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ここは、何でも相談所!  作者: 雨音奈緒
2/7

1話

とても静かな夜だ。つんと冷たい空気が頬をさす。僕は1人、夜道を歩いている。行く宛ては特にない。自分がなぜ、このような行動をしているのかすら分からなかった。

一体ここはどこなんだ?

気がつくと、1軒の家が目の前にあった。そして、家の前の看板には不思議な文章が並んでいた。

『誰でもいいから来てくれよな!

どんな相談も解決します。

代表・叶夜』

叶夜かなや……」

誰なのだろう。しかも代表って……

「今、俺の事呼んだ?」

「え?」

振り向くと、1人の青年が立っていた。

「初めまして。もう知ってると思うけど、叶夜っていいます。よろしくね」

自分に笑顔を向けている青年は、叶夜だと名乗る。

「変わった名前ですね」

僕は無愛想に言った。

「褒めてくれてありがとう。俺、この名前気に入ってるんだ」

褒めたつもりはないが、彼の満足そうな顔を見ると反論する気もなくなってしまう。

「名前……」

そういえば、僕の名前はなんだっただろうか。

「で、君はなんて言うんだ?」

叶夜と目が合う。

「知らない。分からない」

僕は、自分の記憶が少しもないことに気がついた。

「ここどこ? 僕、なんでここにいるんだ?」

分からない。恐怖のせいか、背負ってしたリュックの紐を握る手に力が入る。

「落ち着いて。大丈夫だから」

叶夜は、そっと僕の方へ歩み寄る。どうしたら良いのか分からず、僕は下を向く。

「体調悪いの?」

叶夜が僕の顔を覗き込む。初めて会った人との距離の近さに戸惑い、僕は後ろへ一歩下がる。

「平気です。僕帰ります」

今すぐこの場から離れたかった。

「帰るって、どこに?」

叶夜の声が響く。

「記憶がないのに、どうやって帰るの?」

「え?」

なぜ、僕の状況が分かるのだろう。

「俺は君を知っている。少なくとも、今の君よりはね」

彼は、一体何者だ?

じっくり叶夜を見る。つり目だがあまりキツく見えない顔立ちに、茶色くてサラサラした短髪。高身長で、バランスの良い体型。

僕は、この人を知らない。なのになぜ、この人は僕のことを知っているのだろう。

「ま、中に入りなよ。寒いでしょ?」

再び、叶夜から笑顔を向けられる。

「はい」

確かに外は寒かった。手や頬が赤くなっている。

「どうぞ」

叶夜が木製の扉を開ける。僕は叶夜に頭を下げ、家の中に足を踏み入れた。

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