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対岸にいるわたし

対岸にわたしがいる

足の届かなさそうな

多分雨上がりの急流の向こう側

わたしがなにかを叫んでいる

声はかすれている

それは思い出の中で

昔を懐かしんでいるような光景だった

気がつけば空は晴れ

わたしが手を振っていた

だからわたしも振り返した

もはやなにも叫んでいなかった

表情は不思議と見えなかった

わたしはわたしに手を振りながら

どうして手を振っているのか

少しずつ考えるようになった

でもなにも分からなかった

川の流れは相変わらず激しかった

その対岸にいるわたし

ボサボサの髪の毛を揺らしながら

風が吹いて気持ちよさそうだった

わたしは暑かった

さっき手を振り過ぎたのかもしれない

風が欲しい

でも風は吹きそうもない

対岸にいるわたしが痺れを切らしたのか

突然その場で裸になって

激流の川に足を突っ込んだ

その裸体に夕日でも浴びているのか

わたしの影が恐ろしいほど伸びてきて

わたしの足元に到達する頃

対岸にわたしはいなかった

ただわたしの影だけが残っていた

わたしはその影をしばらく見つめてから

川を背にして帰ろうと思った

すると対岸からわたしにとって

愛についての嘘偽りのない言葉が飛んできた

そのときわたしは自分の中の時差を知った

わたしは川が干上がったら困るなと

そんなことを考えながら家に帰った

家に帰ったらもう夜だった


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