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ライバル令嬢は使いようです

「あ、クロエ様!」

「……エリーナ様」


 ひとまず夕食を摂ろうと寮の食堂にやってきた。

 食堂、と言ってもそこははやり貴族向け。

 広くて綺麗な食堂には縁や脚にまで手の凝った匠の技が光るテーブルと、これまたクッションが随分と柔らかい椅子が並んでいる。隣り合ったテーブルの間は人間が3人は通れるほど開いており、ゆったりした印象を与える。


 毎日違うメニューは5種類あり、入り口に居る給仕の人間に食べたいメニューを伝えテーブルで待つ。すると選んだメニューを給仕が運んでくれる。と言う仕組みだ。


 私は仔羊のソテーを選んでから空いているテーブルを探していると


「クロエ様もお夕飯ですか?」

「ええ。先ほど給仕の方にお願いしたばかりで」

「それでしたら私たちのテーブルにご一緒しませんか?」


 少し離れた席から自身を呼ぶ声がしたので、そちらに視線を向けるとエリーナがふわりと笑って手招きをしていた。

 エリーナが座る席は5人掛けの丸テーブルで、エリーナの両隣にはそれぞれ女の子が座っている。


「初めまして。私、オリヴィア・アトリーと申します」

「私はスカーレット・ブルーメンタールです」


 エリーナの右隣にオリヴィア。左隣がスカーレット。クロエの記憶では、どちらも伯爵家令嬢で、「私」の記憶ではオリヴィアはジャレッドルート、スカーレットは後々現れるだろうセシル・ウッドマンのルートでの恋敵だったはずだ。


「オリヴィア様、スカーレット様。初めまして。クロエ・アッカーソンと申します。お二人は伯爵家のご令嬢だと認識しておりますが」

「はい。私もスカーレット様も伯爵家です。と言っても、私の家はスカーレット様のルーメンタール家には足元にも及ばない若輩者です」


 そう謙遜するオリヴィアは亜麻色の髪を丁寧に結い上げ、質素ながら上質なワンピースドレスを着ている。


「ブルーメンタールも歴史の深いものでは無いです」


 スカーレットはその名の由来であろう、黄色味の強い赤い髪を肩のあたりで切り揃えている。こちらも上質なワンピースドレスを着ているが、オリヴィアは薄いピンク、スカーレットは薄い緑を選んでいるあたり、性格というか嗜好は真逆なのだろう。


「私なぞがご一緒のテーブルについても宜しいのでしょうか」


 縦重視の貴族社会。余計な波風は立てたくない。

 もちろん最推し攻略のために。


 これは「私」の思考であり、「クロエ」はただただ自身の爵位が低いのを気にしていた一般的な貴族令嬢である。


「お気にならさず。ぜひこれから仲良くして下さいな」


 そう微笑むオリヴィアと、無言だが拒絶を見せないスカーレット、そしてニコニコと楽しそうにしているエリーナの顔を見て、私はゆっくりとエリーナの向かいの席へと腰をおろした。

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