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家出した引きこもり伯爵令嬢は呪われた侯爵家で真相を究明する  作者: 弍口 いく


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その34 真相を究明したいんです

 アシュリーはランプ片手に、夕暮れ前にヒューイと散策した外庭へ一人で向かっていた。

 月明かりはあるものの不気味な雰囲気は否めない。しかし、あの時見つけた作業小屋がどうしても気になって、ヒューイには危険だからと止められたが確かめずにはいられなかった。


 壊れた扉を開けるとギギィと不気味な音、明るいうちに聞いたものとは比べ物にならない恐怖を掻き立てる音だった。

 アシュリーが中に入ろうとした時、後ろから肩を掴まれた。


「キャッ!」

 悲鳴をあげながら振り返ると、ランプの灯りに照らされた忿怒の形相が浮かんだ。

「なにしてるんだ?」

 ヒューイの声には怒りが滲んでいた。


「脅かさないで下さいよ」

 怒っているのはわかるが、アシュリーは彼の顔を見てホッとした。

「もしかしてとは思ったけど、こんな夜更けに来るなんて」

「気になって眠れなくて」


「なにがそんなに気になるんだ?」

「わかりません、だから確かめに来たんです」

 アシュリーはさっさと小屋の中に入った。

「おい、待てよ」


 ランプで室内を照らすと、放置された道具が転がっていた。

 しかし、埃だらけの床には新しい足跡がクッキリ残っていた。

「先客がいたようですね」

「こんなところへ誰が……」


 足跡をたどると、地下倉庫らしき取っ手を床に見つけた。

 開けようとするアシュリーを制して、ヒューイが引き開けた。

「倉庫かな」

 中は暗くてよく見えなかったが、地下へ下りる階段があった。


「いいえ、違う気がします、微かに風が上がってきてるでしょ」

「まさか! 地下通路の入口か」

「おそらく」


「そうだとすると邸からかなりの距離だぞ、そんなに長い通路だったなんて、デュランが苦労するはずだ、よくわかったな」

「なんとなく」

 もしかしたら彼女が持っている魔力のなせる業なのかとヒューイはゾクッとした。


「以前使っていた庭師たちは、気付いていなかったのかな」

 こんなところから邸内部に入れるとした、シモンズ邸の防犯は穴だらけだ。この際、地下通路ごと埋めてしまうのがいいか知れない、などとヒューイが考えている間に、アシュリーは地下へと続く階段を降りはじめた。


「おいっ!」

 止めても無駄だろうと、ヒューイも後に続いた。





 真っ暗な通路の左右をランプで照らしながら、二人は慎重に進んだ。

「まだお前を襲った奴らが潜んでいる可能性がある、俺から離れるなよ」

「はい」

「でも、なんで自分から危険に飛び込むのかなぁ」


「なぜでしょうね、自分でもわかりませんけど、黒マントの女性にもう一度会いたくて」

「得体の知れない女に会いたいなんて、どうかしてるよ」


「もし、彼女が本当に魔女なら?」

「本気で魔女がいると信じているのか?」

 やはり彼女に流れる魔女の血が、同類を引き付けてしまうのだろうかとヒューイは思った。


「ヒューイ様だって言ってたじゃないですか、〝魔術師が呪いをかけているのなら俺の手には負えないし〟って。それって魔術師の存在を信じているってことでしょ、私はここでお世話になったせめてもの恩返しに、呪いの噂とか、今まで起きた事件事故の真相を究明したいんです」

「お前がそんなことをする必要はない」


「私ね、今までは母のようにヘイワード家の務めだけを淡々をこなしていました、でも、今は自分で自分がやりたいように動けるんです、それが嬉しくて、ちょっと張り切っているのかも知れません」


「張り切る方向、間違えてるような気がする、ほんと、とんだじゃじゃ馬だな」

「頼りになる騎士様がいらっしゃるから心強いです」

 アシュリーはヒューイに無邪気な笑顔を向けた。


 その時、突然ヒューイの表情が強張った。次の瞬間、ランプの灯を吹き消すと同時にアシュリーの口を手でふさいだ。

 目をパチクリさせたアシュリーだったが、すぐにその行動の理由を理解した。


「今、誰かの声がしなかったか?」

 遠くから男の声が届いた。ランプの灯も揺れているのが見えた。

「時々、風向きで邸内の話し声が運ばれてくるのよ」

 女が答えた。

「そうなのか」


 ランプの灯が徐々に近づいてくる。

 ヒューイはアシュリーを抱き寄せて、脇道に身を隠した。


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