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家出した引きこもり伯爵令嬢は呪われた侯爵家で真相を究明する  作者: 弍口 いく


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その10 愚痴を聞かされました

「まだこんなところにいた、とっくに客室へ移動してると思って呼びに行ったんだけどいないから捜したのよ」

 メイドのダリアは腰に手を当て、唇を尖らせた。


「なにか用か?」

「アルドさんじゃなくて、アンタ、アンさんよね」

 ダリアは偉そうにアシュリーを指さした。

「旦那様がお呼びよ」


「ダリア、お客様に対してその態度は失礼だぞ」

 アルドは叱りつけるように言ったが、

「あら、トンプソンさんがただの平民だって言ってましたよ」

「いいのよアルドさん、先にヒューイ様のところへ行ってきます、案内してもらえるかしら」


「あたしが執務室まで連れてくわ、アルドさんはオリヴィアお嬢様がお呼びだからそっちをお願い」

「お嬢様が?」

「早く行かないとまた癇癪落とされるわよ」

「そうですね」


 心なしか肩を落としながら向かうアルドの後姿を見て、ダリアは鼻息荒くした。

「お嬢様にも困ったものだわ、たいした用もないのに呼びつけるんだもの、そもそもアルドさんはヒューイ様付きの執事で、オリヴィア様担当じゃないんだけど、彼、けっこうな男前でしょ、気に入られちゃてさ、彼にも仕事があるし、人手不足で大忙しなのに迷惑でしょうね」


 歩きながらダリアは一人で話をし出した。根っからのお喋りなのだろう。

「お嬢様ったら、まだ十四なのにすっかり色気づいちゃってさ、奥に騎士棟があるんだけど、暇を見つけては若い騎士を見に行ったりするのよ、こっちは姿が見えずに捜しまわるのに手を取られるし、ほんと迷惑なのよ」

 主人の悪口を部外者に愚痴っていいものなのかとアシュリーは苦笑した。


 再びアシュリーを責めるように見て、

「その上、アンタみたいな怪我人まで招き入れてさ」

「すみません、お手間取らせないようにします」

「そうしてほしいわ」


 ダリアは足早にアシュリーの前を歩きながら、

「あなたいくつ?」

「十六です」

「ふーん、その怪我って本当なの?」

「ええ、全治約一ヵ月と診断されました」


「ヒューイ様狙いでわざと怪我したとかじゃないでしょうね」

「まさか」

「邸に来られてから三ヶ月ほどだけど浮いた話は一つもない旦那様が女性を連れて帰られたってちょっとした騒ぎなのよ、それでオリヴィアお嬢様のご機嫌も最悪だし」


「私はそんなんじゃありません、昨日はじめてお会いしたばかりですし」

「そう?」

 ダリアはアシュリーの体を舐め回すように見てから、自分の豊満な胸の谷間を見下ろした。

「そうよね、その体で誘惑は無理よね」

 アシュリーは言い返せない自分が情けなかった。


「あたしももう少し若かったらなぁ、顔良し、身分良し、お金持ちの優良物件だもの。あ、でも性格には難ありなのよね、不愛想で冷たいし、あんま喋んないからなに考えてるかわからないし、女嫌いだって噂なのよね」


(確かに、初めて会った時は蔑むような目で見られたな、でも、その後はそうでもなかったし……)


「アルドさんもダメね、温厚そうに見えて仕事には厳しいし、笑っていても目は怖いのよね、腹の中が読めないって感じの人、その点うちの旦那は、あたしは結婚しているのよ、旦那はここの厨房で働いでるんだけどね、単純でわかりやすい人なのよ、それに優しいし」

 聞いてもいないのによく喋る女だとアシュリーは呆れながらも黙って聞いていた。


「なにより愛されてるし、五年前から猛アタックされて三年前に結婚したのよ、女はやっぱり愛されて結婚するのが幸せなのよ、早く子供も欲しいんだけど、こればかりは授かりものだから、旦那は真面目に働いてるし、腕もいいから料理長になれるかも、そしたら給金も上がるし楽できるわ」


 邸は思っていたより広く、なかなか執務室に到着しない。ダリアのお喋りにほとほとうんざりした頃、やっと、

「ここよ」

 ヒューイの執務室に辿り着いた。


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