もしも短編だったら『〈美醜逆転〉突然告げられた婚約者は恐ろしい顔だと言われたのですがそんな事はありませんの、見せてくださいませ。でもわたくしの顔を見せる事は出来ませんの。』RTA
もしも「〈美醜逆転〉突然告げられた婚約者は恐ろしい顔だと言われたのですがそんな事はありませんの、見せてくださいませ。でもわたくしの顔を見せる事は出来ませんの。」が短編だったら。
※ 2話の途中くらいから書いてます!2人が出会った時のティファニーの行動がグイグイ積極的過ぎて違う結果になったらって考えて
ちょうど今日はエイプリルフールなので投稿します!
「ようこそ我がバルベル家へ、貴女がちゃんとここまで来たのは見届けた。家にも話を通しておこう。もう遅いが早く帰りたいなら護衛を手配しよう。」
低く落ち着いた声が耳に心地良い。
見た目良し、声も良いなんて幸先が良いが気になるのはその内容。
帰らされそうになっている。何か粗相でもしてしまったのだろうか。
見惚れていたが、このまま思考停止していたら実家へ返されてしまう。
それだけは理解した。
けど……それよりも、もう少し彼を近くで見たい。
彼は階段から降りて来てくれそうにない、ならば自分から行かなければいけないとティファニーは階段をパタパタと登る。
突然のティファニーの行動に萎縮している周りは静止する事を忘れ見送る事しか出来なかった、誰が使用人にも畏怖される見た目をする主人の元に自ら行くと思うのか。
階段を登り切りダーリックの目の前へ行くと目標の彼もまさかこんなに積極的に来るとは思わなかったのか狼狽えている。
「わたくしが婚約者ではご迷惑ですの?」
「迷惑では無い……がティファニー嬢が嫌だろう。」
「いいえ、わたくしは旦那様の事を気に入りましたの。一つ聞いても良いでしょうか?」
「何だ?」
「何故仮面をしてらっしゃいますの?」
「……恐ろしい顔だからだ。」
「恐ろしいお顔?見てみたいですの。」
「後悔するから止めておけ。」
ティファニーは思案する様に小首を傾げる。
恐ろしいとはどの位恐ろしいのだろうか、今のところ見た目はとてもタイプである。
あまり期待値を上げ過ぎて後で恐ろしい顔を出されるか、今のうちに見ておいてやっぱり身体が良いからと言って顔も良いとは限らない現実を知るか。
なるべく傷付きたくない、後者である。
「少し屈んでいただいても宜しいでしょうか?」
「何故だ?」
疑問に問われるも言われた通りに少し背を倒すダーリックの頭上にティファニーは自らのヴェールを持ち上げ被せる。
これで外からは見えないはずだ、お互いの初対面の顔にダーリックが驚きに固まるのを良い事に仮面を取ると出て来たのは予想外に端正な顔立ち。
驚きに見開かれた瞳はダークブラウンで同じく驚きに満ちた表情のティファニーを映す。思わず見惚れたティファニーの動きが止まった途端慌ててダーリックは仮面を取り戻し距離を取る。
「帰りたくなったのなら帰ると良い、泊まるならメイドに案内を頼めば案内してくれるだろう。」
案内してくれるというメイド達には悪いがティファニーはもう少しダーリックと一緒に居て奇跡のご尊顔を眺めたい。
何せ婚約者、声を大にして言いたい婚約者なのである。
背を向け歩き出すダーリックは長い足でスタスタと先に行ってしまったので、見失わない様にパタパタ追いかけ後ろをついて歩く。
しばらく歩くとある部屋の扉に手をかける。
「ここが旦那様のお部屋ですの?」
その声にビクッと反応をし、驚いたように振り返る。
「着いて……来ていたのか?」
パタパタと忙しなく足音をさせてずっと後ろを歩いていたのだ、一緒に行く事を許可されたのだと思っていたけれど気付かれていなかったらしい。
「ずっと後ろにっふふっ、居ましたの。」
驚いた反応が面白くてつい笑ってしまう。
罰が悪そうな彼の部屋に入ると質の良いものを使いシンプルな部屋に彼の人柄が出る様な気がする。
顔は見せたのでもう要らないだろうとヴェールを取るとぐるりと見渡し1番気になるのは大きなベッド、とても気持ちが良さそうである。
早速ごろんと横になると元の家で使っていたベッドには戻れないくらいふかふかで気持ちが良い。
「……随分と寛いでいるな。」
「このベッド凄く気持ちが良いですの、わたくしもこのベッドが良いので今日は一緒でも宜しいでしょうか?」
「駄目だ、部屋まで送らせる。」
「こんなに大きなベッドなのに独り占めはずるいですの。ちょっと来てくださいませ。」
言われるままにダーリックがベッドに寄るとティファニーはもう1人寝るには十分な程のスペースを開ける。
「これなら2人で寝ても大丈夫だと思いますの。ちょっと旦那様も寝てもいただいても宜しいでしょうか?」
腕を引っ張ると軽く抵抗されるけれど、尚も諦めずにティファニーがグイグイと引っ張ると根負けしたのかダーリックは大人しくベッドにあがる。
2人で寝ても十分にスペースがある事を確認出来たらティファニーは満足そうに抱き枕代わりに腕を絡めた。
ちょっとだけ目を閉じると彼に包ままれている気がして新しい居場所は幸せの空間になり、もう少しこのままでいたい。
「もう良いか?…………まさか寝てしまったのか。」
ふとダーリックが恐る恐る隣を見るとスヤスヤと可愛らしい寝息を立てながら腕に抱き付いたまま笑みを浮かべ寝てしまったティファニーの姿。
どうやら気絶している訳ではないらしい事にホッと胸を撫で下ろす。
彼女の行動には驚かされてばかりだ、それと容姿にも。
突然近づいて来たと思ったらヴェールを被せられ仮面を奪われて晒しあう素顔。
キラキラと煌めく薄い金色の髪に彩られた素肌は透き通るように白く整っている、ぱっちりとした瞳はピンクダイヤに輝いていた。
初めは訝しげに見つめていたが勝手に仮面を取った途端に表情は驚きに満ち溢れ徐々に赤く染まる。
これ以上は見てはいけない、あまりにも惹き付けられる光景に我に帰り彼女とは距離を置く為に部屋へと戻った。
しかしどうやらアヒルの刷り込みの様に後ろを付いて来ていたらしく、後ろに居た時は驚いた。
全く存在を隠そうとしないで歩く彼女に気付かない程に困惑していたのか。
その後も彼女は好き勝手に動き回り勝手にベッドに入り、引き込まれて、寝て、起こすのも可哀想だと放置する言い訳で自分を納得させているうちに……気付いたら朝になっていた。
何もなかった、何もなかったけれど未婚の女性と一夜を共にしてしまった。
もしも彼女が嫌ではなかったら責任を取っても良いのではないか。
起きたらさり気なくゆくゆくは結婚する事を切り出してみよう、少しでも拒絶されたら諦める事にするのだ。
そう考えたダーリックだけれど起きたティファニーに話しを切り出すと、ゆくゆくではなく直ぐにしようとキラキラした瞳で言われる事になる。
そして結婚が急に決まった事、一晩ティファニーがダーリックの部屋で過ごした事を使用人達は皆絶対に体の関係を持ったに違いないと思っていた。
なにせ旦那様は恐ろしい外見をしている、肉食系に違いない!
そんな勘違いは晴らされる事はなく、けれど勘違いしたからこそ皆ティファニーを直ぐに受け入れバルベル家は少しずつ明るい雰囲気に変わっていくのであった。
お読みいただきありがとうございました!
誤字脱字報告ありがとうございます。
後ほどチェックして変えさせていただきます。
書きたい所だけ書いてさっさと締めたので本当に短編で投稿するならもうちょっとちゃんと書きますが、やっぱりお互いの顔がわかるシーンって好きです。




