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冷えたコーヒー

作者: 山下夏樹
掲載日:2026/06/06

ハンドドリップをしました。コーヒーの違いなんて分からないけれど、ちょっと気取ってみました。

とくとくと香り立ち、ぷくぷくとした泡を見ているのは心地いいです。


けれど残念なことに、コーヒーフィルターは僕ではなく彼を向いていました。


彼は言いました。


「まるで花屋だね。前提とする他者に花を挿して、肝心の中身は空っぽだ。」


僕は苛立ちを覚えました。


ゆっくりと振り返った彼は、今にも泣きだしそうな僕でした。


コーヒーが淹れ終わった静寂。

彼と、マグカップとにいっぱいに溜まった黒い液体を、僕はシンクにどっと流しました。


色の薄い、二回目のコーヒーを冷蔵庫にいれました。

あとから飲んだのですが、ラップをかけていなかったから、飲むころには酸味と雑味が強くなっていました。


冷蔵庫で怠惰を吸い取ったコーヒー。空虚な僕にはぴったりな飲み物でした。


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