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とりあえず勉学に励みます

 一般教育。

 それは前世の日本で通っていた高校とあまり変わらない科目である。

 リュージエル王国の歴史、文学、数式、化学……はさほど発展していないので無いが、主要5科目みたいなものだ。

 そしてモーガン先生は歴史の担当である。


「500年前、このリュージエル王国は戦争の真っ只中であった……」


 装丁の凝った教科書の文字を追いながら、私はどの世界にあっても戦争は憑き物なのだなとぼんやりと考えていた。


 リュージエル王国。

 この国の建国は古く、昔から魔術を得意とする国だったそうだ。そして魔術とは戦争を起こしやすいものでもある。

 まあ、魔術とか関係なく人間同士の争いは絶えないのだが。


 そんな事を埒もなく考えていると、モーガン先生の心地よいテノールの声が「ここはテストに出しますからねー」と告げた。


(危ない。聞き逃すところだった。平均的に、平均的に)


 モーガン先生の好感度の上げ方は比較的簡単で、真剣に授業を聞き、分からないところを質問し、テストで良い点を取る。これだけだ。

 50~69点、70~85点、86~100点、この3段階で好感度の上がり方が違う。

 平均的を狙う私は70~85点を狙う予定である。


* * *


「アッカーソンさん、少し良いですか?」

「モーガン先生。どうされましたか」


 授業終わり、教科書を閉じながらふと息を吐くと不意にモーガン先生に呼ばれた。

 不思議に思いながらも返事をするとモーガン先生はこっそりと「放課後に、第3教諭室に来てください」と告げると私の返事も待たずに教室から出ていってしまった。


 攻略対象が5人揃う前からイベントなんてあっただろうか?


 疑問を感じながら私はひとまず次の授業に備えることにした。


* * *


「流石ジャレット様です」


 胸の前で手を組み、称賛の声を上げるのは昨日夕食時に出会ったオリヴィアである。

 どうやら私が良く見なかっただけで、彼女は同じクラスだったようだ。それを知ったのはこの音楽の授業前。

 彼女はさも当たり前のようにジャレットに声を掛け、音楽室へと肩を並べて歩いていた。仮にも上の身分であるジャレットに何の躊躇もなく声を掛けられるあたり、彼女は見た目に反して強かなのかもしれない。


「有難うございます。アトリー嬢。でも僕もまだまだですからお恥ずかしいです」

「そんな事ありませんわ、ジャレット様」


 音楽の授業と言っても日本みたいにみんなで歌いましょうとかでは無い。最高峰と呼ばれる歌い手の歌を生で聴き、楽団の演奏を生で聴き、ひたすらに耳を鍛える。貴族の嗜みのために。


「……アッカーソン嬢は先程の聞き分けの際、正解なさってましたが楽器はやられていたのですか?」


 今日の授業は楽器の聞き分けだった。

 ピアノをやっているジャレットは流石、すべての音を聞き分けていた。そして私も。


「……幼い頃に少しだけ。もう辞めてしまいましたが」

「そうなのですか。勿体ない」


 「私」は幼い頃、少しだけバイオリンを習っていた。もちろん日本で。

 しかし練習が嫌いで辞めてしまった。


「それにもう随分前に辞めているので、先程のはまぐれです」

「……とてもそんな風には見えませんでしたが」


 褒めてくれるのはとても嬉しいが、あまり褒めないで欲しい。

 隣のオリヴィアの目付きがちょっと怖い。


「ジャレット様にそう言って頂けるなんて光栄ですが、本当に私のはまぐれです。あまり持ち上げないでください」


 能力を上げると多少好感度が上がるのは仕方がない事と割りきってはいたが、ルートに入らず能力を平均的に上げるのは結構難しいらしい。

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