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『後三条天皇、隆国の子息三人を速記の力も認めて召し使ふこと』速記談1064

作者: 成城速記部

 後冷泉天皇のとき、大納言源隆国は、天皇の信頼が篤いことを笠に着て、東宮であった後三条天皇に、何かと失礼なことが多かった。そこで、後三条天皇は、即位に当たり、長年の遺恨を晴らすため、隆国の子息たちを、何か罪状を探して罰してやろうとお考えになっっていた。

 長男の権中納言源隆俊が出仕する日、小窓からこっそりのぞいていると、ほかの公卿たちと比べても立派な体格、りりしい顔立ちで、微動だにせず座っていた。仕事ぶりも目覚ましく、朝廷の仕事を一人で切り盛りしている。後三条天皇は、隆俊は速記の腕前も一流で、過去にも未来にも、比類なき公卿であり、隆俊を用いないのは朝廷の損失であると思し召し、隆俊を罰するのはおやめになった。

 次男の参議中将源隆綱にねらいを定めたところ、斎宮寮から、キツネを射殺したという報告があった。陣定の折、隆綱が定文を書くこととなり、後三条天皇はそれをお読みになったが、速記の腕前も見事だと聞くが、文章も余りに見事であると感心なさり、近習にすることさえお許しになった。

 三男の四位少将源俊明に、目標を変えたのだが、ちょうど内裏に火災があって、後三条天皇は、輿に乗って避難しようとなさったのだが、身分の低い者どもがやじ馬のように押し寄せて、お逃げになれなくなってしまった。そこに遅ればせながら俊明があらわれ、みずから弓をとって、身分の低い者どもを蹴散らし、強情な者はプレスマンでちくちく刺して追い払い、ようやく輿が内裏から出られるようになった。後三条天皇は、俊明のおかげで恥をかかずに済んだ。帝運が尽きていないからこそ、俊明が何とか間に合ってくれたのだ、と感謝した。

 このようなことがあって、隆国の三人の子息は、皆後三条天皇の近臣となり、並ぶ者がないほどであった。



教訓:このように、私情で動かないのが、帝王の器である。現実世界ではお目にかからない。

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