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オーデション 3

4話目


 ーーー サイド 歌姫 ーーー


 廊下でオーデション中の歌を盗み聞きをしていた歌姫は、何だか懐かしい思いに駆られていた。昔歌を一緒に歌っていた幼馴染の事を思い出して。


 小学校1年生から3年生までの3年間一緒だったクラスメイト。引っ込み思案で増していじめられていた自分の唯一のお友達。クラス全員から無視されていじめられていた私をかばってクラス全員を敵に回しても動じない強い男の子りき君。


 何と無く歌い方が似ている気がしたのだ、物まねのプロが歌真似をしている、増してご本人が歌っているかのように聞こえるのに何故かその男の子を思い出すのだった。


 つい扉を開けて中を覗いて見たいとドアノブに手を掛けた途端、流石にオーディションの邪魔になると思ったマネージャーに手を引かれてその場を後にするのだった。


 「流石にそれは拙いです。オーデションを受けている人の邪魔をして落とされてしまうかも知れません。それに約束の時間が過ぎています。打ち合わせの相手の人が待って居ると思います。さあ、行きますよ。」


 そこまで言われては返す言葉も無い歌姫、後ろ髪を引かれながらも立ち去るのでした。


 ーーー サイド ちから ーーー


 部屋の外の廊下に好きな歌手の歌姫ちゃんが居たとはつゆ知らず、まだまだおっさん達のド肝を抜いてやりたいと考えて居るちからは。

 

 「ちから、ダンス行きます。」


 と言って、宣誓のようにビシッと手を挙げて、そこから唐突に、空手の一番の型を始めた。

 

 先ずは、手刀受け。耳の後ろから回転するように手刀を繰り出す、胸をはり、右、左と素早く。足はすり足。次は腕受けこれも右、左。上中下段と流れるように決める。

 次は足技、前蹴り右、左、膝から出すように、上中下段蹴り。回し蹴りを右、左決めて。そのまま後ろ回し蹴りからのジャンプしての上段回し蹴りと来て座り込むようしてからの下段回し蹴り。足を狩る様にしてから、回転しながら立ち上がりつつ裏拳を決め。最後の右、左の正拳突きで決め腕をクロスさせて息を吐きながら左右に開き力強く止。気合い一閃して、そこから本格的にダンスに移行。


 最初空手の型を見せられた審査員のおっさん達は何やってんだ、こいつと思っていたが、流れるように繰り出される技の流麗さと決める時の力強さ決めポーズの綺麗さ、技から技へと繋ぐ切れの良いスピード感、これは確かにダンスに通じる通モノが有ると、いつしか真剣に見入っていた。


 ブレイクダンス有り、ロボットダンス有り、マイ〇ルジャク〇ンのスリラ〇有り、クラッシックダンスも、モダンダンス、タップダンス、コメディアスな動きも有りの、床演技の体操で三連続バク転の後、大ジャンプして三回転半ひねりを決め、ポーズ。そこから静かな踊り、有酸素運動で呼吸を整えてフィニッシュのポーズ。そこからカーテンシーで挨拶して終了。


 うん終わった後、荒い息でゼーハーゼーハ言ってるのって美しくないよね。まあ、中にはその姿にそそられるって言うおねーさん方も居るので全否定はしませんが。


 あれ?何の反応もないんですけど、やり過ぎた?


 呆れられたかな。


 まあ、やり切ったし良いか。


 しょうが無いので切り出します。

 「えーと、それで、ダンスの感想とか無ければ、面接に移りたいんですが、何か質問は有りませんか?」


 それでも静まり返ったおっさん達に困惑して居ると。

 真ん中に座って居る3人が顔を見合わせた後。うなずき合い。

 「あー、質問は無い様だ。合否の通知は後日連絡するので本日はご苦労様でした。」


 「そう、ですか分かりました。では、ありがとうございました。失礼します。」


 審査員にお辞儀をして、扉を開けて部屋を出て行く。


 心の中でやり過ぎたーーーっ‼

 

 あの反応はあかんやつだろなぁ。


 焦りまくりながら帰路に就くのだった。

 肩を落としながらとぼとぼと。

 結果を聞いたらダチのあいつら笑い転げるだろうな、調子こいてやり過ぎて不合格って一番あかんやつじゃん。超恥ずかしーぜ。


 明日学校バックレちゃおうかなぁ・・・。


 そうは考えるが、根が真面目なちからは明日も元気に学校に行くのだった。


 そして、案の定、ダチ4人に笑われたのだった。


 「流石ちから、外さないね。俺達はの為に美味しい処を持って行くのは凄いぜ。感心した。」

 「うん、俺達の笑いを取る為に身体張ってくれてサンキューな。」

 「うんうん、久しぶりに心から笑えた。【いいね!】をあげよう。」

 「大丈夫だよ、ちから、僕だけは君のカッコよさを知っているからね。」

 「しのぶだけは優しいな。」

 「うん、僕だけは君の味方だからね。冷たい現実なんかに負けないでね。」

 「おい、それって、しのぶ、全然慰めに成って無いだろ。マジで追い打ち掛けてないか?」

 「一番しのぶが酷いこと言ってるじゃん。」

 「そ、そんな事無いよね、ちから。」

 「冷たい現実って・・・。チョット、グサッと来たかも。うううっ。」

 「ほら見ろ、しのぶマジひでえ。」

 「流石しのぶ、美味しい所持って行くな。」

 「いや、違くて本当にそんな悪気は無いからね。」

 「悪気無く後ろからザクっと刺すとは高度な技を使う。」

 「高度!」

 「違うんだーーっ!」

 「「「あはははっ。」」」

 「まあ、冗談は置いといて、ちからが本気出して落とされるなんて有るかな?」

 「無いな。多分ちからの勘違い、早とちりだろう。」

 「うん、先ず間違いないね。」

 「だな。」

 「多分、数日後には合格の通知が来るよ。」

 「だな。そん時はまた、盛大に笑ってやろうぜ、この早とちり野郎ってな。」

 「決まり。」

 「でも、本当に落ちて居たら・・・。」

 「そん時は、そん時で大笑いだな。ハハハ。」

 「どっちにしろ笑うんかい。ヒデエこった。」

 「それが友情ってもんさ。」

 「そうそう。友情。友情。」

 「どっちにしろ、話題を提供してくれるちからはいい奴だな。」

 「うんうん。」

 と、全員がうなずくのだった。


 俺のアイドルデビューはこいつらのただの話題のネタでしか無かった。

 「だと思ったよ。ふん。」

 「でも、受かっていた方が面白いよな。絶対。」

 「ネタが広がるもんな。」

 「面白ネタ大歓迎!」

 「ちくしょー。喜んでもらえて超嬉しいーーっぜ。ありがとよ。」

 「うん、喜んでもらえて僕らも嬉しいよ。」

 「皮肉じゃーーっ。誰が本気で喜ぶかー。」

 「え、そうなの?僕本気で喜んでくれてると思った。」

 「「「流石しのぶ。天然恐るべし!!!」」」

 うん、しのぶ君その天然ぐわいはどうかと思うよ。うん。


 そんな楽しい学校生活を送って数日後。


 本当に合格通知が来た。


 お陰で、早とちり野郎として、ダチに大笑いされた。


 律儀な奴らで有る。


 ちくしょう。


 こうして俺はアイドル候補生に成った。


 あれ?


 なる気なんか無かったのに。


 どーしてこうなった?


 可笑しい。


 素直に喜べない俺が居た。


  

ありがとうございました。

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