人ぐらい付いてくるだろう、そいつらを全員眠らせろ。

「殺るのか」

―いや、殴るか絞めるかしてくれ。エーテルを使っても構わん。

「エーテル?なんだそれ」


―バッグの中に茶色い小瓶がある。それだ。

「麻酔薬、ということか。」

―ああ。だがクロロホルムのような速効性には乏しい。できるだけ多量に嗅がせろ

「・・・・難しいことを言ってくれるな。」

―野球部エースがえらく気弱になったもんだ。

「ふん、前日まで泣き言ほざいていたのはどこのどいつだ?」

―言ったからには成功させろ。

「ああ。『ケイスケの名の下に!』」



ずごっ。高山は生まれて初めて音が出るほどずっこける瞬間を耳にした。



―それなんだ!?

「驚いたか?葉月が夜通し考えたそうだぞ?」

―あー!っの馬鹿は何考えてるんだか。

「ははっ。それでいい、固くなるな。リーダーはどっしりと構えていてくれればそれだけで十分だ。」

―ああ!やってくれ。

「了!」







高山は意を決し、職務室へ足を踏み入れた。



「天国への門か地獄への門かどちらだろうな・・・・」










ザッザザー。砂嵐のような音が通信機から鳴った。男は満足そうな表情で応答し、また改めて指示を与えた。


―うまくいってくれよ―










―ジリリリリ!


急に非常ベルが鳴り、教室は水を打ったように静かになった。生徒同士の雑談が始まり教師は静かにしなさい、と注意をする。しかし教師自身も不思議に思っていた。今日は避難訓練は無かったはずだがとどの教室でもそう思っていたはずだ。と、放送が入る。



―たったいま警察より連絡がありました。警察署あてに当学園に不審物設置予告が出された模様です。担当のクラスを持つ職員は担当のクラスへ向かって下さい。生徒の皆さんは担当の職員及び学年主任の指示に従い速やかにグラウンドに避難してください。繰り返します・・・・



「第一段階終了だな・・・・ふぅ。なんとかなるかな」










10時42分。



鳴海学園が戦場として生まれ変わった瞬間だった

まだまだ戦争らしくありませんね・・・・すみませんm(__)m さて、次回は所変わって警察が舞台になります。大量の武器をやーさんから仕入れたわけですから当然マークされております。感想をお待ちしております

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