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家出した引きこもり伯爵令嬢は呪われた侯爵家で真相を究明する  作者: 弍口 いく


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その25 初恋の人らしいです

「なんで言っちゃうかなぁ」

 ヒューイはまたリフェールに呼び出されて母の実家の食堂に来ていた。


 ヒューイから中庭での出来事を報告されたリフェールは呆れ果てた。

「彼女はよほどの決意で家出したんだよ、一人でウィルトンまで行こうなんて、世間知らずの令嬢にとっては決死の覚悟だったはずだ、なのに行かせないなんて言ったら反発するに決まってるじゃないか」


 言われなくてもわかってる、とっくに反省している! とヒューイは言いたかったが、しくじったことに変わりはなく責められてもしょうがない。


「僕が調べたなんてバラしたら、僕が嫌われちゃうじゃないか」

「誰にどう思われようと、あなたは気にしないでしょ」

「気にするよ、僕はヒューイにも嫌われたくないし、いつも気を遣ってるじゃないか」

「そうなら、頻繁に呼び出すのはやめてもらえますか」

「つれないなぁ、君に会いたい気持ちわかってくれないのか?」


「まったく、王宮魔術師団の仕事ってそんなに暇なんですか」

 ふざけたようなリフェールの態度にヒューイは呆れ返った。が、リフェールは急に、

「今はアシュリーのことが最優先だよ」

 神妙な顔をした。


「王宮の薬師たちも困っているようだ。在庫はまだあると言っても先行き不安だし、山に入れば薬草は見つけられるだろうけど、畑で採れるような量は期待できない。冬に向かうこれから、いつ病が流行するかわからないし、値が吊り上がるのは必定だ。バルト商会なんか、すでに在庫を高値で取引しはじめているよ」


「殿下はアシュリー嬢をどうするおつもりですか」

「そう心配するな、彼女の希望は叶えるつもりだよ」

「彼女の希望はウィルトンに行くことですよ」

「それは出来ないな、でも、この国にいてもいいと思えるように、彼女の居場所を整えることは出来る」


 そしてまた、砕けた表情に戻る。

「そこは王族の権力の見せどころだよ、これでも王子だからね」

 真剣に話をしているのか、適当に言っているのかわからない人だとヒューイはいつも思っていた。


「アシュリーには幸せになってもらいたいからね、僕の初恋の人だから」

「えっ?」

「聞いたんだろ? 子供の頃に会ってること」

「ええ、でも一度きりだと」

「一度で、恋に落ちるのは十分だよ、僕たちは運命的な出会いをしたんだよ」


 リフェールはは夢見る瞳で宙を見た。

「僕が六歳だったから、彼女は五歳かな、可愛かったよ、数時間だけど楽しいひと時を過ごした。あの時、いつかこの子を迎えに行こうって決めたんだよ」

「えっ? それって、まさか」


「なに?」

「いえ」

 軽々しく口にしてはいけないことだとヒューイはとどまった。でも伯爵令嬢なら身分的には王子妃になっても問題ない、聡明なアシュリーなら王子妃教育も難なくこなせるだろう。なにより、第三王子ならヘイワード家から護れる。


 もしリフェールがその気なら、いちばん良いのかも知れない。しかし、なんだろう、このモヤッとした気持ちは……。ヒューイは今まで感じたことがない感情に戸惑った。


 リフェールは一人で顔芸を繰り広げるヒューイを見て、ニヤニヤと楽しんでいた。


「先ほど報告を受けたんだけど、薬草の不良はアシュリーが毒を撒いたからだと言ってきたらしい、ちょっと叱責したら癇癪を起して嫌がらせをしたのだと」

「バカな」


「ほんとバカだよ、なにより当主のくせにヘイワード家の秘密を知らないとは驚きだよ、先代は婿選びに失敗したね」

 アシュリーが言っていた通り、酷い父親なんだとヒューイは憤った。


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