星降る
空から星が降ってくる。
きらきら輝く星が降る。
輝く野道を君と歩く。
握る右手に伝わる体温が、私の心も温める。
『行かないで』の一言が、言えぬままに今日が来て。
きっとこれが君と歩く最後の日。
顔をあげると涙が出そうで、私はずっと俯いたまま。
君の顔すらまともに見れない。
『特別な場所があるんだ。』と君は言った。
どれくらいの時間を君と歩いただろう。
永遠に辿りつかなければいい、と心のどこかで思った。
このまま夜が明けなければいいのに、と。
私がやっと顔をあげると、そこは海を見下ろす丘の上だった。
無数に煌めく星たちが、音もなく海へときえていく。
それは例えようもない程美しく、美し過ぎて、悲しかった。
堪えてきた涙が、堰を切ったように溢れ出し、私は声を殺して泣いた。
小さい子供のように泣きじゃくる私を、君は優しく抱きしめてキスをしてくれたね。
君と私の最初で最後のキスは、涙のしょっぱい味がした。
優しくて少し頼りない君。
君は最後まで『別れよう』とは言わなかった。
それは君が最後まで私のことを愛してくれてた証だと思ってる。
君は照れ屋だから、自分の気持ちをあまり言葉にして伝えてくれなかったけど、偽りのない愛をちゃんとたくさん与えてくれた。
私も君と同じ気持ちだったんだよ。
だからあの時、私は『さよなら』じゃなく、『またね』と言ったの。
君も少し潤んだ瞳で『またね』と言ったね。
それでも私たちは心のどこかで知っていたんだ。
永遠の愛はないってことを。
人間は弱い生き物だから、見つめ合えなきゃ信じることが出来ない。
手を繋げないと寂しくて心がだんだん冷めていく。
長い長い時の中で心はいつしか君から離れていく。
きっと、君の心も・・・。
けれど、あの日あの時に感じた気持ちは、確かに嘘じゃなかったんだ。
君が愛をくれたように、私も君を愛していたよ。
交わした言葉も、流した涙も、全部偽りのない真実だよ。
こんな寒い日には、君と行ったあの場所へ行ってみるの。
あの日のように空を見上げて、君のことを思い出すよ。
あの涙も、あのキスも、繋いだ手の温もりも、ずっと永遠に大切な私の思い出。
きらきら きらきら いつまでも。
私の心にいつまでも。