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第66話 猿と組織プロファイル

組織プロファイル:八咫烏ヤタガラス

正式名称:

内閣情報調査室 / 特殊事象対策課

(Cabinet Intelligence and Research Office / Special Phenomena Countermeasures Division)


コードネーム:

八咫烏ヤタガラス

※所属するエージェントは、国内外の他組織から「カラス(The Crows)」と通称されることが多い。


基本理念:

『調和と秩序の維持、及び保護』


能力を「戦略的資源」と見なすマジェスティックとは対極に、ヤタガラスは因果律改変能力者を「特異な才能を持つ日本国民」として捉える。彼らの第一目標は、能力者を危険から「保護」し、その力が社会の「調和」を乱すことのないよう適切に「管理」し、国内の「秩序」を維持することにある。


歴史:

その起源は、世界中のいかなる組織よりも古く、日本の黎明期にまで遡る。

公式な設立は、奈良時代の天平十六年(西暦744年)。朝廷内で絶大な権力を誇った藤原氏の専横に対抗するため、聖武天皇の勅命を受けた吉備真備が、賀茂氏などの古来の異能者集団を束ねて結成した秘密結社がその始まりとされる。

以来、千二百年以上にわたり、日本の歴史の裏側で政権の守護、怪異の討伐、そして能力者社会の管理という役目を、人知れず担い続けてきた。その存在は、日本の「影の歴史」そのものである。


組織構造と特徴:


伝統と血脈の尊重:

千二百年の歴史は、数多くの【継承型】の名家との間に、深く複雑な関係性を築いてきた。日本退魔師協会のような古くからの協力組織や、特定の神社仏閣との繋がりは、ヤタガラスの力の源泉の一つとなっている。完全な実力主義であるマジェスティックとは対照的に、組織運営には古来の伝統やしきたり、そして血脈といった要素が、今なお色濃く影響している。


調和を重んじる調整役コーディネーター:

ヤタガラスは、それ自体が巨大な戦闘集団というわけではない。むしろ、国内に存在する様々な能力者組織(警察のSAT-G、自衛隊の鬼神、退魔師協会など)の間に立ち、利害を調整し、日本全体の能力者戦力を統括する「司令塔」としての役割が強い。彼らの真価は、個々の戦闘能力よりも、高度な情報分析能力と、政治的な交渉力にある。


公然の秘密という情報戦略:

「黒服の男たち」のように存在を完全に消し去ろうとするマジェスティックとは異なり、ヤタガラスは自らの存在を「公然の秘密」として、巧みにコントロールする。政府は公式にはその存在を認めないが、ネット上の噂や都市伝説として、その存在を意図的にリークさせることもある。「預言者K」のようなカリスマ的な能力者を広告塔として活用し、世論を間接的に誘導するなど、極めて日本的な、高度な情報戦略を得意とする。


防御・後方支援主体の組織体制:

その理念の通り、ヤタガラスの能力者たちは、直接的な戦闘よりも、予知、分析、結界、治癒といった、防御や後方支援に長けた者が多い。そのため、大規模な武力衝突が予測される場合は、SAT-Gや鬼神といった戦闘のプロフェッショナルと合同で任務に当たることが基本となる。新人教育用の映像に公式マスコットキャラクター『ヤタッピ』を登場させるなど、およそ秘密組織とは思えない独特の文化も持つ。


MAJESTIC-12との関係:

『アーク』の主要メンバーとして、表向きは協力関係にあるが、その実、水面下での対立は最も激しい。

ヤタガラスはマジェスティックを「国益のためなら、世界の調和を乱すことも厭わない、血に飢えた猟犬」と見なし、その覇権主義的な行動を強く警戒している。

一方、マジェスティックはヤタガラスを「伝統に縛られ、決断が遅く、守ることしか能のない老獪な古狸」と見なし、その非効率性を嘲笑している。

互いの手の内を知り尽くした、最も厄介で、最も油断ならない宿敵ライバル関係。





組織プロファイル:MAJESTIC-12(マジェスティック・トゥエルブ)

正式名称:

アメリカ合衆国国土安全保障省 / 先進因果脅威部門

(Department of Homeland Security / Advanced Causal Threat Division)


コードネーム:

MAJESTIC-12(マジェスティック・トゥエルブ)

※組織内および提携組織(ヤタガラス等)では、単に「マジェスティック」と呼ばれることが多い。


基本理念:

『力の「管理」と「活用」、そして「国家的優位性の確保」』


ヤタガラスが能力者の「保護」と社会との「調和」を重んじるのに対し、マジェスティックは因果律改変能力を国家の「戦略的資源アセット」として捉える。彼らの第一目標は、能力を発掘・分析・強化し、アメリカ合衆国の国益のために最大限に「活用」することにある。


歴史:

その起源は、日本のヤタガラスより遥かに新しい。第二次世界大戦後、冷戦が激化する中で設立された。

公式記録上の設立は1947年。いわゆる「ロズウェル事件」をきっかけに、地球外生命体だけでなく、人類の中に眠る未知の能力…「因果律改変能力」の存在を政府が確信したことから、トルーマン大統領の極秘命令により、科学者と軍人を中心とした超法規的機関として発足した。

当初の目的は、ソビエト連邦が同様の「超常兵器」を開発した場合に対抗するための研究・開発であったが、冷戦終結後は対テロ、国家防衛、そして国益のための非公式な作戦行動を担う、アメリカの「影の盾」であり「影の矛」となっている。


組織構造と特徴:


科学至上主義:

魔法や超能力といった曖昧な概念を排し、全ての因果律改変能力を科学的に分析・分類・数値化しようとする姿勢が強い。所属するエージェントは、魔力出力、因果干渉レベル、精神汚染耐性など、あらゆる能力がデータ化され、そのパフォーマンスを常にモニタリングされている。訓練も精神論ではなく、最新の脳科学やVR技術を駆使した、極めて合理的なプログラムが組まれている。


実力主義と競争社会:

伝統や血脈を重んじるヤタガラスとは対照的に、組織内は完全な実力主義。スカウト部門は全米、さらには全世界に網を張り巡らせており、有望なTier 5(原石)を見つけ出すと、破格の契約金や最新鋭の研究設備といった「アメリカン・ドリーム」を提示し、積極的にヘッドハンティングを行う。エージェント同士の競争も激しく、任務の成功率や能力の成長率が、そのまま組織内での待遇や地位に直結する。


徹底した情報統制:

「黒服の男たち(メン・イン・ブラック)」の都市伝説の元になったとも言われるほど、情報統制を徹底している。能力者が関わった事件が発生した場合、専門の隠蔽工作チームが即座に派遣され、目撃者の記憶処理、情報の改竄、メディアコントロールなどを行い、その痕跡を完璧に消し去る。彼らにとって、組織の存在が公になることは、国家の存続に関わる最大のリスクであると考えている。


積極的介入主義アグレッシブ・インターベンション:

国内の能力者の保護・監視を基本とするヤタガラスとは異なり、マジェスティックは国益を脅かすと判断した国内外の脅威に対し、極めて積極的に武力介入を行う。彼らの特殊作戦部隊は、世界最高峰の戦闘能力を持つ Tier 2, Tier 3 エージェントで構成され、その戦力は小国の軍隊を遥かに凌駕する。


ヤタガラスとの関係:

国際因果律改変能力者委員会『アーク』の主要メンバーとして、ヤタガラスとは協力関係にある。しかし、その思想の違いから、水面下では常に対立と牽制を繰り返している。

マジェスティックはヤタガラスを「歴史はあるが、古臭く、動きの鈍い官僚組織」と見なし、その消極的な姿勢をしばしば批判する。

一方、ヤタガラスはマジェスティックを「強力だが、野蛮で、いつ暴走するか分からない危険な猟犬」と見なし、その過剰なまでの攻撃性と覇権主義を警戒している。

互いにリスペクトはしているが、決して心からは信用していない、緊張感のあるライバル関係。






組織プロファイル:オルド・クロノス(Ordo Chronos)

正式名称:

欧州連合 / 超常因果事象評議会

(European Union / Council for Paranormal and Causal Events)


コードネーム:

Ordo Chronosオルド・クロノス

※ラテン語で「時の秩序」あるいは「時の教団」を意味する。


通称:

『時の番人ガーディアンズ・オブ・タイム


基本理念:

『伝統の「継承」と因果の「調律」』


ヤタガラスの「調和」やマジェスティックの「活用」とも異なる、極めて保守的で高尚な理念を掲げる。

彼らは、因果律改変能力を「人類史と共に歩んできた神聖なる遺産」と捉え、それを正しく「継承」し、世界の因果律が乱れないよう繊細に「調律」することこそが、自らに課せられた至上の使命であると考えている。彼らは世界の守護者であると同時に、歴史の管理者でもある。


歴史:

その起源は、確認されている中では世界最古。ローマ帝国の時代、皇帝に仕えた魔術師や哲学者たちが結成した秘密結社「カストーデス・ヒストリアエ(歴史の守護者)」にまで遡る。

彼らは、帝国の繁栄を脅かす呪詛や怪異から国を守るだけでなく、歴史の重要な転換点において、因果律が致命的なパラドックスに陥らないよう、水面下で介入を繰り返してきた。

ローマ帝国崩壊後も、その知識と血脈は欧州各地の王侯貴族や騎士団、錬金術師ギルドといった様々な組織に姿を変えながら、秘密裏に受け継がれてきた。

現代の「オルド・クロノス」は、EUの発足に伴い、それら欧州各国に根付いていた古の魔術結社が、一つの巨大な連合体として再編されたものである。


組織構造と特徴:


貴族主義と血統の重視:

組織の根幹を成すのは、徹底した貴族主義。マジェスティックのような完全実力主義とは真逆で、オルド・クロノスでは能力の強さ以上に、その家系や血統が重んじられる。幹部会である「円卓評議会」のメンバーは、そのほとんどが数百年、あるいは千年以上の歴史を持つ魔術師の名家や旧貴族の末裔で占められている。ジュリアン・デュボワも、フランスにおける屈指の名家の当主である。


連合体としての組織構造:

単一の指揮系統を持つヤタガラスやマジェスティックとは異なり、オルド・クロノスは各国の有力な魔術結社や騎士団の代表者で構成される「連合体」としての側面が強い。そのため、全体の意思決定は常に評議会での合議によって行われる。これは多様な意見を取り入れる長所がある一方、各国の利害が対立した際には、意思決定が著しく遅れるという弱点も抱えている。


魔術と芸術の融合:

彼らにとって、魔法とは科学マジェスティックでもなく、責務ヤタガラスでもない。それは、魂を表現するための「芸術アルス」である。所属するエージェントには、音楽家、画家、建築家といった芸術家としての顔を持つ者も多い。彼らは、音楽の旋律で精神を操り、絵画に現実を写し取り、建築物の構造そのものを結界として利用するなど、極めて芸術的で洗練された魔術体系を発展させている。


聖遺物アーティファクトの管理:

長い歴史の中で、彼らは数え切れないほどの強力な魔術的遺物…「聖遺物アーティファクト」を収集・管理している。聖杯、聖槍、賢者の石といった伝説級のアイテムから、名もなき職人が魂を込めて作り上げた呪物の武具まで、そのコレクションは計り知れない。エージェントたちは、自らの能力だけでなく、これらのアーティファクトを使いこなすことで、その戦闘能力を飛躍的に向上させる。


他組織との関係:


ヤタガラスとの関係:

同じく長い歴史を持つ「古き組織」として、互いに一定の敬意を払っている。東洋の神秘主義と西洋の秘教主義。そのアプローチの違いを認め合いながらも、世界の「調和」や「秩序」を重んじるという根源的な部分で思想を共有しており、比較的友好的な関係を築いている。ただし、水面下では互いを「伝統に固執する東洋の老人」「血統ばかりを気にする西洋の貴族」と見なし、牽制し合っている。


MAJESTIC-12との関係:

極めて険悪。 オルド・クロノスは、歴史も伝統も敬うことなく、科学の名の下に神聖なる魔術を「兵器」として利用しようとするマジェスティックを、「魂を持たない野蛮な成金」として、心の底から軽蔑している。マジェスティックの合理主義と積極的介入主義は、彼らが守ろうとしてきた世界の繊細な「調律」を乱す、最も危険なノイズであると認識している。





組織プロファイル:ARCアーク

正式名称:

国際因果律改変能力者委員会

(International Causality-Altering Ability User Committee)


コードネーム:

ARCアーク

※ "Arbitrators of Reality & Causality"(現実と因果の調停者)の略称とされる。


通称:

『神々の円卓ザ・ラウンドテーブル・オブ・ゴッズ


基本理念:

彼らの理念は、国家の利益や個人の思想といった矮小なものを超越している。その行動原理は、極めてシンプルかつ絶対的である。


惑星の存続(Survival of the Planet):

何よりも優先されるべき絶対の命題。人類、文明、生態系、その全てを含む、この惑星というシステムそのものを、存続させること。


大規模因果災害の防止(Prevention of Large-Scale Causal Disasters):

主に、Tier0能力者同士の全面衝突を禁ずる、という相互不可侵条約に近い。「神々の喧嘩で、うっかり星を壊してしまわないように」という、彼ら自身の自制のためのルール。


破損した世界の修復(Repair of a Damaged World):

万が一、上記のルールが破られ、惑星規模の深刻なダメージが発生した場合、全メンバーの総力をもって、その破損した因果律を「修復」する義務を負う。「もし壊したら、みんなで責任を持って直しましょう」という、後始末のルール。


歴史:

その設立は、20世紀半ば。第二次世界大戦と、それに続く冷戦時代に、複数の国家で同時にTier0級の能力者が確認され始めたことに端を発する。

核兵器という「物理的な世界の終わり」と、神々の衝突という「因果的な世界の終わり」。二つの終末の危機を前に、最初期のTier0能力者たちが、人類と惑星の存続のため、水面下で歴史上初の会合を持った。

そこで結ばれた「相互不可侵」と「世界の維持」に関する盟約。それが、『アーク』の原型となった。

以来、彼らは特定の国家に属することなく、ただ世界の調停者として、歴史の巨大な転換点においてのみ、その最小限にして絶対的な影響力を行使してきた。


組織構造と特徴:


絶対的権威と最小限の介入:

アークは、世界の頂点に立つ絶対的な権威である。だが、彼らがその力を行使することは、ほとんどない。彼らの基本スタンスは、「不干渉」。国家間の紛争、地域的な怪異災害、能力者同士の小競り合いといった「些事」には、一切関知しない。それらは、彼らが「下部組織」と見なす、ヤタガラスやマジェスティックといった各国組織の仕事である。アークが動くのは、その行動がなければ「惑星の存続」そのものが脅かされると判断した、真の緊急事態のみである。


所属メンバーは『神』のみ:

アークの正式な評議会員は、世界で確認されている20名のTier0能力者のみで構成される。いかに強力なTier1能力者であっても、この円卓に席を持つことは許されない。

日本の『女王陛下』皆木冬優子、そして現在は沈黙しているが、かつての『託宣の巫女』も、このアークの正式なメンバーである。


下部組織の存在:

ヤタガラス、MAJESTIC-12、オルド・クロノスといった各国の能力者管理組織は、アークのパートナーではない。彼らは、アークが定めた絶対的なルールの下で、各地域の「管理」を委任された「下部組織」である。各組織は、自国の国益のために動くことを許されているが、アークが定めた「惑星の存続」という大原則を覆す行動は、決して許されない。


神託オラクル』による意思決定:

20名の神々が、人間のように議論や投票で物事を決めることはない。彼らの意思決定は、メンバー全員の超次元的な認識能力が、一つの「最適解」へと収束する形で、ほとんど瞬時に行われる。このプロセスは、下部組織からは「神託オラクル」と呼ばれ、その決定は絶対的なものとして伝達される。

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