新しい命ですの。守られてますの。
ティファニーはダーリックのシャツを着るためにドレスを脱ぐ、ゆったりとしたドレスを着せたと言う事はメイド達は吐いた時から妊娠したのだと分かっていたのだろうか。
確かに普段来ているドレスはコルセットこそしない物のウエストが絞られている、今はまだ大丈夫だけれどお腹が膨らんでくると着るのは良くなさそうだ。
ドレスをさっさと脱ぐとまだ温もりの残るシャツを羽織る、苦手なボタンを留めようと1番上から格闘するものの初めて自分の着ているボタンは上手く留められない。
「ダーリック様、ボタンを留めていただけます?」
お願いするともう何度も身体を見合っているのに気恥ずかしそうに視線を背けていたダーリックが「あぁ」と了承し一つずつボタンを留めていく。
1番上から順々に留め自分から着るのをお願いしたのに胸の辺りを留める時は少し顔を赤くしているのがとても可愛らしくティファニーは笑ってしまう。
ボタンを下まで留め終わるとなんだか胸が苦しい、キュンとしているのではなくて物理的に苦しい気がする。
「なんだか胸のところが苦しいですの。」
そう言い胸のボタンをひとつだけ外すと、首元と胸から下だけが閉まった不思議な着こなしになった。
こうなると上のボタンも全て邪魔な気がする。
せっかく留めてもらったけれど胸から上だけ外そうと手を動かすが、1番上だけは固くて外れない。
長い袖が指先を更に邪魔をし手をこまねいていると見かねたダーリックが外してくれた。
これでスッキリしたとお礼の代わりにダーリックに抱き着き胸元にスリスリと頬を寄せ、空いた手で触り心地の良いお腹を触る。
ダーリックのお腹はティファニーのまっさらなお腹と違い不思議と溝が出来ているのだ、筋肉というらしく溝に沿って指を滑らすとくすぐったそうに喉を鳴らしお腹は硬くなる。
ちなみにダーリックがティファニーのお腹を触るのはちょっとしか許していない、触るとくすぐったくなるので直ぐに触るのをやめてもらい、でもやっぱり触って欲しくて違う場所を触ってもらうのだ。
「どうでしょうか?お気に召していただけますか?」
上目遣いで聞くと「かわいい」と呟いた後に困った顔をされる。
「抱き付かれたら可愛いティフが見えないな。」
確かにそうである。
一度離れるとよく見えるように両手を広げたり、実際にお腹が大きくなったように見せる為にお腹の部分のシャツを引っ張って膨らませたりしてみる。
これでどうだとキラキラした瞳で見つめれば今度こそ「可愛い」と微笑まれるので嬉しくなり勢い良く抱き着く。
するとびくりと抱きつかれたダーリックが固まった。
「赤ちゃんがいるうちはお腹に負担をかけないように、ゆっくり動くようにしないか?」
「わかりました。わたくしこれからはゆっくり動きます、走ったりもしませんの。」
そういえばさっき走った時も皆慌てていた、早く赤ちゃんができた事をダーリックに伝えたくて理由なんて全く考えていなかったけれど、お腹の中の小さなダーリックに何かがあっては大変である。
大人しくする宣言にダーリックもホッとしたようで身体から力が抜けゆっくりとティファニーのお腹に手を当てる。
「ダーリック様にお願いがありますの、さっきわたくしが汚してしまった上着をくださいな。汚れてしまったのでもう着れないと思いますの。」
その言葉にちょっと困った顔をして思案する。
「あの上着じゃなきゃ駄目なのか?」
「あれじゃなきゃ駄目ではありませんけれど、ダーリック様が着ていたのが欲しいですの。」
「ではあの上着は私にくれないか、せっかくティフが初めてのつわりで吐いた上着だから大切にしたい。代わりに違う上着を渡そう。」
ダーリックの着ていた上着が貰えるのは嬉しい、喜んで了承したいけれど……流石に綺麗にしたからと言って自分の吐瀉物がかかった上着を大切に持たれるのは恥ずかしい。
「何だか吐いた上着を大切にされるのは恥ずかしいので、やっぱりわたくしもあの上着が良いですの。」
「どうしてもあの上着じゃなければ駄目か?」
どうしても欲しいと言えばきっとくれるのだろう、でもしょんぼりと見つめてくるダーリックはこのまま駄目だと切り捨てるには胸が苦しい。
このしょんぼりとした切ない顔はティファニーが特に大好きな抱き締めたくなる顔なのだ。
「そんな瞳で見詰められると断れませんの。では冬に着ていたカーディガンをいただけますか?あれなら着てもいいしお腹にかけてもちょうどいいと思いますの。」
去年の冬に着ていたカーディガンはダーリックのダークブラウンの髪に似合う同系色のブラウンでいつも良いなと思うけれど、やはりダーリックが着ているのが似合うので強請らずにいたのだ。
それに寒いからと抱き締められながら前を締めて2人分の体積を受け止めていたこともあるカーディガンだからちょっと胴回りが伸びているので、妊婦の大きくなったお腹にぴったりではないか。
「わかった、状態を確認してすぐに渡そう。」
「ダーリック様の物を着ていると守られている気がしてとても心強いですの。」
ダーリックは自らのシャツを嬉しそうに着るティファニーは可愛らしく、愛おしく感じる。
もう1人増える愛おしい存在を育てている最中のティファニーをそっと抱き寄せ額に唇を落とすと、額では足りないと唇にキスをされた。
やる事が沢山出来た、早速妊婦に関する本を取り寄せなければいけないし、それと産んだ後もどうすれば良いのか知識が必要になるし、乳母の事も考えなければいけない。
思考に浸っていると構ってもらえないティファニーがスリスリと頭を首筋に擦り付けアピールしてくるので今はこの可愛らしい存在とゆったりとした時間を共有する事にした。
お読みいただきありがとうございます!
とりあえず書いているのはここまでなので一旦更新をストップさせていただきます。
本当はあと1話子供達が3人産まれた後のもあるんですけど、何だかしっくり来なく完結しないので投稿は見送ります!
それと最近誤字報告ラッシュがきてまして、1人の方なのか複数の方なのかわかりませんがありがとうございます!
嫉妬深く甘えるのが大好きなティファニーと、人との関わりを遠ざけ嫉妬される環境を作らず存外甘えられたり人の世話をするのが好きな事に最近気付いたダーリックは今後もラブラブしながら末永く幸せに日々を過ごします。
めでたしめでたし。




